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商標法 判例 Anne of Green Gables事件(知財高裁平成18年9月20日、平成17年(行ケ)10349号)

※本記事は判例百選の記載に基づいて作成しています。判例百選のページ数等は記事の最下段に記載しています。

 商標法4条1項7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができない旨、規定されています。
本判決では、商標法4条1項7号の公序良俗違反の類型5個が示されました。

 具体的には、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には,①その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,
②当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,
③他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,
④特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,
⑤当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,
などが含まれます。

 これらの類型は、現在の商標審査基準における商標法4条1項7号に該当する場合の類型と同じです。

1.「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」とは、例えば、以下(1)から(5)に該当する場合をいう。
(1) 商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音である場合。
 なお、非道徳的若しくは差別的又は他人に不快な印象を与えるものであるか否かは、特に、構成する文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断する。
(2) 商標の構成自体が上記(1)でなくても、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合。(3) 他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合。
(4) 特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合。(5) 当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/kijun/index.html

 判例百選によると、「他人が使用している商標を先回りして悪意で出願する行為や、既に周知著名性を獲得している名称や図形等を第三者が無断で出願する行為に関しては、商標法の保護法益でる公正な競業秩序を害する行為であり、このような場合にまで商標登録を認めることは、商標法の制度趣旨にそぐわない。」とされています。

 たしかに、コンマー事件(平成19年(行ケ)10391号)のように、商標法4条1項7号の適用について厳格な基準を示している判例もあります。しかし、判例百選では、「単なる私益的な利害の調整を超えると判断できる事案に関し、公正な競業秩序の維持や国際信義の観点から、公序良俗違反に該当すると判断することは一定の場合には許容される。」ととしています。

 このような流れで、判例百選では、「本判決においては、文化遺産的な価値の毀損の観点を重視した上で、公序良俗違反に該当するとの判断をしており、本判決の判断は上記コンマー事件の判断基準と矛盾するものではないと考えられる。」としています。

 また、判例百選では、商標法4条1項7号が適用された例として、著名な故人の人名についてのダリ事件(平成13年(行ケ)第443号)、著名なキャラクターの名称についてのTarzan事件(平成23年(行ケ)10400号)、が挙げられています。

●参考文献
・茶園成樹・田村善之・宮脇正晴・横山久芳(編)『商標・意匠・不正競争判例百選 第2版』(有斐閣,2020年)18, 19ページ

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