静かな思い
今日は本の話を。
髙田郁さんの『出世花』を読みました。
あらすじ↓
不義密通の大罪を犯し、男と出奔した妻を討つため、矢萩源九郎は幼いお艶を連れて旅に出た。六年後、飢え凌ぎに毒草を食べてしまい、江戸近郊の下落合の青泉寺で行き倒れたふたり。源九郎は落命するも、一命をとりとめたお艶は、青泉寺の住職から「縁」という名をもらい、新たな人生を歩むことに――。青泉寺は死者の弔いを専門にする「墓寺」であった。真摯に死者を弔う人びとの姿に心打たれたお縁は、自らも湯灌場を手伝うようになる。悲境な運命を背負いながらも、真っ直ぐに自らの道を進む「縁」の成長を描いた、著者渾身のデビュー作、新版にて刊行!!
難しい感じもするのですが…
『おくりびと』の江戸時代、女性バージョンと思っていただければ。
湯灌とは亡くなられた方へ火葬の前に入浴と洗浄を行い、化粧やお直しをし、安らかにあの世へ行けるように行う仕事です。
いずれは誰もが死んでしまうけれど、人によって色々な事情があるということ。
特にこの作品の舞台となっている江戸時代の事情は現代と違って、病気や毒、身分の事情などによって命を落とすことが隣り合わせであった、こと。
医療の発達や、身分の格差という点では現代の方が生きやすいようにはなりましたが、やっぱり死とは逆らうことができない。
主人公のお縁は、死人ひとりひとりとしっかり向かい合い、最期まで尊重している姿がとても刺激を受けました。
ありがちな言葉になってしまいますが、命の大切さ、そして後悔しないように生きたいと思いました。
特に『落合蛍』。命がけの恋とはこのこと。
自分が後悔しない生き方は人には決められないということなのでしょうか…
また自然の表現がとても繊細で、それを想像するのもとても楽しいです。
この“雪柳”という花もお話に出てきました。風に靡いている情景が見えてきます…素敵です。
ちなみに花言葉は愛嬌、賢明、そして
『静かな思い』
まさに『出世花』にぴったりな言葉。
『みをつくし料理帖』シリーズでも思ったのですが、髙田さんのお話は、(亡くなった人の話で矛盾しますが)心が浄化されているような気持ちになります。
読み終えるたびに、心の不純物が、さぁーっと流れ出るような。
清らかな気持ちなります。きっと髙田さんの心が綺麗だからですね。
続編と、漫画版もあるみたいなので、また読む楽しみが増えました。これも映像化して欲しいなぁ…