【大手人事交流会vol.1イベントレポート】3社の採用ブランディング事例講演と交流会の様子をご紹介
こんにちは!No Companyのマーケティング担当です。今回は、2023年12月6日(水)に日比谷国際ビル コンファレンススクエアにて開催した、大手人事交流会イベントの様子の一部をレポートでご紹介します。
同イベントの中では、弊社が採用マーケティング支援を行わせていただいている三社の人事担当者様によるゲスト講演も実現。
具体的な施策はもちろん、採用マーケティングや採用ブランディングの必要性に関するお考えに至るまで、様々な視点から語っていただいた様子をぜひご覧ください。
Session①:学生視点に立った採用ブランドの再構築(SOMPOケア株式会社 湯浅 学氏)
ゲスト講演の最初にご登壇をいただいたのは、SOMPOケア株式会社にて、人材開発部 新卒採用育成 課長を務められている湯浅 学さん。湯浅さんには、「学生視点に立った採用ブランドの再構築」をテーマにお話いただきました。
湯浅:弊社が採用活動のリブランディングに取り組み始めた背景ですが、弊社はもともと、ナビサイトでの採用活動をメインとして行っていました。
コロナ禍まではある程度の採用数を確保できていましたが、コロナが明けてからというもの、採用を強化する企業さんが増えてきたことで、このままナビサイトに頼った採用を続けていていいのかと考えたことが第一の発端です。加えて、Z世代と言われる学生たちに対して、これまで我々が伝えようとしてきたメッセージが、あまり響かなくなってきていたという実感も一つありました。
このあたりの課題感を解決し、学生たちに寄り添った採用活動をしていきたいと考えたことが、No Companyさんに採用のリブランディングの相談をさせていただいた経緯になります。
取り組みとしては、まず、学生のインサイトや業界のイメージの調査を通じて、弊社の現在地を把握することを進めました。また、採用におけるカスタマージャーニーの導線を見直していくこと。さらには、弊社として発信するメッセージやそのコンセプトを、現代の学生たちに向けて再設計することにも取り組みました。
結果としては、認知→興味→関心→アクションというコミュニケーションマップがある中で、どこで、だれが、どんなコンテンツとして出ていくべきかが明確に整理できたように思っています。コンセプトコピーについても、No Companyさんの調査をもとに、既存媒体で掲げていた『介護プライド』というものから、『らしく生きる人、SOMPOケア』というものに変更いたしました。
これはまさに、「自分自身のキャリアを考えた働き方がしたい」という学生視点に寄せて、チューニングを行った最たる事例でもあります。
湯浅:具体的なコンテンツとして特に学生たちから反響をいただいているのは、採用サイトの中にある『1800日後』というドキュメンタリームービーです。もともと『180日後』という入社半年後の社員たちを紹介するムービーはあったのですが、『1800日後』は、そこに登場している4名の社員たちの5年後を紹介するというものになっています。中には、ポジションが昇進した社員や、5年後に親になっている社員などもいて、オンオフ両面からリアルが伝わるコンテンツとして、大変好評をいただいています。とてもおすすめなので、ぜひ今日参加している皆様にも見ていただきたいですね(笑)
結論、学生視点のブランドの再構築とは、Z世代をはじめとする今の学生たちが、どんな情報に共感を得るのか、どんな情報を欲しているのかを考え抜くことだと捉えています。
それは言い換えるのであれば、学生たちにとって必要な情報があった時に、それに自らアクセスでき、納得できるだけの情報を、できるだけ負荷なく得られる状態なのかなと考えています。学生たちは、就職活動だけでなく、学業であったり、アルバイトであったりと日々活動している中で、ネットで情報収集をするのが当たり前になっています。そういった面も鑑みれば、今の学生にあわせた情報の発信をすることは何よりも重要と言えるのではないでしょうか。
湯浅:弊社の採用チームとしましては、今後も採用市場の変化に対応しつつ、どんな時代でも勝ち筋を見いだせるような採用マーケティング集団になっていければと思っています。加えて、採用の競争が激化する中で、他社にも負けないような、最強のリクルーティング集団になっていきたい考えです。そのためにも忘れてはならないのが、「学生視点」だと我々は捉えています。本日は私以外の弊社メンバーも出席していますので、この後の時間で、ぜひ皆様と交流や意見交換をさせていただけたら嬉しいです。
Session②:全社を巻き込んだ採用ブランディングの確立(株式会社ニコン 古市 典昭氏)
