不競法5条 損害の額の推定等
多くの場合、損害賠償請求は、民法709条に基づいて行われます。
民法709条の要件は、(i)故意又は過失があること、(ii)他人の権利又は法律上保護される利益を侵害したこと、(iii)これによって損害が発生していること、です。
これらの民法709条の要件は、損害賠償請求を行うのが原則です。
しかし、不正競争によって営業上の利益が侵害されたことによる損害は、立証困難であることも多いです。そこで、不競法は、損害の額の推定等の規定(不競法5条)を設けています。
具体的には、所定の不正競争については侵害者の譲渡数量に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じた額を被侵害者の損害の額と推定し(不競法5条1項)、侵害者が侵害行為により受けた利益額を損害額と推定し(不競法5条2項)、所定の不正競争については使用許諾料相当額を損害額と推定します(不競法5条3項)。
本条の損害額は「推定」されるだけなので、仮に、損害が全く発生していないことを「証明」できれば、損害賠償責任を免れれうる場合もあるといえます。
・不競法5条
(損害の額の推定等)
第五条 第二条第一項第一号から第十六号まで又は第二十二号に掲げる不正競争(同項第四号から第九号までに掲げるものにあっては、技術上の秘密に関するものに限る。)によって営業上の利益を侵害された者(以下この項において「被侵害者」という。)が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した物を譲渡したときは、その譲渡した物の数量(以下この項において「譲渡数量」という。)に、被侵害者がその侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額を乗じて得た額を、被侵害者の当該物に係る販売その他の行為を行う能力に応じた額を超えない限度において、被侵害者が受けた損害の額とすることができる。ただし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情があるときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものとする。
2 不正競争によって営業上の利益を侵害された者が故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為により利益を受けているときは、その利益の額は、その営業上の利益を侵害された者が受けた損害の額と推定する。
3 第二条第一項第一号から第九号まで、第十一号から第十六号まで、第十九号又は第二十二号に掲げる不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、故意又は過失により自己の営業上の利益を侵害した者に対し、次の各号に掲げる不正競争の区分に応じて当該各号に定める行為に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭を、自己が受けた損害の額としてその賠償を請求することができる。
一 第二条第一項第一号又は第二号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品等表示の使用
二 第二条第一項第三号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商品の形態の使用
三 第二条第一項第四号から第九号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る営業秘密の使用
四 第二条第一項第十一号から第十六号までに掲げる不正競争 当該侵害に係る限定提供データの使用
五 第二条第一項第十九号に掲げる不正競争 当該侵害に係るドメイン名の使用
六 第二条第一項第二十二号に掲げる不正競争 当該侵害に係る商標の使用
4 前項の規定は、同項に規定する金額を超える損害の賠償の請求を妨げない。この場合において、その営業上の利益を侵害した者に故意又は重大な過失がなかったときは、裁判所は、損害の賠償の額を定めるについて、これを参酌することができる。
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