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占領政策で作られた映画のシナリオを収録した1950年代の国語教科書の目次

いろいろあった1日。
最も重要な仕事をする前のスキマ時間を利用して、東書文庫へ。
CIE映画「格子なき図書館」のシナリオを収録している国語教科書が2冊あるということを同志社女子大学の宮本明子さんに教えてもらったので、愛用のChromebookを持ち込み、閲覧室で視写した。(コピーも撮影も不可)

東京都北区「東書文庫」外壁

2冊のうちの1冊。夙に知られた能勢朝次編『新中学国語 2上』(大修館書店、1952年発行)の目次は以下の通り。かなり興味深い。

目次
詩(ゆずり葉) 河井酔茗
一 文章の書き方
 (一)山火事 山本映佑
 (二)文章の作り方 久米正雄
 (三)文章の技巧
 (四)くぎり符号の使い方
二 物語を作ろう
 (一)ねこの運動 夏目漱石
 (二)赤毛のりす 富永明夫
三 放送
 (一)放送のしかた 宇田道夫
 (二)ラジオの聞き方 岩崎 剛
 (三)発音・アクセント
四 会議のしかた
 (一)一つの会議(ラジオ−ドラマ)
 (二)会議の構成と方法
   一 役割
   二 討論
五 シナリオを読む
 (一)映画の話術 飯島正
 (二)シナリオの読み方
六 図書館の利用
 (一)格子なき図書館 CIE映画
 (二)方言を調べに
七 随筆を味わう
 (一)はち 寺田寅彦
 (二)かつおつり 宇田道隆
八 学校新聞
 (一)入道雲
 (二)学校新聞
   一 企画会議
   二 編集会議
九 観察と記録
 (一)じゃこうあげはの生態研究 鷹司綸子
 (二)観察記録の書き方
十 標準語と方言
 (一)赤とんぼ
 (二)方言より標準語へ
十一 話し方の研究
 (一)天気予報の話 高橋浩一郎
 (二)話のくふう
十二 芸術の世界
 (一)名曲トロイメライの母 野上 彰
 (二)ジャン=クリストフ 宮本正清/(原作ロマン=ロラーン)

新中学国語(二上) 昭和二十七年六月一日 印刷
昭和二十七年六月五日 発行
〔昭和二十六年七月二十三日 文部省検定済〕

「格子なき図書館」の前に置かれていたのは、こんな文章であった。

 学校図書館は利用していますか。どこか近くの図書館に出かけたことがありますか。図書館の中には、何万という書物が、あなたがたの閲覧してくれるのを待ちながら、静かに眠っています。その学校の、その地方の文化は、まず図書館からひろがっていくといってもよいでしょう。
 ところが、なれないと、こういう公共施設は、なにか親しみにくいような感じがします。せっかくの施設を、利用法に不案内であるがために、全然かえりみもしないで過ごす人が、どんなに多いことでしょう。
 まず、図書館というものの設備や、種類や、事業などについて、学習しましょう。それから、その具体的な利用法を学びましょう。
 そうして、わたくしたちのもっている国語の力や、読書の技術を、図書館においてじっさいに楽しく実践し、身につけていきましょう。

「六 図書館の利用」全文

もう1冊の目次はこんな感じだった。

目次
単元 一 上代の文学
 一、万葉の歌
 二、歌の調べ 島木赤彦
 三、海幸山幸 太 安万侶
単元 二 小説
 一、城の崎にて 志賀直哉
 二、フランセスの顔 有島武郎
 三、現代文学の意義 湯地 孝
単元 三 読書と図書館
 一、読書論
 二、読書の意義とその利弊害 阿部次郎
 三、読書について 小林秀雄
 四、図書館 市川 泰次郎
単元 四 映画
 一、格子なき図書館
 二、映画芸術 寺田寅彦
 三、映画のことば 今村太平
単元 五 世界文学
 一、ヴェルテルの悩み ゲーテ原作/茅野蕭々翻訳
 二、森と広野 ツルゲネフ原作/中山省三郎翻訳
 三、セルボーン博物誌 ホワイト原作/寿岳文章翻訳

『高等学校用 新選国語二上』
編修責任者 坂本博司
昭和二十七年一月五日印刷
昭和二十七年一月十日発行
著作者 高等教育研究会
    代表者 梅谷利治


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