続いてご登壇いただいたのは、株式会社ニコンにて、人事部 採用一課長を務める古市さんです。古市さんには、具体的な施策に加えて、「全社を巻き込んだ採用ブランディングの確立」についてお話いただきました。
古市:弊社が採用に注力し始めた経緯にはまず、2022年度に発表した中期経営計画における目標を達成するために、より人材採用に力を入れていかなければならないという背景がありました。
加えて、採用課題としては、ニコンというブランドのイメージがどんどん弱くなってきていたという事実も挙げられます。具体的な数字で申し上げると、カメラ最盛期であった頃のエントリー数に比べると、22年卒の新卒に至ってはエントリー数が5分の1程度まで減少してしまっていたのです。さらには、もともと技術系の会社ということもあり技術面の説明に終始しており、社風であったり、社員たちの人柄であったり、優れた人事制度などの「技術以外」の面の良さを伝えきれていなかったというところでも課題を痛感していました。
その上で、具体的な施策としては採用ホームページのリニューアルやX(旧Twitter)での新卒向けの情報発信の強化などが決定していたのですが、No Companyさんと具体的に取り組んだ施策としては、それらの発信内容を改良するにあたっての学生のインサイト調査です。実際にどんな内容を伝えていけば、我々が求めている人材の採用が実現できるのか、学生たちが欲している情報とは何なのか、正しい採用のプロセスとはどんなものなのかなどを検討するために、No Companyさんには尽力いただきました。
加えて、今年度からはオフラインイベントにおけるブースのデザインや、ノベルティの刷新などにも取り組んでいます。
古市:採用ホームページのリニューアルにおいて代表的な新規コンテンツの一つが、『あなたのそばのニコン』という、弊社の製品がどんな場所で、どのように使われているのかをわかりやすくお伝えするコンテンツです。単なるカメラメーカーではなく、皆さんの周りに弊社の製品がどれだけ多くあるのか、ひいては皆さんのライフスタイルの中に寄り添った製品がどれだけ多いのかをアピールできるコンテンツとしても、とても効果的だったと思っています。
また、『新人カメラ』という、若手社員たちがカメラをもって社内の様子を紹介するようなコンテンツも、学生たちが身近な先輩の存在を感じられるものとして好評だったと感じており、社風が感じられるコンテンツを引き続き拡充していっています。
これらは、先ほどSOMPOケアの湯浅さんがお話されていたような「学生視点」のお話にもつながりますね。まだまだ走り出したばかりの施策もありますが、初年度にあたる24年卒に関しては、募集開始3週間程度で、前年度のエントリー数と同等の数を集めることができました。インターンのエントリー数に関しても、前年比で2倍以上に伸びているという成果になっています。
古市:こういった取り組みを進めていくにあたって、弊社では人事採用部門だけでなく、他部門も巻き込んで各施策を進めていっている点が特徴と言えるでしょう。
まず挙げられるのが、広報デザイン部門との連携。プレスリリースを組んだり、メディアに対して人事系の発信を行ったりと、密に意見交換を行っています。次に、インターン部門との連携です。具体的には、インターンに参加してくれた学生と、インターン先の部署とが相思相愛になれば、優先的にそこへ配属していくことを打ち出しています。以前は、なかなか忙しい時期だと協力できないという部署も多かったのですが、こういった取り組みもあって、今ではどの部署も我先にという形で協力してくれています。エントリー数が増加していくにつれ、嬉しい悲鳴が上がっているという状態です。
改めて思うのは、人事部門のみで採用活動を頑張っていこうと思っても、やはりそこには限界があるということです。全社的な協力があってこそ、本当の意味での採用強化が実現できるのだなと。実際に成果が上がってきていることからも、「みんなで採用をやっていこう」という、ある種のモメンタムのようなものが全社的に醸成されてきているようにも感じますので、私自身、これからももっといろいろな新しい施策にチャレンジしていけたらと思っています。ぜひ、今日の交流会でも、皆さんといろいろと情報交換させていただけたら嬉しいです。
Session③:採用活動における「ブランディング」「マーケティング」とは何か(パナソニックコネクト株式会社 河野 安里沙氏)
最後にご登壇いただいたのは、パナソニックコネクト株式会社のデザイン&マーケティング本部 コーポレートブランディング部 ブランディング課にて、採用マーケティングを行われている河野さん。河野さんには、「採用領域におけるマーケティングやブランディング」について、具体的な取り組みなども踏まえたお考えをお聞かせいただきました。
