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400字程度で書かれた小説たち。ライフワークであーる。 2020年4月11日より2023年12月31日まで 「なかがわよしのは、ここにいます。」(https://nkgwysn.…
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おむすびころりん、○か△か【400字小説】

おむすびころりん、○か△か【400字小説】

△か、○か。我々にとってそれはとても重要な事項。正直、どちらでも転がってくる意味では、どうでも良かったりする。でもね、「♪おむすびころりん、すっとんとん♫」っていう歌を歌うには△の方が向いてる。△の角がリズムを刻んで転がり落ちるからだよ。○だとコロコロとスムーズに転がりすぎてグルーヴがないんですよね。△だから当然、三拍子を叩く。難しいと見せかけて、するするっと歌えるんだな、これが。「♪おむすびころ

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みにくいアヒルのこ、こんな裏話【400字小説】

みにくいアヒルのこ、こんな裏話【400字小説】

あの子が白鳥だったことには驚いた。いじめて悪かったと感じている。早く新しい生活に慣れて、美しく生きてほしいと思うよ。だからといってオレは引け目をあの子に感じたりはしない。アヒルだって立派な鳥だ。かわいげのある生き物だ!って勝手に自負しちゃう。あの子をいじめたのは、事実に薄々気づいてたからかもね。あの子が去ってから季節は移り変わった。果たしてうまくやっているだろうか、そもそも、この厳しい世界を生き抜

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笠地蔵、目撃者【400字小説】

笠地蔵、目撃者【400字小説】

もんすんげえ、音がすっがら、あわてーて家を出たんだんばさ。えれ~勢いで何かが駆けててくのが見えから、おどれーた。なんか豪勢なもんを運んでんのがわかった。横取りしてやりたかりたかたったが、どうにもするんことできんくてな。あ゛っという間で。でも、雪の轍はできてったから、おっこらしょと、そのあとをつけたばさね。途中でめげそうになって何度も後悔したばってん。諦め駆けたとき、目の先のどえれえ向こうにきらきら

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マッチ売りの少女、現代のマッチョだったら【400字小説】

マッチ売りの少女、現代のマッチョだったら【400字小説】

少女が寒さのなか倒れているのに誰も気にしていない。わたしは見かねて彼女の下へ早足で向かう。つるんと滑りそうで途中で「もうよそう」と引き返しそうになったが、少女が立ち上がりそうになったので、引き返せなかった。プルプルと生まれたての小鹿のようにとはよく言ったもので、そうとしか表現できない絶妙な少女の様子。近づくとわたしにしがみついてきてこちらまで倒れそうに。ところが体の感触が少女らしくなかった。全身、

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雪女、絶世の美女【400字小説】

雪女、絶世の美女【400字小説】

猛吹雪のなか、小屋で晩酌をしていた。茂作と囲炉裏の湯で熱燗にした日本酒を「アツッアツッ」と飲んでいた。鍋の猪肉が「グツグツ」言っている。酒のまわったボクはいつの間にか眠ってしまう。酷く寒くて目を覚ました。それで宴会なんて夢だったことを思い出す。戸が開いて雪が吹き込んでいた。茂作の倒れた体の上に雪が積もっている。か細い女が傍らに立っていた。「このことを言ったら、てめえも殺す」と女はドスの利いた声で忠

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人魚姫、ブス【400字小説】

人魚姫、ブス【400字小説】

岩場で後ろ姿を見た時、その瞬間に惚れた。背中が海水に濡れて美しかった。太陽の光が反射してきらきら光っている。肩甲骨の辺りまで伸びた長い髪の色は明るい茶色。腰から下は、それのそれで。人間ではないから逆に美しく感じたのかもしれない。噂では聞いていた人魚。でも実際に見ることができて幸運だった。言葉は通じるだろうかと、どきどきした。ただでさえ、こんな場面で人間の女にどう声をかけたらいいのかわからないのに、

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一寸法師、おわんが湾岸【400字小説】

一寸法師、おわんが湾岸【400字小説】

お姫様は毛量が軽くて爽やかな感じがした・大人にならない理由がないわけはなかった・何につけ・おわんが湾岸・居た堪れない・「せーの!」でも飛べない・デカい態度で食事をするなよ・作ってくれた人に感激を・爪楊枝を刀にして鬼と対峙・目ん玉を目がけて行く・逝きそうになって生きそうに・死んでないよ・ボクは・やっつけられてないよ・鬼を・悪は悪の正義があることをこの旅で知った・馬車のきつねを抱き締めて台風をやりすご

