📘️ Book Club：コンピテンシー・マッピングとは？チームのスキルを視覚的にマッピングする5つのステップ

プロダクトデザイナーは常に新しいツールを見つけて、ニーズに合わせて仕事を調整しています。そのためプロダクト・デザイナーの仕事は常に変化をし続けています。 

インターネットで「デザイン・コンピテンシー」または「デザインスキル」を検索すると、基本的な能力に関するリストと専門家の記事が溢れています。これらのリストのスキルは、「コンセプト」や「プロトタイピング」などの幅広いものから、「クリエーティブ」までの具体的なものまでさまざまです。そして普遍的な合意に達していないようです。

私の所属するクリエーティブチームも色々なバックグランドを持つデザイナーたちで形成されていますが、数年前たちはそれぞれに開発したい特定のUXに関わる分野はあるものの、その分野をどのように特定したらいいのか、また私たちの役割の中から次のステップをどのように決めてくのか難しいと感じていました。

これはチームの全員にとって懸念事項でしたが、誰も問題に対処できませんでした。しかし数年前にコンピテンシー・マッピングを用いた結果、マネジャー、また個人の観点から既存のスキルセットやスキルギャップに対する認識が高まり、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるようになってきました。また私たちがどのようなキャリア開発の努力をすべきか、またどのような結果を得るために努力すべきかを理解することができるようになりました。

今回は、コンピテンシー・マッピングの制作方法のステップをご紹介したいと思います。

コンピテンシーとは？

近年、コンピテンシーという概念に注目が集まっています。

💡「competency」という英語自体には、「能力」「技量」「熟練」「適性」など、さまざまな意味がありますが、企業においてのコンピテンシーの概念は、ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性のことを指します。

コンピテンシーは高い成果につながる行動特性とも言えます。 あなたがプロダクト・デザイナーならば新しいことを習うのが好きだからかもしれません。プロダクト・デザイナーは、とても多様なツールキットを備えた専門家です。私たちは常に自分のスキルセットを熱心に向上させて行かなければいけません。

コラボレーションが盛んな企業は、常にチームのコンピテンシー管理を改善しようとします。チームのコンピテンシー管理は高品質の作業の鍵であるためだからです。そのため、現在では色々な企業でコンピテンシー・マッピングを利用しています。

コンピテンシー・マッピングとは？

💡コンピテンシー・マッピングは、組織内の主要な仕事および機能を特定するプロセスです。 コンピテンシー・マッピングは重要であり、不可欠な活動です。 

上の画像は各スキルの観点から各人がどこに立っているかを示し、どの領域に焦点を当てるべきかを示します。また、後でそれらのスキルの開発の進捗状況を追跡したいときにも役立ちます。

💡マップは、チームリーダーの個人レベルだけでなく、チームレベルでも目標を達成します。これは、チーム全体のスキルセットの概要を把握できるためです。 

また、コンピテンシー・マッピングは、チーム、プロダクト意外に、個人にも多くのメリットがあります。まず第一に、あなたがどのようなキャリア開発の努力をすべきか、どのような結果を得るために努力すべきかが視覚的に理解することができます。

STEP1：主要な能力のリストを設定しましょう。

プロダクト・デザイナーの仕事は常に変化をし続けています。そのため、コンピテンシーは絶えず変化しています。それと同時にあなたのコンピテンシー管理も絶えず変化し続けていくべきです。

最初のステップとして、すべてのプロダクト・デザイン・プロジェクトで主要な能力をリストします。当然、チームは色々なバックグランドを持つデザイナーたちで形成されています。

下記のコンピテンシーには、プロダクトデザイナーとして働く上で仕事に最も役立つと思われるコンピテンシーが含まれていますが、チームによってコンピテンシー管理自体は完全に異なって見える可能性があります。 

あなた自身、またはチームにあったコンピテンシーを書き直すことに躊躇しせずに、書き直してください。この作業は、チームメンバーが知っておくべきことを全体的に理解することを目的としています。

