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『まほり』高田大介(著)

大学院で社会学研究科を目指して研究を続けている大学四年生の勝山裕。卒研グループの飲み会に誘われた彼は、その際に出た都市伝説に興味をひかれる。上州の村では、二重丸が書かれた紙がいたるところに貼られているというのだ。この蛇の目紋は何を意味するのか? ちょうどその村に出身地が近かった裕は、夏休みの帰郷のついでに調査を始めた。偶然、図書館で司書のバイトをしていた昔なじみの飯山香織とともにフィールドワークを始めるが、調査の過程で出会った少年から不穏な噂を聞く。その村では少女が監禁されているというのだ……。代々伝わる、恐るべき因習とは? そして「まほり」の意味とは?
『図書館の魔女』の著者が放つ、初の長篇民俗学ミステリ!

濃厚な民俗学ホラーミステリー。長いが大満足の一冊。

主人公は大学で仕入れた怪談と、母の出生の謎に関連を感じ、地元の神社の由来を調べ始める。そこで中学時代の友人の女の子と出会い、ともにフィールド調査を行い、清楚に親睦を深めてゆくが、調査で明らかになるのはホラーな日本史。飢饉の歴史。数百年まえがこんな地獄とは、と息を呑む。

クライマックスまでは、飢饉の悲惨さ、神社の由来1つ調べるのもこんなに大変なんだよ、史学は資料の解釈が大変なんだよ、という話が延々と続く。どれも勉強になるが、宗教とは説話セラピーだという話や、研究者が確信なんか持っても意味がない、むしろ邪魔だ、という話が興味深かった。そして飢饉時代の残酷な風習を知ると、現代のなんて平和で豊かで良い時代であることか、とこの時代に生まれた幸福を噛み締めずにはおれない。

作中、参考文献の写真まで出てきて、学術もの小説で終わるのかな、と思っていると、「まほり」の意味が明らかになってからの滝から落ちるような展開に衝撃が走る。緩急が見事としか言えない。

ちょっと残念なのは、表現がかなり控えめなこと。今日の言葉狩りの影響なのかな…。横溝正史とか昭和のミステリーではもっときついこと言ってて衝撃をうけたが、そういった衝撃を最近の本では受けられないのは不幸なことだな。せっかくそういうテーマなのに。

また、民俗学ミステリーということで、小野不由美の『黒祠の島』みたいな話かな、という予断があり、いつ人が死ぬんだろう、メシヤマが死んじゃうの? とか、あの女の子が最後に…とか、叙述トリックで淳が主人公の父親なんだろうな、とか無駄で見当違いな読み方をしてしい、やや集中力を欠いてしまったのは失敗であった。

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