梅雨に咲く花
梅雨の後半になると、気になる花があります。
それは、立葵。
もう15年くらい前に、名古屋にある古川美術館へ行ったときのこと。ひととおり作品を見てから、いつものようにミュージアムショップを楽しんでいると、ひとつの絵はがきが目に留まりました。
上村松篁 「立葵」
ただ、きれいだなと思って1枚買い求め、だからといって立葵という花については特に興味をもたず、引き出しへ入れてそのままになりました。
それから数年後、夫の長期海外出張中にしばらく実家へ滞在していたときのことです。梅雨曇りのなか近所へ散歩にでかけると、道端に目を惹く花が並んでいました。
まっすぐに天に向かって伸びる芯に蕾がいくつも付き、下から上へ順に咲いている花。色は、赤や白、薄いピンクも。
携帯を持っていなかったので、帰宅してから花に詳しい母に尋ねてみると、「あぁ、それは立葵だね。うちの庭にも咲いているよ」という言葉が返ってきました。
言われた場所を見てみると、なるほど確かに咲いていました。今まで気付かなかったのが不思議なくらい。
それにしても、立葵という名前、どこかで聞いたような・・・そこでようやくあの絵ハガキを思い出したのです。
そうだ!あの絵だ!
何年かぶりに引き出しから取り出した、上村松篁の立葵。やっぱり美しい。どこか遠い場所に咲いている珍しい花だと思っていたら、こんな身近にあったなんて。
名前と一緒に、母はこの花にまつわる言い伝えも教えてくれました。
下から順に咲いて、てっぺんまで行ったら梅雨があける。
それから毎年、梅雨の後半になると立葵のある場所を通るたびに、どの辺まで咲いたかな?と注目する習慣ができました。ただ梅雨が明けるのを待つだけだった単調な時間に、リズムが生まれ、わくわくするようになりました。
今年もまだ、楽しんでいる途中です。
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