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《おいしいラタトゥイユ》のつくりかた

もともと、ラタトゥイユはそんなに好きなほうではありませんでした。それがどういうわけだか、ヨーロッパに住んで、やむにやまれず何度も作る機会を得た結果、近ごろではなんとなく「こうしたら美味しくなるのだな」というポイントのようなものがわかってきました。

そしてそれが、素朴ながらも食材ひとつひとつを丁寧に扱い、美味しいものに仕立て上げる、ラタトゥイユのふるさと・南フランスのお土地柄なのだな、ということも。

今ではラタトゥイユという料理が大好きになり、夏野菜が美味しくなると、毎週のように作っています。

野菜だけなのに濃厚で、油っぽくなく、水っぽくない。水を一滴も加えず、味付けも塩のみのシンプルなラタトゥイユ。

各家庭ごとにレシピがあるくらいみんなに愛され、よく知られているこの料理をひと口で語ることなどとてもできないのですが、今回はわが家なりの作り方のコツというか、そんなものを書き添えながらレシピをひとつご紹介してみたいと思います。

ラタトゥイユを美味しく作るには

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ラタトゥイユの神髄は、やはりオリーブオイル使いにあると個人的には思っています。加える野菜ひとつひとつの美味しさを、一番引き出せるようにするためのオイル。

ここでのオリーブオイルは、もはや単なる油ではなく、ひとつの調味料だとも言えます。さまざまな野菜を炒めた時に生まれる、香り、食感、コクと旨み、濃厚さ。そんなものがすべて凝縮されてこそのラタトゥイユの美味しさです。

そしてもうひとつのポイントは、野菜の特性をよく知るということ。

ラタトゥイユという料理は本来、野菜すべてを一緒に炒めるのではなくて、ひとつひとつ炒めては取り出していくという作業を繰り返します。

これは、一見面倒なようですが、ザルがひとつあれば案外かんたん。そこへ野菜を炒めては取り出し、炒めては取り出し、すればいいだけなんです。

これは、たとえば韓国料理のチャプチェなどもそうですよね。つまり、野菜を個別に炒めることで最適な加減で火を入れることができ、且つ最初に味を混ぜてしまわないことで、それぞれの野菜の味わいや存在感までもアップさせることができるという効果があります。

そのためには、加える野菜それぞれの特徴と役割をあらかじめなんとなく意識しておく必要があります。


材料

ズッキーニ 1本
米ナス 1本 または ふつうのナス 2~3本
エリンギ 2本
パプリカ 1個半
玉ねぎ 2個(400g)
にんにく 3片
トマト(冷凍したもの) 3個(450g)
オリーブオイル 適量(※詳しくは下記参照)
塩 適量
ローリエ 1枚
好みのハーブ(タイム、バジルなど) 少々


レシピの流れ

① 水分の多い野菜を炒める(ズッキーニ、ナス)
② 個性の強い野菜を炒める(パプリカ、エリンギ)
③ 味のベースになる野菜を炒める(玉ねぎ、にんにく、トマト)
④ 合わせて煮る


 作り方① ズッキーニとナスを炒める

ラタトゥイユに使う野菜は、お好みの大きさに切っていただいていいと思います。本場のレシピでも、大きめだったり、割と小さめだったり、人によってもご家庭によってもさまざまです。

ただせっかく旬の夏野菜を使うのですし、日本の野菜は比較的やわらかくてみずみずしいものが多いので、少し大きめがいいかと個人的には思います。

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ナスやズッキーニならば、だいたいこのくらい。

そして水分が多く、ジューシーで煮くずれしやすいこの2つの野菜は、あらかじめ塩をまぶして15分置き、余分な水分やアクをとっておきます。

その後、さっと洗って水けを拭きます(のちほどしっかり炒めるので洗ってもそれほど水っぽくはなりませんが、気になる場合はキッチンペーパーで出てきた水分を拭うだけでもOK)。

そしてそれぞれオリーブオイル大さじ1~大さじ2程度で軽く焼き色がつくまで炒め、ザルにあげていきます。

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このひと手間で余分な油や水分が落ち、濃厚なのに油っぽくない、みずみずしいのに水っぽくない美味しいラタトゥイユが作れるようになります。じつはとても大事な作業なんです。


