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【800字コラム】 気づくこと、気づかされること

前職で大ボス(オーストラリア人)の来日中にサシで会議をした時のこと。

彼の豪州訛りの英語を理解するのに苦闘しつつ、こちらからの要望事項を伝えると
「よし、そういうことなら今俺から指示出しとくから」
とメールを書き始めたのだが、なんと送信前にGrammarly(英文の文法やスペルミスをAIが検出するツール)で推敲していた。
「ユー、ネイティブなのにそんなサービス使ってるの?」
笑いながら聞いたら、
「粗雑な文書にならないように気をつけてる」
との仰せ。

僕はずっとフランス語しかやってこなかったので、英語は社会人になってから、生きてゆく上で必要だからそれなりに喋れるようになっただけ。
受験英語さえ経験していないから文法や構文には疎いのに、時として英語が旨いと言われてしまうのは、おそらくはフランス語で習った文体に英語をあてはめた時に、外人にとってしっくりくる表現に聞こえるからであって、体系的に習っていないから、未だに苦手意識が消えない。

それでも、言いたいことをしっかり伝えないと仕事にならないから、会話や文書の参考書を読んだり、オンラインの翻訳サービスを援用したりするんだけど、ネイティブにして、いやネイティブだからこそ気をつけることがあるのだなと思ったし、ネイティブが英語チェッカーに頼っていることはむしろ励みになった。

そして、自分で気づけないからこそ自分以外の存在にチェックしてもらう必要があるというのは、言語に限った話ではないだろうとも思った。

歳を取ると、自分の理解が及ぶ範囲だけで物事を判断しがちになるし、過去の経験という土俵に現在の出来事を無理矢理持ち込もうとしてしまいがちだし、自分が年上というだけで周囲を見下しそうにもなる。
しかし、現実には自分には知らないことがたくさんあって、それを指摘されたり学んだりしないと改善も成長しない、というごくごく当たり前の謙虚さを持たねばならないのだとつくづく思う。

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