河野:ブランディングとは区別される状態をつくることだとよく言われています。もっとかみ砕いてお伝えすると、例えば弊社で言えば、「パナソニックはこういう会社ですよね」という想起、もっとカジュアルに言うと#(ハッシュタグ)を届けたい相手の頭の中につくることです。
わかりやすい例を挙げるとするなら、日立製作所さんの有名なハワイの木のCMがありますよね?あの木を見ると、「日立だ」って想起されますよね。そして、もう一つ重要なことはブランディング=資産であり、未来への投資だということです。それを採用に当てはめるとするなら、採用ブランディングは今年の採用活動のための活動ではなく、5年後・10年後の採用のためにブランドの構築に投資をすることが、私は採用ブランディングであると捉えています。
マーケティングは立場や対象となるものによって解釈や説明が数多く存在するので一言で説明することはかなり難しいと感じています。1つの見方としては、マーケティングは価値をつくり、価値を届けたい人に伝え、価値を維持し続けるためのすべての活動と考えることができます。自社が仲間になってほしい人材に対して、採用市場や価値観の変化に合わせながら、自社で働く価値を作り、その価値を求職者へ届け、その働く魅力を維持し続けるための全ての活動が採用マーケティングであると私は捉えています。となると、もはや採用マーケティングは、人事部門の領域だけでできるものではなく、全社的に取り組まなければならないことになると考えています。
河野:その上で、採用マーケティングにおいて気を付けなければならないポイントがいくつかあると私は思っています。よく遭遇するのは、「採用マーケティングやブランディングをやるぞ=コンテンツつくって発信」みたいな形で、まずHowから入ってしまうケース。要は、「誰に対して、何を届けたくて、どういう状態を目指すのか」という戦略策定から入らないと、施策を実行することに溺れて、大変なのに効果がでないという状況になってしまいます。
先ほどもお伝えした通り、マーケティングやブランディングは人事(採用)だけでできる話ではなく、会社全員の行動や発言の積み重ねの先にあるものなのです。多くの人を巻き込む必要があるため、「誰に」「何を」を絶対に明確にしなければいけませんし、シンプルでないといけないと思っています。それがない場合どうなるかというと、発信内容やそれぞれの決断がバラバラになり、ブランドとしての一貫性が保たれなくなってしまいます。また、「これ、どっちのほうがいいんだっけ?」と迷ったときなった時に、判断がばらけたり、自分たちで判断がつかなくて、結局上層部に聞きにいったり、交渉に時間がかかったりして進むスピードがとても遅くなってしまいます。それを防ぐためにも、みんなが向くべき方向、ないしは迷った時に立ち戻れるポイントを明確にしておくことが重要です。
続いてのポイントは、世の中にはブランディングやマーケティングの施策が数多くありますが、これさえやっておけばOKという施策はないということです。例えばSNSのアカウント運用で言うなら、潜在顧客から認知をとることや、興味喚起をしてもらうことはできますが、比較検討や購入まではできません。要は、その施策が何に効くのか、その効能をちゃんと理解することが重要であるということです。
河野:採用マーケティングやブランディングって、まだ確立されたものがないので私も日々勉強しているのですが、「売上」を「採用」に置き換えて様々な本を読んでいます。池田紀行氏の名著『売上の地図』には、「売上=「想起」×「買い求めやすさ」」とあって。この「売上」を「採用」に置き換えて読むだけで、採用マーケティングやブランディングを進めるうえで参考になることが沢山あると思っています。
前者の想起されやすさで言えば、「〇〇=この会社だ」みたいに求職者に思ってもらえるか。後者の買い求めやすさで言えば、これはエントリーのしやすさですよね。後者に関しては採用HPからエントリーフォームへのコンバージョンを上げるための施策など取り組まれている会社さんも多いと思いますが、前者の想起の部分に関しては、まだまだ投資できていない会社さんも多いのかなと、個人的には思っています。もっとお話したいことはあるのですが、そろそろお時間が来てしまうので、続きはこの後の交流会で、ぜひ皆様と直接お話できたらと思っています。
交流会の様子
講演後には、軽食・ドリンクが用意された懇親会も開催された今回の大手人事交流会。採用担当者同士で情報交換がなされたり、それぞれの抱えるお悩みについての意見交換がなされたりと、参加者同士でも盛り上がりを見せていました。
最後に
No Companyでは、今後もSNSデータの活用ノウハウや博報堂グループとしての豊富なマーケティング知見などを活かし、企業様の採用活動支援を行っていくことに加えて、今回のような採用ブランディングの施策・実践ナレッジをご紹介するイベントも随時開催していく予定ですので、ぜひとも足をお運びいただければ幸いです。