冬の終わりに、今冬を振り返る

昨夜、前田君の家で酒井君を交えたっぷりボードゲームを遊んだ後、それでは解散しようと前田君の家を出た時、寒さで震えが出た。帰路をしばらく歩いて身体が温まるまで震えはとまらなかった。もう2月もあと数日であるがここまで寒いとは、と震えながら喜び、いやはや、何だかんだで今冬もたっぷり震えたなと、妙な満足感を覚えた。ただ、へとへとに疲れた身体にはこの寒さは堪えて、自宅へ入るなりリビングの炬燵へ直行し、そのまま炬燵で暖まって寝てしまった。どうもこの頃疲れて帰って来た時にシャワーを浴びる事なくこうやって寝てしまう。

そして、寝たり寝なかったりを繰り返しながら今日の昼を迎えた。すると、肌を凍らせる程の勢いの寒さは部屋にも廊下にもどこにも無かった。若干西に傾きつつある太陽から放たれる光がとても温かかった。ふと桜の事を思い浮かべた。プロ野球の開幕試合で鳴り響く応援団のラッパ音も頭を過ぎった。つい数時間前の夜道の事がやけに懐かしく思えた。同時に、去年の春の事も思い出した。

冬は終わりを迎えようとしている。冬が好きな私は「今が冬である」という事でしばしば心を落ち着かせていたが、もうそうやって今を認識しても、命が尽きようとしている冬の姿しかない。なので、ちょっと気分転換に、これから先の季節の事に思いを馳せようと思った。そうすると、去年の春や夏の思い出がたくさん浮かんできた。不思議な話である。あれだけ辛い辛いと言って過ごした春や夏の時間が、思い出して愉快な気持ちになれる思い出として変換されているのである。当時は何の光も見えなかっただろうに、振り返るとその当時のよい事へやたらと感心がゆく。

そして、そうやって思いを馳せていると、季節は進み、何時の間にか今冬の始めの頃の事も懐かしんでいた。敢えて言語化してしまおうと思うが、楽しい冬であった。「なんだ、思ったよりよい時間だったではないか」という感覚が強い。そして、次の冬が一層楽しみになってきた。いや、これからの春や夏も、きっとよい時間になる気がする。思い出に触れて、これからも生きてみようという元気をちょっとだけ貰えた。どうせ後になって「なんだ、思ったよりよい時間だったではないか」と振り返る事ができるような気がした。


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