小説って役に立たないじゃないですか。
そんなこと言う人って実在したんですね。
読書フレンドリー?な人しか
周りにいなかったことに、
そう言われて初めて気がついた。
いまある環境を当たり前と思ったらだめですね。
仕事のあいまの
ちょこっとした待ち時間に、
なんの気なしに
「本読みますか?」と聞いたら、
その人は「読みますよ〜」と言った。
うっかりうれしくなって
「おすすめありますか?誰がすきとか」って
返したとたんにばっさり。
「あー、そういう感じのは読まないんです。
小説って役に立たないじゃないですか。」
ウワーッ!
都市伝説が実在したみたいに
びっくりしすぎて
絶句した。
「別に仕事の役に立つわけじゃないですよね。」
こっちがダメージをうけてるあいだに
畳み掛けるタイプ。
「実用書は読みます、役に立つから。」
あんまりにも。
あんまりにもあんまりだったから
何も答えられなかったけど、
ああもう言ってやればよかった。
「日々是好日を読みなよ」って。
ねえ、すぐに役に立つ実用書だって
大事でしょうよ。
そういう読書を否定はしない。
すきな領域なら、
ある人にとってはめちゃくちゃ面白いことも
わかるよ。
でもね、でも、
あなたが「役に立たない」と
決めてかかっていることが、
心の中でじっくり発酵して、
いつか自分を救ってくれることがあるんだよ。
なんかもう泣きたい気持ちになってきた。
役に立たないってなんだろう。
おもしろくないとか、
楽しみ方がわからないとかなら
問題ない。楽しみ方を知ればいいだけだから。
でもそうじゃなくて、
役に立つとか立たないとかで決めるのは、
それはとっても貧しいことだと思う。
その二つのものさししか
持つことができないなんて悲しいことだと思う。
そんな人にこそ、
役に立たないことがきっと役に立つのに。
ああもう言ってやればよかった。
「日々是好日を読みなよ」って。
役に立たない読書はいいもんだよって。