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特許法35条 職務発明における従業者等と、従業者等に対する協議・開示・聴取

1.職務発明における従業者等

 特許法35条1項には、職務発明における従業者等が、「従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)」と規定されています。

 この従業者等に含まれる従業者の定義については、特許法には規定が見つかりませんでした。そこで、他の法域を確認したところ、労働基準法・労働契約法には、「労働者」という概念が規定されていました。

  労働基準法9条では、「この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」と規定されています。
また、労働契約法2条1項では、「この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。」と規定されています。

 特許法35条1項の「従業者」と、労働基準法9条及び労働契約法2条1項の「労働者」と、は同じ概念と思われます。
このため、特許法35条1項の「従業者」の意味としては、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう、程度の意味と思われます。

なお、特許法35条1項では、従業者と公務員は別の概念として挙げられていますので、従業者には公務員は含まれません。

2.協議・開示・聴取の範囲

特許法35条6項の協議・開示・聴取ですが、職務発明ごとに、職務発明の発明者に協議・開示・聴取を行うべきか否かという話を聞きました。

それに関して、Google検索したところ、特許法35条6項の指針(ガイドライン)に関するQ&A というのがありました(情報元)。このQ&Aによると、職務発明の発明者との間で個別に対価に対する合意を得ている必要は無いようです。


A6 意見の聴取は、特定の職務発明についての相当の利益の内容の決定に関して、その職務発明をした従業者等から意見を聴くことを言います。 意見の聴取の時機については、①あらかじめ従業者等から意見を聴取した上で相当の利益の内容を決定するという場合、②使用者等が基準に基づいて相当の利益を決定した後に、従業者等からその決定について意見を聴くという場合、のいずれであってもよいと考えられます。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/document/shokumu_guideline/faq.pdf

A7  意見の聴取は、その結果として相当の内容の決定について使用者等と従業者等との間で個別の合意がなされることまでを求めているものではありません。 もっとも、従業者等からの意見に対して、使用者等は真摯に対応する必要はあると考えられます。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/shokumu/document/shokumu_guideline/faq.pdf

この内容が正しいのであれば、一般的な職務発明規定を設けて従業員への説明を行っている場合は、大きな問題はなさそうに思えます。

・特許法35条 職務発明

(職務発明)
第三十五条 使用者、法人、国又は地方公共団体(以下「使用者等」という。)は、従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(以下「従業者等」という。)がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至つた行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明(以下「職務発明」という。)について特許を受けたとき、又は職務発明について特許を受ける権利を承継した者がその発明について特許を受けたときは、その特許権について通常実施権を有する。
2 従業者等がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ、使用者等に特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ、又は使用者等のため仮専用実施権若しくは専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。
3 従業者等がした職務発明については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する。
4 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利を取得させ、使用者等に特許権を承継させ、若しくは使用者等のため専用実施権を設定したとき、又は契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等のため仮専用実施権を設定した場合において、第三十四条の二第二項の規定により専用実施権が設定されたものとみなされたときは、相当の金銭その他の経済上の利益(次項及び第七項において「相当の利益」という。)を受ける権利を有する。
5 契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の利益について定める場合には、相当の利益の内容を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、相当の利益の内容の決定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより相当の利益を与えることが不合理であると認められるものであつてはならない。
6 経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、前項の規定により考慮すべき状況等に関する事項について指針を定め、これを公表するものとする。
7 相当の利益についての定めがない場合又はその定めたところにより相当の利益を与えることが第五項の規定により不合理であると認められる場合には、第四項の規定により受けるべき相当の利益の内容は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。

・労働基準法9条 定義

(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

・労働契約法2条 定義

(定義)
第二条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。

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