→ ワークショップ・ファシリテーション
→ ビジネスと戦略
→ ユーザー調査
→ ユーザーニーズの評価
→ ユーザビリティ評価
→ メトリクスと測定　
メトリクスとは、何かしらデータを収集して、そのままの形ではなくて、計算や分析を加えてわかりやすいデータに変換したのがメトリクスです。
→ 情報アーキテクチャ
→ プロトタイピング
→ インタラクションデザイン
インタラクションデザインは、機器やソフトウェアなどが使われる際の、ユーザー側の操作やシステム側の反応などをデザインすることです。
→ ビジュアルデザイン
→ テクニカルライティング
→ クライアント管理
→ リーダーシップ

STEP2：主要なコンピテンシーの定義を決めましょう

STEP1で定めたコンピテンシーは実際にはどういうことを示しているのでしょうか？ 

主要なコンピテンシーの定義を決めましょう。それぞれのコンピテンシーに関して、精通しているべき知識とスキルの以下のリストを定義します。

ユーザー調査
→ ユーザー調査の実施：ソフトウェアをデザインする前だけでなく、デザイン中および展開後も、ユーザー調査を実施します。
→ ペルソナを作成：潜在的なユーザーを特定し、彼らのニーズと目標を理解します。
→ ロードマップを制作：ソフトウェアの外部で実行されるアクションを含めて、改善の領域を特定します。そして各ペルソナが目標を達成するためにたどるロードマップします。
→主要なペルソナからの学習：エンドユーザーとのサイト訪問の計画を支援して、学習したい内容に基づいてサンプリングし、主要なペルソナからの学習を逃していないことを確認します。
→ インタビューを構成：ユーザーの発言を超えて、ユーザーが望むものを明らかにする効果的なインタビューを構成します。
→ データを記録、分析：サイトや、ソフトウェアの訪問からのデータを記録、分析し、より広いチームとシェアし、効果的に測定する方法と既存の分析の限界を理解します。分析、ユーザー調査、およびカスタマーサポートレコードからのデータを分析および解釈します。
→ ガイダンスを提供：過去の研究を批判的に評価し、今後の研究のためのガイダンスを提供します。

ユーザビリティ評価
→ 問題を予測：テストを実施する前に、確立されたユーザビリティの原則とガイドラインを使用して、ユーザーインターフェイスで発生する可能性のある問題を予測します。
→ 仮説と測定：仮説を立てる方法と、変数を制御および測定する方法を理解します。
→ ユーザビリティ評価を計画および管理：適切なタイプのユーザビリティ評価を計画および管理します。
（例：モデレート・テストと非モデレートテスト、ラボ・テストとリモート・テスト、ユーザビリティ・テストとエキスパートレビュー、ユーザビリティ・テストとA / Bテスト、ユーザビリティ・テストと調査）
→ ユーザビリティテスト記録と分析：ユーザビリティテストのデータを記録、分析し、より幅広いチームに提示します。
→ 優先順位付け：証拠に基づいてユーザビリティの問題に優先順位を付けます。

情報アーキテクチャ
→ アーキテクチャ構築：ジャーニーマップを分析して、情報アーキテクチャを特定して構築します。
→ プロセス、用語、ベストプラクティスを明確にする：プロセス、専門用語、およびベストプラクティスを明らかにして説明します。
→ 構造化とラベル付け：適切なデザインパターンを使用して、コンテンツ、機能、機能を整理、構造化、ラベル付けします。
→ アプリの語彙を開発：制御されたアプリの語彙を開発、使用、維持します。
→ IAの内訳：IAの内訳は、リソースの制約に基づいて、小さくてわかりやすい成果物に変わります。プロジェクトにおける成果物とは、システム開発やソフトウェア開発のプロジェクト工程が完了した際の成果のことです。

