山種美術館を訪ねて vol.3
毎月の東京詣での寄り道先として、すっかり定番となった山種美術館。
はや3回目の訪問となりました。
この日東京は晴れたり曇ったりで、ひと月前の10分と外にいられない恐ろしい暑さはなく、吹く風も爽やかに感じられました。
とはいえ真夏日のなか長時間歩くのはつらいので、今回初めて渋谷駅からバスを利用。日頃路線バスに乗る機会がない田舎人ゆえドキドキしましたが、ちゃんと乗れました!☆祝☆都バスデビュー。
道中、車窓から青山学院初等科や実践女子、國學院大学などを眺めて楽しみ、美術館最寄りのバス停で降車してからは3分ほどで到着。
<今回の企画展>
明治から現代にいたるまで、西洋画や敗戦の影響を受けながらも日本画がどう歩んできたのか、その軌跡をたどる特別展となっています。時代順に作品を見ていくことで、一口に『日本画』といっても、決まった型を継承するだけではなく、常に進化してきたことがわかります。
今回の撮影OK作品は入り口近くにありました、こちら。
葉が墨色で描かれているので、一瞬、水墨画の印象を受けました。花の中心赤色が際立ち、まるで白粉に紅をさしたように見えます。優しい。
近くには、私が大好きな上村松園の美人画も。
やっぱり、美しい。
上村松園は、女性で初めて文化勲章を受章した画家です。私が日本画好きになったきっかけでもあり、彼女の絵を見たくて足立美術館(島根)や松柏美術館(奈良)へも足を運びました。
振り返り、反対側の壁面に並んでいるのは、横山大観をはじめとする『朦朧体』と言われる描き方の作品。
展示されていた横山大観の『波上群鶴』は、小さな襖絵で、水面と小さな鶴が2羽描かれたシンプルなものでしたが、とても印象に残る作品でした。輪郭を描かず色のぼかしで表現された穏やかな波は、たえず動く水面がすぐそこにあるかのよう。”個人蔵”とあったので、今回が最初で最後の対面かもしれず、良い作品と出会えたな~と嬉しくなりました。
展示室後半の現代画家エリアは、初めて目にする作家さんばかりでしたが、その中でこれは!というお気に入りを発見。
小野竹喬 『晨朝』
昭和44年の作品です。晨朝とは、普段見慣れないことばですが早朝のこと。なんてことはない草の絵ですが、なぜかとても心惹かれました。
説明によると、小野竹喬は植物を生き生きと描く洋画家のルソーやゴッホから、大きな影響を受けたそうです。そう言われてみるとたしかに・・・草の香りがしてきそうな生命力あふれるみどり!
山種美術館の展示では、作品の横に画家のプロフィールと自身が語った言葉が紹介されています。(すべての作品ではありません)
この言葉がなかなかおもしろく、どんなことを考えながら創作をしていたのか、どんな信条を持っていたのか、画家の哲学のようなものが垣間見える気がして、気になる言葉を見つけると何度も読み返しました。
今回いちばん印象に残ったのは、菱田春草(長野出身)のことば。(記憶頼りのため細部言葉違いがあるかもしれません)
春草の絵は、”輪郭をはっきりと描く旧来の描き方こそが日本画だ”と主張する明治時代の主流派から「あんなものは日本画といえない」と批判されていたそうです。新しいことを始めようとすると叩かれるのは、今も昔も変わらずですね。
120年後の現代、素人の私から見ると、どれも美しい日本画です。現代画家の作品には、西洋画のような日本画もありました。
春草の思い描いた時代に近づいていればいいなぁと思いつつ、じゃあ今から100年後は、いったいどんな日本画が出てきているんだろう?と少しだけ妄想しながら、展示室をあとにしました。
鑑賞後は、いつものカフェでいっぷく。
<次回の企画展>
わたしが首を長~くして待っていた奥村土牛の『鳴門』が、ついに登場します。行く気満々で、さっそく前売券を購入しました!(200円お安い)
秋の訪れが楽しみです。
お気持ちありがとうございます。大切に使わせていただきます。