もうひとつの扉
角田さんの、「UFO」の中に入っていた短編。
河童を見たらしいルームメイトがいなくなる。
生活時間が違うのでなかなか気づかずルームシューズに
珈琲豆を入れて確かめてみたりする。
さらに日が経って、何故いないと男が訪ねてきて
その男から、一緒に河童を見たという話を聞くのである。
そんなことがあって初めて、その同居人のことを何も知らないと気づく。
細かなエピソードがいろいろあって
派遣として働いている中で仲間が突然契約打ち切りになっていたり
自分の事も打ち切るつもりがあるのかと気にしたり
同居人の持ち物を着てみたりいろいろな境界が曖昧になっていって。
賃貸住宅の更新があったので思い切って引っ越したら寺の近くで
毎日葬式があり、自分の葬式のような同姓同名の人の葬式もあったりして。
すごく不思議な味わいのある話だった。
1995年くらいだと、まだ携帯は普及する前だった。
作中でも、「ワープロで清書」なんて表現も出てくる。
ウインドウズ95が出たころって
ほとんどの人は自分がパソコンを買うようになるとは思っていなかったのではないか と思ってしまった。
95年は阪神大震災のあった年だった。
関東に住んでいた私はあの朝起きてテレビをつけたら
とんでもないことになっていて、やけに泣けたのを覚えている。
今 自分の記憶を解凍中なせいか当時のことを少し思い出したのだった。