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人魚姫、ブス【400字小説】

岩場で後ろ姿を見た時、その瞬間に惚れた。背中が海水に濡れて美しかった。太陽の光が反射してきらきら光っている。肩甲骨の辺りまで伸びた長い髪の色は明るい茶色。腰から下は、それのそれで。人間ではないから逆に美しく感じたのかもしれない。噂では聞いていた人魚。でも実際に見ることができて幸運だった。言葉は通じるだろうかと、どきどきした。ただでさえ、こんな場面で人間の女にどう声をかけたらいいのかわからないのに、人魚だ、尚更わからないじゃないか。考えに考えて飛び出た言葉は「すいません」だった。振り向いて人魚は「なあに?」と言った。ブスだった。人魚界隈でも有名なブスであることは容易に想像できるほどだった。でも、その声はすべてを凌駕してかわいらしかった。恋をせずにはいられないとはこのソワソワ感だ。でも、恋に落ちたら言葉を見失うものだ。また人魚に「なあに?」と聞かれたので「人間はどうですか?」と抽象的な質問を。

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