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カワイイの原点 岩波其残 ~諏訪が育んだ文化人~
2024年にやりたいことのひとつが、「諏訪をめぐる」こと。
伊那谷から峠をひとつ越えた先の文化圏・諏訪地域には、信濃の国一之宮あり、美術館あり、縄文遺跡ありと、わたしの好きなものが盛り沢山です。今年は一年かけて、それらを少しずつ周っていこうと決めました。
そして記念すべき第一弾として先日、下諏訪町立博物館を訪れましたので、その様子を紹介します。
下諏訪町立博物館・赤彦記念館
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諏訪湖のほとりにある個性的なこの建物は、説明文によると建築家伊東豊雄氏の設計によるもの。祖父・父が下諏訪の出身で、自身も幼少期を過ごしたという縁があるのだとか。
調べてみると、松本市の「まつもと市民芸術館」も氏の設計で、世界的にも著名な建築家のようです。(失礼ながら、全く存じ上げませんでした)
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入館料はJAF優待割引を利用しておとな240円。
企画展は1F、常設展は2Fと説明をうけ、まずは企画展から楽しみます。
◇ ◇ ◇
江戸末期~明治のマルチアーティスト 岩波其残
今回ここを訪れたのは、近所の道の駅でみつけた印象的なフライヤーがきっかけでした。
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岩波其残(1815~1894)は、江戸末期から明治にかけて、生涯を通して俳画や楽焼などの創作に力を注いだ諏訪出身の文化人です。
(余談ですが、岩波という姓は諏訪地域でよくみられ、出版社の岩波書店の創業者も諏訪出身です)
豪農の長男として19歳で家督を継ぎましたが、芸事に専念したいという思いがつよく、家督は弟へ譲り34歳のときに諏訪を出て旅へ。そして旅から戻った其残は精力的に創作にとりくみ、たくさんの作品を残しました。
今回の企画展では、其残と交流の深かった下諏訪町の個人宅で受け継がれ、その後町へ寄贈された多数の作品が公開されています。
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入口近くに展示されていたこちらの絵が、とくに気に入りました!
旅先で、サーカスの象でも見たのでしょうか? 柔らかで簡素な線と飾りの色が、象をかわいく見せています。どことなく長沢芦雪にも似ているような、となりの仔犬もまたかわいらしい。
確かにこれは、癒しのアートですね。
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庶民の様子がとても生き生きと描かれ、ぼのぼのとした画風です。巻物や、短冊、扇(なかには蚊帳に描かれたものも)がズラリと並べられていましたが、基本的に見ているこちらも楽しくなるような、朗らかな作品が多いのが印象的でした。
作品は作者の思いがあらわれると考えると、岩波其残という人は陽気な人柄だったのかもしれませんね。
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クスッと笑いました
寝つかれを 起きて 休みし 長夜哉
電気がなかった時代、夜は相当長かったことでしょう。寝るにも体力がいりますからね。からだが痛くなりそうな寝具ではなおさら、起きて休みたくなりそうです。
老ほれし 我眼にさへや 美人草
その女性は正真正銘の美人だったのか、はたまた老いた眼が美人にみせていたのか・・・はっきり見えない方がいいことも時にはありますね。
マスクをすると大概の人が美男美女にみえるのと似た感覚でしょうか?ちょっとちがう?
◇ ◇ ◇
1つの展示室に集められた作品は、絵画・俳句・楽焼・写真、、、まさにマルチアーティスト。全国的にあまり有名にならなかったことが幸いしてか、いまでも諏訪地域では、岩波其残の作品が残っている家庭が多いそうです。
「カワイイの原点」という文言と、ほのぼのとした絵につられてやってきた企画展ですが、クスッと笑ってほっこりしたり、なにより岩波其残という人物を知ることができて、とても有意義な時間を過ごすことができました。
またひとつ、心に栄養が補充されました。
下諏訪町さん、良い企画をありがとうございます。
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