今月もひとり歌会(2024年2月)
月が終わると、毎日詠んだ歌を整理する「ひとり歌会」。誰のフィードバックも得ず、詠んだ歌を見ながら一人、仕事や生活をふりかえる。
近況
仕事がはかどらないこと、短歌が思うように詠めないこと、50歳という年齢がたびたび登場する。単に詠むほどに心が動かなかっただけとも言えるが、すぐには決着のつかなそうなことにぐずぐずとしているとも言える。思い悩むことなく、楽しい生活の中に詠むことはできないだろうか。
今月の歌(30首)
2/1木
嫌なこと悲しいことがなかった日 幸せな日には歌は詠めない
2/2金
自宅から香りを辿って徒歩10分 木々に囲まれたスパイス料理
2/3土
「かっわいぃぃぃ」の声に心で「うるせぇぇぇ」と内外騒がし土曜原宿
一杯の珈琲飲んで尿垂れる そんなに珈琲飲んじゃいないぞ
2/4日
パートナーがいること、息子と過ごすこと、どれ一つ当たり前のことじゃない
2/5月
降る雪をスロー動画で撮りながら 四十代はクルクルまわる
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑦)
2/6火
年末に片付かなかった仕事たち 二月のはじめにまとめて成仏
2/7水
「わからない」「理解できない」という言葉 歌会で身体を縮め聞いてる
→「わからない」「理解できない」という言葉を歌会で体を固くして聞く
(「塔」短歌会3/20締切投稿④)
2/8木
詠めるほど心が動かない時はノルマと称し文字書きつける
2/9金
家事だって勉強だっていい感じ 在宅勤務の仕事を積んで
2/10土
十代に諦めた百人一首の歌に五十を前に向き合っている
2/11日
数年ぶりに会うという友、毎日のSNSで暮らしを知ってる
2/12月
終戦の後の現れたゴジラとの邂逅 三度目も涙でにじむ
2/13火
半年後に必要となる出費の前に 金ほしい お金がほしい お金がほしい
2/14水
五十前に何者でもない鏡の男を見つけて深夜に涙を拭う
→五十歳を前に何者でもない男 鏡にあって涙を拭う
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑨)
2/15木
歌会誌に自分の名前を探しつつ見つかった後の安堵と後悔
2/16金
自分では受け入れがたい同性同士の恋愛にだってキュンキュンします(おっさんずラブ視聴中)
2/17土
一日に一万字書いて納得の週末の酒のおいしさたるや
2/18日
隅田川の川面をながめた五分後に「飽きた」と告げて去ろうとするも
→隅田川の川面見始めた五分後に「飽きた」と告げて去ろうとするも
(「塔」短歌会3/20締切投稿①)
2/19月
部屋に戻り 座椅子に座り 仕事でもしようとパソコン開いて眠る
2/20火
血糖値に自分を制御されぬためランチの後のスクワット100
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑧)
2/21水
夫婦になる儀式のようにラーメン店のカウンターに並び麺啜る二人
→夫婦になる儀式のようにカウンターに並びラーメンを啜る二人は
(「塔」短歌会3/20締切投稿②)
2/22木
金曜の祝日の前に残仕事眺めて明日やろうと缶開け
2/23金
気に入りのラーメン見つけ二日して彼女いぬ日に並ぶ行列
2/24土
「夜更かししたい」彼女が急にのたまわる普段はやらぬゲーム起ち上げ
2/25日
熊、馬、鹿をテーブルに並べ口に運び「ヒンナヒンナ」と言うなり寒夜
(「塔」短歌会3/20締切投稿③)
2/26月
帰り道ビール一口ほしくなる あきれ顔浮かびコンビニを過ぐ
2/27火
「しめきり」を打ち損なった「湿りき」を歌にできぬかとじっと見つめる
→「しめきり」を打ち損なった「湿りき」を歌にできぬかとじっと見ている
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑥)
2/28水
「一緒に創作をしてみませんか?」実績がなくてもAIは頷いてくれ
→「ご一緒に創作をしてみませんか?」実績ない俺をAIは受諾
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑤)
2/29木
うるう日にうるおう天のあるという 神も言葉に引きずられるか
(「塔」短歌会3/20締切投稿⑩)