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負の記憶を発掘して有益な資産に変える
コロナ突入直後に、「発信活動にも力を入れていくよ!」と号令をかけて2年になります。
舞台裏の「メイキングストーリー」やサービスを作る「プロセス」を表に開示することの効果は今までの経験でもなんとなく実感はしていましたが、当時はちょうど「最終的な商品ではなく、それを作る過程自体を売りものにする」という新しいビジネス手法が注目され始めていた時期でして (プロセスエコノミーと言います)、僕たちもブランドメイキングのプロセスをもっともっと出してファンを巻き込んでいこう、と言い始めた時期だったわけですね。
僕自身もこの nishinote をはじめとして「脳内共有」を習慣化するのには時間がかかりましたが、やっぱりやってよかったと思う効果は実感しています。
2年ほど発信活動をやってきて、「ああこういうのが共感を呼ぶわけか」というパターンが見えてきたところがあって、超ざっくりですがそれをまとめてみると・・・
1. テーマに沿ったお役立ち情報 (Content)
2. 時勢の話題や自身の気づきと今の活動とのつながり (Awareness & Activities)
3. ポジティブな意思を打ち出すもの (Statement)
4. ネガティブな苦労話を打ち明けるもの (Episode)
5. 宣伝 (Promotion)
割合としては1と2をメインにして3をたまに混ぜていき、ここまでで8〜9割を占める感じで、そしていつでも超ポジティブマンではなくて、愚痴にならない程度の苦労話や弱さの露出を混ぜていくのですが、これが共感を集めるための良いスパイスになるように感じています。
負の記憶ですら、活かせるならば積もる資産になりますね。
今日はそんなF&Pの苦労話、負のエピソードを1つ。
・・・少し前に、「Pressed Juicery」というLAのコールドプレスジュースブランドの話をしましたが、実はF&Pも「Juicery」についてはいろいろ曰く付きでして・・・そろそろ時効で解禁かなと思うので、晒してみます。
実は FICO & POMUM JUICE は当初、「FICO & POMUM JUICERY」をブランドネームの候補として開発を進めていました。
そしてなんと、1号店であるグラントウキョウノースタワー店のオープン前1ヶ月を切ったところで、「JUICERY」が商標登録されている事実が発覚し、タッチの差で横取りされてしまったのです。
特許というのは、登録出願中の約半年間は調査しても検索には全く引っ掛からない、完全ステルスな状態になるんですね。
なので、本当に気をつけて周到に事前調査を行っていても、避けられない今回の事故のようなことが起こります。
弁理士さんと、「えっ!? 出願前の5月時点ではフリーでしたよね??」と顔を見合わせたものです。結局、オープン直前で泣く泣く「FICO & POMUM JUICE」への変更を決断し、「JUICERY」で準備していたスリーブ、パンフレットは全てみんなで夜な夜なの訂正対応。
(手提げ袋 16,000枚の発注はギリギリセーフ)
トートバッグとクリアファイルは博物館入りのまさしく負の遺産。
一度完璧に作って取り付けた店の看板まで、また下げて取り替えることに・・・
当時は弁理士さん経由で、この商標権利を持つ見えない相手との交渉を試みましたが、権利というのはどんな弱者であろうと保持している側が絶対的に強い世界で、
下手をすれば相当な額の賠償請求にもなりかねないような緊迫感のある交渉です。結局、返事がなかったことからただのいたずらか何かだったのかと思われますが、、、
権利者の住所を Google Map で調べたところ、辺鄙な場所にある戸建て住宅であることがわかり、「誰だよ!」と怒りに震えながら家の前まで様子を見に行った覚えすらあります。
創業を振り返ると、本当にこんな感じのわけのわからない困難の連続で、人に話すのも恥ずかしい失敗の記憶ばかりです。
(でも、はっきり言って今考えると、結果的に「FICO & POMUM JUICE」になってよかったです!)
さて、最近社内では、F&Pの開発エピソードを暴く会 (創業苦労話インタビュー) がにわかに企画されており、若手社員たちから質問攻めにされる予定です。
ピリッと効いた暴露話がいい感じのスパイスになって、これからメンバーたちによるブランド発信活動が盛り上がってくれることを期待したいなと思います。
(この記事は、2022年3月に社内向けに発信された内容をもとに編集を加えています)