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観た映画の感想 #119『箱男』

『箱男』を観ました。

監督:石井岳龍
脚本:いながききよたか、石井岳龍
出演:永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市、渋川清彦、中村優子、川瀬陽太、他

ダンボールを頭からすっぽりと被った姿で都市をさまよい、覗き窓から世界を覗いて妄想をノートに記述する「箱男」。それは人間が望む最終形態であり、すべてから完全に解き放たれた存在だった。カメラマンの“わたし”は街で見かけた箱男に心を奪われ、自らもダンボールを被って箱男として生きることに。そんな彼に、数々の試練と危険が襲いかかる。
(映画.comより)

https://eiga.com/movie/101069/

「『箱男』って実写化するとこうなるんだ……!」って感想と、
「『箱男』って実写化するとこうなるのか……?」って感想が丁度半々でぶつかり合う、そんな映画化だったと思います。

そもそも原作小説が難解ですし、原作に対する自分なりの解釈というものも正直全然固まってない状態ではあるんですが、「一方的に見ているはずだった人物がいつの間にか見られる立場に」という見る/見られるの関係性が次々と入れ替わっていく流れは原作よりも交通整理がされていて幾分スッと入ってきた気がします。他には単純に箱男が動くとこうなるっていうビジュアル的な分かりやすさ。原作の時点で「どう考えてもこの状態で生きるの大変すぎるだろ……」って思ってましたけど、実際に画で見せられるとあの状態で生きるの想像よりもずっと無理そうなんですよね(笑) 
屈んだくらいの腰の高さをキープしながら走り回るとか横の穴から手を出して投石したりブラックジャックを振り回したり、本人は勿論真剣なんだけどシュールなギャグにしか見えなかったりとか。あとは原作のイメージよりも遥かに強烈な襲撃者になってるワッペン乞食。

永瀬正敏さんも良かったんですけど、ダントツで良かったのは葉子役の白本彩奈さん。原作よりも超越している感じというか、常に一枚上のレイヤーにいるみたいな感じだったんですよね。逆に贋箱男の浅野忠信さんはちょっとオーバーアクトに感じるところが少々……突然箱を被ったままの状態で格闘アクション映画になったところはさすがに面白かったですけど。
(この時に”わたし”がメタルギアソリッドで段ボールを被って敵兵から隠れる時の動きそのまんまの動きで贋箱男から隠れるシーンがあって笑っちゃいましたよね。こっちが元ネタなのは分かってても)
あと佐藤浩市さんは最近なんか死神博士みが出てきましたね。

そんな感じで「うおー! ここは良い!」っていうのと「ん~、ここは……何なんだ……?」っていうのが同じくらいあって、やっぱりそもそも映像化すること自体が難しかったのでは……って思ってたんですけど、どラストの展開で「なるほどこれは紛れもなく『箱男』の映画だ!!!」って膝を打ちました。
”わたし”が覗いた箱の中に映画館の客席が浮かび上がってきた時、自分が今いる劇場が映ってるのかと思ったんですよね、そんなこと絶対あり得ないのに。それくらい演出のタイミングがバッチリ決まってたし、確かに映画館って「箱」に入って映画という「或る世界」を見る場所だし、完全に油断してたところを深々と刺された感じ。この感覚は何も知らない映画館で観ないと味わえなかったと思うんで、これだけでも観に行った価値がありました。

あと音楽がすごくカッコよかった。
初期Black SabbathっぽいというかBorisっぽいというか、とにかく音がでかくてドゥームで泥くさいロックで。”わたし”がちょっとでも動揺したり何か新しいアクションをした時にいちいち音楽が止まるのもコントっぽくて面白かったですね。

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