気韻生動の画人 池上秀畝 |信州高遠美術館
きょうは、美術の日。
この春、伊那市ではとある日本画家の展覧会に力を入れています。
~池上秀畝~
1874(明治7)年 ~ 1944(昭和19)年
信州高遠町(現:伊那市)の、紙商兼小間物問屋に生まれる。
生家は裕福で、祖父も父も文化人。
画を描き、花を活け、和歌を詠み、茶をやる、という風流な家で育ち、子どもの頃から自然と筆をとるようになりました。
小学校のころにはすでに食事を忘れるほど絵に熱中し、描いては周りの人に配っていた秀畝は、本格的に絵を学ぶため学校卒業後に上京。
当時まだ無名だった荒木寛畝の最初の門人・内弟子となります。
徹底した写生を説く師匠の教えのもと、週に一度は上野動物園へ行って写生を行い、修行と出展を重ねて、1916(大正5)年から3年連続で文展(今の日展)特賞を受賞。
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そんなすごい人なのに、日本画の美術館へちょこちょこ足を運んでいるわりには私、知りませんでした。
同時代の画家には横山大観や菱田春草がいますが、彼らの「新派」が現代でよく取り上げられるのに対し、「旧派」の秀畝は知名度がそこまで高くないのでしょう。
しかし郷土出身の画家ということで、とても楽しみに生誕150年展へ行ってきました!
残念ながら、館内は全て撮影不可。
ですが、イメージを膨らませるためにフライヤーから切り貼りを。
今回の展示では、師匠や弟子、秀畝と交友のあった洋画家で書家の中村不折の作品も見ることができます。
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まず、第一展示室には屏風が展示されていました。
ショーケースなどはなく、間近に作品を見ることができます。
中でもいちばん目をひいたのは、「秋草芙蓉」という二曲一双屏風。
金地に芙蓉・ススキ・女郎花といった秋の草花がさわやかに描かれ、緑青も美しく、これぞ花鳥画!とうっとりする作品でした。
あぁ、美しい。
こちらは「渭塘奇遇」、画面上ではわかりにくいですが、大きさが尋常ではありません。
そのサイズは、絵の部分だけで縦260cm・横137cm。
展示室の天井から床まで届きそうな大きさに、まず圧倒されます。
中国明代の怪異小説を題材にした作品で、秀畝は現地へ赴き取材や写生を重ねたそうです。大きな絵のどこを見ても細かく丁寧に描かれていて、木立からはカサカサという葉の音が聞こえてくるかのよう。
見れば見るほど、これはすごい。
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第二展示室へつづく通路にも、すてきな作品が並んでいます。
秀畝が主宰していた画塾の名前でもある「傳神洞」という作品は、旧暦の睦月から始まり如月弥生・・・、それぞれの月ごとの風物が、やさしい色合いで扇絵に描かれていました。
月替わりでこれを部屋に飾ったら、すてきだろうなぁ。
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そして第二展示室、
今回のフライヤー紙面も飾っているイチおしの作品が、こちら。
亡くなる前年の作品ですが、なんて力強く勢いを感じる絵なんでしょうか。
鋭い眼光・大きく広げた翼・舞い落ちる羽から、バサバサと激しい音が聞こえてきそうです。
穏やかで色彩豊かな花鳥画を描く秀畝にはめずらしい雰囲気の作品ですが、戦時中という時代の影響があったのかもしれませんね。
これも、いい。
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「気韻生道」の画人、池上秀畝。
気韻生道という初めてきく言葉がカッコよくて、何度もつぶやきました。
気韻生動とは、「被写体のもつエネルギーを描く」という意味合い。
たしかに秀畝の作品からは、それが伝わってきます。
大型の作品もすばらしいですが、私が最も心惹かれたのは草花や鳥の写生画でした。
それらはとても細密で、
三光鳥の写生画などは、正面・横・上・お腹・羽だけなど、さまざまな角度から描かれ、生態までも学ぼうとする思いが感じられました。
写生画だけで、動植物図鑑ができそう。
秀畝さん、とても気に入りました!
きっと会期中にまた訪れると思います。
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そして同じ伊那市内、別の施設でも、もうすぐ秀畝展が始まります。
もちろん、こちらへも行くつもりです!
ところで、今回の高遠美術館は、桜で有名な高遠城址公園のすぐ隣にあります。秀畝も、上京後もたびたび高遠を訪れ、この公園でお花見や写生をしたそうですよ。
お花見と合わせて訪れてみてはいかがでしょうか🌸