インタラクションデザイン
→ 利点を理解：さまざまなユーザーインターフェイスモデルの利点を理解し、それらを適切に使用します
たとえば、ウィザードまたはモーダルを使用してユーザーをガイド付きパスに強制するタイミング、またはユーザーを独自の方法で移動させるタイミングを理解します。
→ ユーザーエクスペリエンスを形成：パターンライブラリの正しいコンポーネントを使用して、アフォーダンスを提供し、ユーザーエクスペリエンスを形成します。
→ デザイン言語で表現：確立され進化している標準、および人間とコンピューターの相互作用のベストプラクティスを理解し、それらをデザイン言語で表現できるようにします。
→ アニメーションを使用：必要に応じてアニメーションを使用して、ユーザーインターフェイスを簡素化します。
→ 機会と制限を理解：デザインソリューションが表現されるテクノロジーの機会と制限を理解し、エンジニアと協力してその実装を決定します。
→ 要件を文書化：要件を文書化し、相互作用に関する期待を説明します。

ビジュアルデザイン
→ ユーザーインターフェイスを整理：ビジュアルデザインの基本原則（コントラスト、配置、繰り返し、近接など）を使用して、ユーザーインターフェイスを整理します。
→ ページをレイアウト：タイポグラフィ、アイコン、グリッド、カラーシステムを理解して使用し、ページをレイアウトします。
→ メッセージングを強化：ガイドラインに適合するイラストなどを作成して、メッセージングを強化および拡張します。
→ ブランドとデザイン言語を理解し使用する：共通のブランドとデザイン言語を理解使用、進化させ、それが重要である理由を説明します。

ライティング
→ マクロとマイクロのコピー：マクロとマイクロのコピーを作成および編集します。
→ 適切な種類のヘルプ：状況に応じて適切な種類のヘルプを選択します。たとえば、チュートリアル、マニュアル、コンテキストヘルプ、またはマイクロコピーのいずれかを決定します。
→ コンテンツを理解、使用、重要性を理解する：共通のコンテンツと文体を理解、使用、進化させ、それが重要である理由を説明します。
→ コミュニケーションの調和：書面によるコミュニケーションと視覚的なコミュニケーションの調和を確立します。

プロトタイピング
→ プロトタイプの忠実度を選択：プロトタイプの忠実度を選択して、仮説の忠実度と一致させます。
→ 反復の利点を説明：検出フェーズでの高速反復の利点を説明します。
→ アプローチを検討：解決策を決定する前に、問題に対する複数のアプローチを検討してください。
→ プロトタイプを作成：インタラクティブで共有可能なプロトタイプを作成して、デザインソリューションのデモンストレーションとテストを行います。

リーダーシップ
→ 作業を計画、スケジュールする：配信の効率を優先して最大化するための作業を計画およびスケジュールします。
→ 利害関係者とのコミュニケーション：利害関係者とのコミュニケーションを行い、維持し、彼らの期待を管理します。
→ 建設的な批評：チームメンバーの仕事を建設的に批評します。
→ 専門能力開発：チームの継続的な専門能力開発を促進およびサポートします。
→ チームを育成：強い対人関係を持つチームを育成します。
→ デザイン文化の成長と維持：世界クラスの包括的なデザイン文化を成長させ、維持します。
→ 成功への影響を測定：ビジネスに対するユーザー・エクスペリエンスとデザイン・アクティビティの費用便益について議論し、会社の成功への影響を測定および監視します。
→ デザイン思考の価値を促進：デザイン思考の価値を促進し、社内のすべての人のユーザーエクスペリエンス能力を高めます。

［参照］
Vendのプロダクト・デザイン・コンピテンシー

Vend’s Product Design Competencies

UXスタジオのプロダクト・デザイン・コンピテンシー　PDFダウンロード

STEP3.さまざまなレベルの知識を設定します。

コンピテンシー管理の改善に向けた基本的な目標設定が完了したので、スケールが必要になります。

これは、各分野における個人の知識レベルを測定するのに役立ちます。また、人々が自分の長所と短所を特定するのに役立つ、議論のための優れたフレームワークを設定しましょう。

