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あの大賞作品どうやって書いたか全部見せ!レッツ脳みそ開帳note
もうすぐ今年も終わりますが、もうちょっと受賞のよろこびをしがんでおこうと思い。
だいたい人生において「受賞」することってそんなにないのでスルメイカぐらいしがんでいます。どうもどうも。
本当は授賞式とかでみなさんに「どうやって書いたんですか」を聞きたかったけど、夜も遅かったしオンラインやしで聞けず。なので代わりに(?)自分がどうやってショートショートnote杯で大賞をいただいた「君に贈る火星の」を書いたのか、振り返ってみることにしました。そうここは脳みそ開帳noteです。
「君に贈る火星の」って何や。
「君に贈る火星の」はコンテストのお題の1つでしたが、ほかのお題と比べてずいぶん余白が多い。多すぎる。
ほかのは
「金持ちジュリエット」→お金もちのジュリエットの話ね
「違法の冷蔵庫」→どう違法なのか考えればいいのか
「株式会社リストラ」→どんな会社、どんなサービス?
とか、考えるとっかかりがわかりやすいのに、「君に贈る火星の」は「火星の何か」がわからない。私が最初に考えたのは、「火星から何を贈ればロマンチックでドラマチックか」でした。
もうこの時点でいわゆるショートショートと違う方向に進んでいるような気もする。まあいいや。とにかく「何贈ろう」から考えた私はすぐにつまづきます。
だって贈れそうなものが何も思いつかない。「月なら石?でも火星から石贈っても、だから何やねん」。も少し学があったら何かロマンチックでドラマチックな火星からの贈り物を知っているのかもしれません。無知な私は火星から何か贈ることを早々に諦めました。いいや。火星じゃないことにしてしまおう。
そこで出てきたのが最初の一文。
お父さんは火星にいるの。それは、君の母さんが咄嗟についた嘘だった。
これで火星に存在するものを贈らなくてもよくなりました。何を贈っても私の自由。ラッキーラッキー。
「父親が火星にいる」テイにしたのは最初の印象からなんとなく、です。「君に贈る」という字面が、父と子を連想させたんでしょうか。
しかしお母さんはなんで火星にいると嘘をついたのか。離婚かな。うーん。離婚ならそう言えばいいような。そしてなぜ火星なのか。もう会えないのか。戦争に行ったことにしようか。でも火星である必然性がない。じゃあどんな設定ならしっくりくるのか?
彼女の嘘に乗じて、僕は君に手紙を出した。窓に鉄格子のついたこの部屋を、宇宙船に見立てて。
もちろんこんなカッチリ決まった文章ではないですが。
「子どもに会いに行けない場所」であり、「母が公言したくない場所」であり、「子どもと通じることはかろうじてできそうな場所」。この3点がぴったりハマったのが、「鉄格子のついた部屋」でした。
手紙火星=刑務所の設定を先に思いついたのではなく、行きあたりばったりの成り行きで刑務所になった、なってしまった感じです。
発想のヒントになったのは今年か去年に見ていた東海テレビの「ふたりの死刑囚」と「眠る村」。
冤罪が疑われる事件で死刑判決を受けた方のドキュメンタリーです。約半世紀、死刑囚として生きた記録に心をぐわんぐわん揺さぶられました。
今書いてて気づいたけど、私の中では「一生戻って来れないくらい罪の重い人=死刑囚?」と思ってたので、そしたら彼がいる場所は本来刑務所じゃなくて拘置所です。プロの方はこういうところも細かく設定するのでしょうね。まあ懲役何十年とかもあるから、いいのかな、刑務所でも。テキトウですみません。
そしてこの時点で「何を贈るか」は不明。手紙ってことにしとこうか。それはちょっとおもしろみに欠けるなあ。どうしよう〜と思いながらとにかく続けます。なぜなら私は毎日noteを更新するマンだから。あんまり考えている時間がない。ギリギリでいつも生きているので、このときすでに23時近くだったはず。
君が「かせいあて」に返事をくれたときは、涙が出るほどうれしかった。
片手で抱き上げられた君が、もう平仮名を覚えたんだ、と思えば、次の手紙では逆上がりができるようになっていた。
学校のこと。母さんに内緒のいたずら。初めての恋。空で言えるほど読み返した。
このへんはじゃんじゃん時計の針を進めようと思っていたくらいで、特筆することがありません。「そらでいえるほど」という表現は日本語の美しさが際立ってるなあと思います。
最後の手紙は、15年前。
「お父さんのこと話したら、みんなが嘘つきって。本当は刑務所にいるくせにって。そんなの嘘!お父さんは火星にいるのよね?」
15年はまあどんぶり勘定です。最後の手紙が思春期に届いて、その後結婚してもおかしくない年齢。
手紙が届かなくなったことにしたのは、盛り上がりを作りたかったのと、「火星にいる」なんて嘘は子どもが成長するなかで自然にバレたり疑ったりするやろ、さすがに、と思ったから。
君のそばにいてやれない自分を、あれほど悔やんだことはない。例え僕の無実が証明されようと、君の心の傷は、なかったことにはならないのだから。
影響を受けたの冤罪事件の真相は分かりませんが、私は私の脳内に悪人を登場させられなかったようです。何の罪か知らないけど無実であれ!と無意識に思っていたのでしょう。さながら「再審を求める会」の心持ちです。
で、信じられないことにここへ来ても「何を贈るか」決まっていなかった。刑務所からって何か発送できるんやろうか、と思って「刑務所作業で作られる工芸品」をネットで調べたりしました。発送できるのかよくわからんけど漆塗りとか竹細工とかにしなくてよかった。ドラマもヘチマもありません。ヘチマ?
結局発送できそうなものがなかったので、やっぱり「最後の手紙」とかにしようかな〜ツマンネーと思っていたときにぽっかり浮かんだのが「折り紙」でした。
手紙が送れるんやから、封筒の中に折り紙を入れることにしよう。15年音信不通の娘に、結婚する娘に、お祝いのお花を。
結婚すること、母さんから聞いたよ。
僕はまだしばらく帰れそうにないから、せめて花を贈ります。
火星の花は、そう。
地球の折り紙と、よく似ているんだ。
彼が「火星の花」と言い張っているのは、やっぱり私が「再審を求める会」の気分だからですね。どうしたって、無実であってほしいのです。
ここまでばーっと書いたら450文字くらいあったでしょうか。あとは削っていく作業。意外と数をくってる句読点は、でもあんまり削りたくないから、お母さんを母さんにしたり。「片手で抱き上げられるほど小さかった君」と書いたところは、小さいって書かなくても通じるから削ったり。
それで最終410文字ぴったりになんとか収まり、毎日更新の自分ルールも守れた次第です。ハッピー。
どうでしょう。嘘みたいに行きあたりばったりでしたね。
自分でも書いてみてびっくりしました。どうなるかわからないまま書き進めていたんだから。
ショートショートっぽくないやん!とお思いの方もいるでしょう。私もそうだなと思う。私はもともとショートショートを書いたことがなくて、何か物語を書きたいとか、伝えたいとか表現したいとかの衝動は特にないのかもしれません。でもだからこそ、お題に身を任せて、お題と一緒に物語を作ることができた、ということかも。
まとまったんだかよくわかりませんが、しがむのはこれくらいにして、来年からまた心機一転(といっても変わらず毎日更新)がんばります。
あー、そして誰かの「脳みそ開帳note」も見てみたいところです。誰か開帳する人はいませんか。