マッチ売りの少女、現代のマッチョだったら【400字小説】
少女が寒さのなか倒れているのに誰も気にしていない。わたしは見かねて彼女の下へ早足で向かう。つるんと滑りそうで途中で「もうよそう」と引き返しそうになったが、少女が立ち上がりそうになったので、引き返せなかった。プルプルと生まれたての小鹿のようにとはよく言ったもので、そうとしか表現できない絶妙な少女の様子。近づくとわたしにしがみついてきてこちらまで倒れそうに。ところが体の感触が少女らしくなかった。全身、筋肉の鎧を身に付けているかのような強靭さを感じた。「マッチ買ってくれませんか?」