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金の斧と銀の斧、みずうみに身を投げたら【400字小説】

金の斧と銀の斧、みずうみに身を投げたら【400字小説】

どちらの斧ももらえなかったうえに、使っていた斧もみずうみに投げ入れてしまって、明日の仕事すらままならなくなった。生活をどうすればいいのだろうと項垂れていた。気分転換にパブへ行き、大酒を飲んだ。酔っ払って苛々して喧嘩をふっかけた。ボコボコにされてなけなしの金まで取られた。家に帰ると妻の置き手紙があり、洋服掛けに服がなかったので、出て行ったようだ。いよいよ生きる価値を見いだせなくなって、斧を投げたみず

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こぶとりじいさん、そのあと【400字小説】

こぶとりじいさん、そのあと【400字小説】

こぶがなくなって喜んで帰ったが、ばあさんは興味も示さずに「ふうん」と言うだけだった。いまだにばあさんを愛しているのは異常なのか。愛の言葉を言ってもばあさんは「ふうん」で片付ける。わしと結婚して不運だったとでも言いたげに。わしにこぶがなくって一日もしないで、その噂は村中を席巻した。だから隣のじいさんに会うまでもなく彼にふたつのこぶがついたのを人伝に聞いたのだ。普段から嫌われているあの人だから、村人た

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おおきなかぶ、前日【400字小説】

おおきなかぶ、前日【400字小説】

手に負えない、わたしはそう思っている。おじいさんはかぶが大きく育っていることを喜んでいるけれど、そもそも抜くことが無理だとわたしは諦めている。わたしが変なクスリをかぶのまわりに撒いたからいけなかったのかしら。おじいさんはバカだから、わたしの仕業に気づかない。万が一かぶが抜けたとしても、味に保証はできないでしょう。牛乳煮にしてもそのぼやけた味はごまかせない。つまり、すべては無駄だったの。「明日、かぶ

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舌切りスズメ、ばあさんとの熟年離婚【400字小説】

舌切りスズメ、ばあさんとの熟年離婚【400字小説】

欲深い人間は嫌いだ。ばあさんをもう愛していない。若い頃はあんな人間ではなかった。お淑やかで自己主張も控えめで見守る系統の女性だった。それでいて大事なことはきちんと口にする人で。そんな人柄が好きだった。それがいつからだろう、金に目がくらむような腹黒い性格になってしまった。大きいつづらのことで肝をひやしたから変わるかもと思ったけれど、結局、ケロッと元通りの意地悪いばあさんに戻った。性格の変化は、もしか

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王様の耳はロバの耳、我慢の限界【400字小説】

王様の耳はロバの耳、我慢の限界【400字小説】

理容師という仕事は会話術だ。昨日、髪を切った女性は切りはじめてすぐに失恋したことを悟った。吐き出させた方が良いと感じたので言葉を選んで、それとなく誘導した。すると、すんなり告白して泣き笑った。王様との会話も同じで、言葉を吟味して慎重に髪を整えていく。耳は立派でうっとりする形をしていた。隠すことはないとずっと思っている。「その耳は庶民の意見を聞くために大きいのです」と何度喉元まで出かけたことか。でも

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カチカチ山、たとえばたぬきが死んだら【400字小説】

カチカチ山、たとえばたぬきが死んだら【400字小説】

「殺すつもりはありませんでした。でも、おじいさんやおばあさんに酷いことをしたたぬきに憎悪はありました。ただ、たぬきを殺そうなんて思わなかった。むしろ、殺すこと以上の苦しみを与えたかった。火を点けたことも溺れさせたのも、そういった気持ちからです。死刑ですか?殺すつもりはなかったとはいえ、それよりも強大な恨みを持ったことは、大きな罪かも知れません。そうですね、死刑は致し方ないことです。わかりました、裁

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おおかみと7ひきの子やぎ、全員食べられたら【400字小説】

おおかみと7ひきの子やぎ、全員食べられたら【400字小説】

家に戻った時の凄惨な場面を思い出すと発狂してしまう。ここまでおおかみの仕業は酷いものなのかと恨まずにはいられなかった。かといってわたし一人では何もできない。ただただ泣く日が続いた。自分も責めた、もっとあの子たちにドアーを開けないでと言い聞かせることはできなかったか。もっと早く戻ってこられなかったか。次第にわたしは狂っているようだ。あの家はもう取り壊されて、親戚の家で住まわせてもらっている。そこは警

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