20210918 トムボーイ
新宿シネマカリテにて。
10歳のロールは新しく引っ越してきた場所でミカエルと名乗り、男の子として近所の子どもたちのコミュニティに加わる。ビジュアルが素敵な上に周りの男子達とはどこか違う雰囲気を漂わせている姿は恐ろしく魅力的。
周りの男子を観察して徐々に男の子っぽい振る舞いを身に付けていくんだけど、やっぱり男子達の無鉄砲さとは何かが違うように見えて。男子達が立ちションするシーンでは「終わった…」と頭を抱えたし、どうしても乗り越えられない壁があると思い知らされた。
仲間達と打ち解けリザとの距離が縮まるにつれて後ろめたさと緊張感が生まれてくる。男子との取っ組み合いのシーンなんかヒヤヒヤが止まらない。気分としては近所のおばちゃんとして窓の外の彼らの様子をずっと見守っている感じ。微笑ましくてずっと見ていたいと思うと同時にこの先のことを予測して心配になる。
ロールの母親の行動を100%支持することはできないけど、きっと母親なりに娘が生きづらさを感じないようにと考えてのことなんだろうな。
ロールはあの後どんな風に学校生活を過ごすのだろう?私はラストシーンからポジティブな未来を想像した。思っていた性別と違っても人として惹かれあったのだと思うし、必ずしも恋愛関係で結ばれる必要はない。女子とか男子ではなくロールという1人の人物としてリザは受け入れていくんじゃないかな。
でも周りの男子達はどうだろう?個人的な経験に基づくイメージだけど、あの年代の男子って男子と女子を明確に線引きしたがる傾向がある気がする。ロールと同じくらいの年齢の時、お試しで参加した少年野球チームで他校の男子から「おとこおんな」ってからかわれたのは嫌だったなぁ。「女のくせに野球うまいのかよ」みたいな感じで。同じ学校の男子達はそれに乗っかるような子が1人もいなくて普通に一目置くような感じで接してくれたけど。
ミカエルとして過ごすロールの姿を見て、性別の自認って曖昧だなと思った。たまたま最初に出会ったローズに男の子と間違えられたからそのまま男の子として過ごしたけど、ロールが本当に男性として生きていきたい人なのか、女性のことが好きなのかは微妙だと思う。一般的に女の子らしいと言われることが苦手だったり、ちょっと男の子に憧れることって割とあると思うし。自分自身がどう感じるかと、周りがどう接するかによって変わってきたりするのかもしれない。
あとこの作品では性別の他にきょうだいの連帯も重要なテーマの一つだったと思う。親には見せないけどきょうだいには見せられる自分の素の部分とか。姉だろうと兄だろうと妹にとってはあまり関係がなくて。自分を守ってくれる絶対的な存在ということだけ。まだ幼児体型が残る6歳でありながら、状況を的確に察して振る舞う妹ジャンヌとの関係性がとても良かった。
それにしても子役達は本当にすごいな。演じていたとはとても思えない。絶対に今この瞬間もフランスに実在しているし、私は彼らの側でひと夏を過ごしたはず。
初めて行った馴染みのない映画館だったから余計に非日常に入り込めたのもあるかもしれない。とても充実した82分間だった。
自分用メモ→シネマカリテスクリーン1では向かって右側寄りの席を取ること。スクリーンサイズが小さい上にかなり右寄り。観客の雰囲気がおしゃれ。
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