これらを時間の経過とともに進捗状況を評価します。知識のレベルを測定するための6つのレベルは以下になります。

0 ：まったくなじみがない：コンピテンシーを理解していない。
1：初心者：コンピテンシーとその重要性を理解している。
2：上級初心者：監督下または励ましでこのコンピテンシーを示す。
3：有能：監督や励ましとは無関係にこの能力を実証します。
4：熟練：この能力の他の人を励ましまたは監督します。
5：専門家：世界の舞台で測定されたこの能力を適用する新しい方法を開発します。

STEP4.コンピテンシーマップを使用して各チームメンバーを評価します

マッピングはコンピテンシー管理を改善するための大きな進歩を示しています。マッピングを試して、常に使用し、必要に応じて変更していってください。

一般的に初心者は能力を過大評価する傾向があり、専門家は能力を過小評価する傾向があることがあります。初心者と専門家を組み合わせるとより客観的な結果が得られると言われています。

一年に3回ほど、コンピテンシーマップを使用して各チームメンバーを評価します。これは自分自身でも行うことができます。

STEP5.コンピテンシーの優先順位付け：結果をプロダクト・ライフサイクルと統合する

リーンアナリティクスの本によると、プロダクト・ライフ・サイクルの5つの段階、共感、粘着性、バイラル性、収益、規模の段階を定義できます。これらの段階を経るにつれて、さまざまな能力が必要になります。

したがって、チームリーダーがチームを変更したり、それに応じてチームメンバーの能力を向上させたりすることは理にかなっている場合があります。

Lean Analytics ―スタートアップのためのデータ解析と活用法 (THE LEAN SERIES)

共感
この段階では、実際の問題と実際の解決策を特定します。それはまた質問に対処します：誰かが気にしますか？この段階では、基本的に「ユーザーのニーズと評価」能力、つまりドメイン知識を学び、競合他社の調査、フィールド調査を行い、潜在的なユーザーにインタビューする人が必要です。また、ユーザーペルソナ、実行する仕事の文章、またはカスタマージャーニーを使用して、学習内容を簡単に要約し、チームに転送する必要があります。

粘着性
最小限の労力で、顧客に関する検証済みの学習を最大限に活用できます。言い換えれば、MVPを試して、仮定をすばやく検証するか、おそらく無効にします。プロトタイプを作成するための十分なレベルの情報アーキテクチャ、プロトタイピング、インタラクションデザインの能力、MVPにするためのビジュアルデザインと開発のスキル、フィードバックから学ぶためのユーザビリティ評価が間違いなく必要です。

バイラル性
これには、ユーザー獲得の開始とユーザーベースの拡大が含まれます。 「測定基準と測定」は、この段階での基本的なスキルの1つであるため、何をすべきか、測定し、結論を出す方法を学びます。また、粘着性の段階から他のすべてのスキルを持ってきてください。

収益と規模
人への課金と製品のスケーリングを開始するには、基本的にすべてのチームの能力、特に製品機能の優先順位付けのための「ビジネスと戦略」が必要です。

まとめ

グループで、または個人で仕事の仕方や、進む方向について語ることは、とても価値があります。個々の強みはチーム内の個人として強調され、私たちのチームの強みは認識され、私たちは個人としてどこに改善する機会があるか（そしてチームが成長できるようにチームのためにどのような機会を作るのを助ける必要があるか）を理解でき、これはコラボレーションを取る上でとても大切な作業です。

採用担当マネージャーの方は、このマッピングを利用することによって、次に採用すべき役割をいち早く理解することができます。

私は、個人的にも、会社でもこのコンピテンシー・マッピングが役立っていると考えています。興味のある方はこちらのPDFを使用しあなた自身のコンピテンシーマップを作ってみてください。覚えておきたいことはコンピテンシーは自由に変更できるということです。

ダウンロード

コンピテンシーマップ

［参考資料］

A Growth Plan for Designers

Competency Management In 5 Steps: Map Your Team's Skills Visually

私も、色々勉強中なので、皆さまの、ご意見・ご感想をお聞かせください。お読み頂きまして、ありがとうございました。

メルボルンを拠点にプロダクトデザイナーとして働いています。 主にデジタル・プロダクトの制作に携わっています。