 作り方② エリンギ、パプリカを炒める

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続いては、エリンギとパプリカ。

こちらも基本的には食べやすい大きさに切ります。この日はとても美味しいパプリカが買えたので、少し大きめに。

逆に、本来ラタトゥイユにはあまり入れないけれど、単に私の好みで入れているエリンギはやや薄切りに。

こんなふうに、自分の好みやその日に使う野菜の状態で大きさを変えられるあたり、ラタトゥイユはまさに野菜好きにはたまらない料理ですね。

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エリンギは、大さじ1/2くらいのオリーブオイルで表面に焼き色がつくくらいまで炒めます。

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パプリカも、状態によってですが、大さじ1のオイルでほんのり焼き色がつくくらいまで炒めます。

いずれもまたザルにあげていき(ズッキーニやナスと同じもので大丈夫です)、油と水分を切っておきます。


 作り方③ 玉ねぎ、トマトを炒める

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そして、ラタトゥイユにおいて甘みや濃厚さを引き出すもととなる玉ねぎは、火が入りやすいようほかの野菜よりは小さめに。でも具材としても楽しみたいので、ひと口大よりは小さい1~2cm幅くらいに切っておきます。

あとは、にんにくをみじん切りに。

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トマトは、ぜひ完熟のものを。

トマトはあらかじめ冷凍しておくことでコクと旨みが増しますし、繊維がこわれるので短時間の加熱でも旨みが出やすくなります。味なじみもよくなるので、ラタトゥイユを作る時には美味しそうな頃合いのものを丸ごと冷凍しておくととても便利です。

ヘタをとって丸ごと冷凍しておいたトマトは、水にさらすと簡単に皮がむけるので、あとはざく切りにします。

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大さじ1くらいのオリーブオイルを熱して、玉ねぎから炒めます。この時、玉ねぎ全体がやや茶色がかるくらいまで、甘みを引き出すようなイメージで炒めていきます。

ときどき蓋をして、蒸し炒めしながらだと楽です。油がしっかりまわると、鍋のなかで炒めている玉ねぎがつるつるなめらかに移動するようになります。そし玉ねぎがわずかにねっとりしかけたら、そこが炒め上がりです。

これまでの野菜とちがい、玉ねぎはザルにあげずに、このままにんにくとトマトを投入します。

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玉ねぎで甘みのベースがしっかりできているので、にんにくとトマトを入れたら少し強火にし、軽く塩をして、焼きつけるようにしながら旨みと水分を引き出していきます。

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トマトから水分が出きったら、ほかの野菜をすべて戻し入れてください。

 作り方④ 塩とハーブを入れて煮る

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ここまでくれば、できあがりはもうすぐです。

あとは味付けの塩と、好みのハーブを入れて煮るだけ。といっても、塩はズッキーニとナスにも使っていますし、小さじ1/4程度から控えめに、野菜の甘みと旨みを引き出す程度に加えます。

ハーブは、じつはローリエ1枚でもじゅうぶん美味しくできます(小さなお子さまなども召し上がる場合にはおすすめ)。でもしっかり本格派の味わいを楽しみたいのなら、タイム、バジル、オレガノなどを入れてもやはり美味しいです。

煮込み時間は、野菜をさっと煮るだけにする、しっかりめに煮る、など好みが分かれるところですが、わが家は15分程度煮てさらに冷まし、割と濃厚に仕上げます。

少し置いたら、なお美味しい

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できました。

噛みしめるほどジューシーな、ズッキーニとナス。甘みはじけるパプリカ。ところどころで飽きさせないエリンギ。そして、すべての野菜の旨みをまとめあげ、濃厚さとコクを醸し出す玉ねぎとトマト。

ラタトゥイユはできたて熱々よりも、少しぬるいくらいのほうが野菜の風味が立って好きです。さらにひと晩、冷蔵庫で冷やすとこれもまた格別で。

その後も、焼いた肉や魚のソースにしたり、パスタにかけたり。まさに、一度で何度も美味しい、そんな素敵なひと品です。

▼レシピの詳細はこちらに。


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庭乃桃 にわの・もも | 料理・食文化研究家、文筆家
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