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冬の諏訪湖 御渡りか、明けの海か

みなさんは、冬の諏訪湖に現れる自然現象、御渡みわたり』をご存じでしょうか?

寒さが厳しくなり湖が全面結氷したあと、
氷が成長して寒暖差を繰り返すうち、突如、大きな音とともに湖面に亀裂が入り氷の山脈ができるという現象です。

↓(参考画像)


諏訪湖を挟んで南側にある諏訪大社上社かみしゃから北側にある諏訪大社下社しもしゃへ向かって、まるで龍が這ったかのように見えるこの現象を、いにしえの人々は

(上社の)男神が、(下社の)女神のもとへ通ったみち

と受け止め、『御渡り』と呼ぶようになったのだとか。
とても素敵な名前だと思いませんか?

◇ ◇ ◇


信州では冬になると、この御渡りがテレビや新聞で盛んに取り上げられ、日常会話でも「ことしは御渡りどうかね~?」という言葉がよく聞かれます。(というか、わたしが言っているのかも)

これだけならよくある冬の風物詩と言えなくもないですが、御渡りが特別なのはそれが<神事>であるということです。

1月の小寒から2月の立春まで、毎朝御渡りの拝観を行うのは諏訪市にある八劔やつるぎ神社の宮坂みやさか宮司。

一体いつから御渡り拝観がされるようになったのかは定かではありませんが、少なくとも鎌倉時代の古文書には、”御渡りの異変は国家の異変”という記述があるそうです。

拝観は、上社側から下社側へと南北に走る大きな氷脈で、

最初にできたものが、『一之御渡り』
二番目にできたものが、『二之御渡り』
これと交差するものが、『佐久さく之御渡り』

があり、この三筋の確認の仕方は室町時代からほとんど変わっていないのだとか。

そして拝観の結果は、室町幕府へ「御渡注進状」として報告されていました。江戸時代になってもこの注進は続けられ、明治維新で一旦は途絶えたものの、明治26年に復活。

世界でも類のない中世からの貴重な気象記録として、現在では、気象庁と宮内庁へ毎年報告されているそうです。

◇ ◇ ◇

しかし、その御渡りも近年出現回数がぐんと減り、むしろ見られる年のほうが珍しくなりました。前回現れたのは2018年、その前は2013年。

湖の面積が小さくなったこと、周辺にアスファルトが増えたこと、さまざまな要因が重なってのことでしょうが、少し寂しく感じます。

つぎに御渡りが現れたときには、きっと見に行こう。
そう思いながら、短歌をつくりました。


7.
みづうみの 波音やさし 春立はるたつ日
今年もでぬ 諏訪の御渡みわた


2月2日撮影の諏訪湖


本日2月4日、宮坂宮司によって正式に『明けのうみ(御渡りが現れないこと)が宣言されました。




おことわり:
一般的に「御神渡おみわたり」とも呼ばれていますが、正しくは「御渡り」との宮司さんのお話でしたので、この記事では「御渡り」と記しました。

参考文献:
北沢房子著 諏訪の神さまが気になるの


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