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7年ぶりの花火大会


「ねぇ、今年は夏っぽいことしてみたい」


人混みが大嫌いなわたしがめずらしくそんなことを言い出すものだから、あまり規模が大きくなく、ゆっくり見れるような花火大会を旦那が探し出してくれた。

花火大会、海、フェス、、、、
夏のイベントに参加するのは結構体力がいる。
人がたくさんいるし、外は暑いし。
それならクーラーの効いた部屋の中でアイスを食べながらたまったドラマを見てゆっくり過ごしたい。

そう思っていた。去年までは。

でも今年は、いつもは避けていることをあえてやってみようかな。
そこから新しい世界が広がるかもしれないな、って思って。

そして、7年ぶりに花火大会へ行くことにしたのだ。
せっかく行くのなら浴衣も着たいな。
花火大会に向けてわたしと旦那の分の浴衣を調達した。



花火が打ちあがる3時間前に会場へ到着。
行きの車の中でも、出店で何食べよっかな、
ばかり言っていたわたし。

焼きそば
ケバブサンド
餃子
からあげ
クレープ

花火が上がるまでの待ち時間をひたすら食べて、暑くなると車の中で冷房をつけてクレープなんか食べながら過ごした。


旦那:「今日はカメラのレンズ二つ持ってきた?」

あ。単焦点レンズしか持ってきてない。
単焦点レンズとは焦点距離が固定されているレンズのこと。ズームにしたり広角にしたりということができないレンズである。

花火を撮るときに、花火全体が映るように撮るには多分単焦点レンズだと画角に収まりきらない。
広角にもできるズームレンズも持ってきた方が良かったのだ。

「単焦点だけ持ってきた。このレンズで撮ってみたいからね。」

なんて、自分の失態を悟られぬように強がった返事をする。


花火が始まると、やっぱり少し後悔することになる。
うぅ、花火全体映らない、、、

そんなときに旦那が、
「花火は実際に目で見るほうが綺麗やな。」

ずっと単焦点レンズ越しに格闘していたけど
思い切ってカメラを手放してみた。

ヒュ~~

ドンッ

ああ、近くで上がる花火は心臓に振動が響いてくる。

この日のために、いろんな企業から協賛を募ったりイベントの準備をしてきた地域の人々、綺麗な花火を打ち上げるために花火を作る花火師さん達。

そんな人々の事を思い浮かべながら一つ一つの花火をじっくりと見ていた。

打ちあがる前に「ヒュー」と音の鳴る花火と鳴らない花火は何が違うんだろう。
スターマインの定義って?
あ、このうち上がり方はきっと大きい花火になりそう。
この花火はクルクルと回転しながら上がっていくな。

大学生の時に花火を見ていた時は、ただただ「きれいだな」と思いながらボーっと見ていた気がする。

久々に見た花火は、いろんな想像を膨らませてくれて、あっという間だった。この7年の間で、自分の感性が養われたんだろうな。
そう実感させてくれた。

花火も終盤になったころ。

近くで見ているからこそ、大きい花火が打ちあがると見上げる空いっぱいに広がってこっちにまで火の粉が落ちてくるような迫力がある。

あ、この感じ。残しておきたい。

久々にカメラを手に取り、今目の前に見えている景色を写真に収めてみる。

全体像が収まり切っていない花火。
手前の木に焦点が当たって少しボヤっとしている花火。

けれど何枚か撮った中でこの写真が一番、
その日の自分の思い出の一コマを切り取っている感じがした。

見切れるくらい画面いっぱいに広がっているからこそ、伝わる迫力もあるのかも。



「花火大会へ誘ってくれてありがとう。初めて浴衣を着て花火を見ることができてよかった。そして、浴衣、とっても似合ってたよ。」


家への帰り道。
旦那に改まってそう言われた。なんだか照れる。
思い切って花火大会へ行ってみてよかったな。



また来年も着れるようにと洗濯された浴衣を見ながら
昨日のことを思い出す。

夏休みが終わり明日から日常に戻る。

それでもこうやって一つ一つの経験を大切に
ていねいに生きていけたら。




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