精神科病院閉鎖病棟の実態

『閉鎖病棟』と聴くと怖いイメージを持つ人がまだまだ多いと思います。

昔に比べればだいぶマシになったとはいえ、ただでさえ"精神科"というだけで差別的な目を向けられることもあるのに、閉鎖病棟ともなればなおさらでしょう。

僕も閉鎖病棟に2ヶ月半入院しましたが、個室に閉じ込められたときに窓を見て「あ、鉄格子はないんだ」と思ったことを覚えています。

「一度入ったら出られない」「実験動物みたいに扱われる」「人里離れた山奥にある」「危ない人がいっぱいいる」…など、昔から色々言われてはいますが、実際はどうなのでしょうか。


…少なくとも、僕の感想は入院したときも、退院したあとも「意外とフツーだな」でした。


今日は、なかなか聞く機会がないであろう、閉鎖病棟の中のお話をしようと思います。


僕は閉鎖病棟の中でも急性期病棟という、僕が入った病院の中でも一番状態が悪い人が入る病棟に入院しました。

靴ヒモや服やズボンのヒモ、割れるものや尖ったものなど、自傷他害の危険があるもの、ノートパソコンやスマホなど外の世界と連絡が取れるものは全て持ち込み禁止。病棟に入る前に必ず金属探知機でチェックをされました。

ムダ毛処理のためのカミソリや、入院中にお絵描きなどをするための鉛筆などは、使用許可を得られた人だけが、使いたい時間帯を申請して許可されたときだけ使えました。

そして僕のように状態が酷い人は、鉄の扉の個室に閉じ込められ、バケツがはめ込まれた椅子でトイレをしていました。

もっと酷い状態の人は、監視カメラ付きの部屋のベッドにベルトで拘束され、身動きが取れないようにされていました。

状態が良くなってきたと判断されると、少しずつ病棟内を自由に行動できるようになり、更に状態が良くなると、申請すれば外出も外泊もある程度出来るようになるシステムでした。

病棟内にはたくさんの監視カメラがあり、何かあればすぐに看護師がかけつけ、大きな問題を起こした患者は個室で拘束されることもありました。


「1人1人の身の安全を守るために、ここまで徹底して安全管理をするんだなぁ」と驚いたことを、今でも覚えています。


僕が入院した当時は、脱法ハーブという薬物が社会問題になっていた頃でもあり、確かに色んな人が入院していました。


壁に頭を打ち付けたり転んだりする危険から、ヘッドギアをしている人。突然叫び出す人、暴れる人。誰もいない空間にずっと話し続ける人。自分たちが政府の陰謀で閉じ込められていると信じ込んでいる人。なぜか僕を、虐待で入院させられた自分を助けに来た警察だと思い込んでいる人など、残念ながら怖いイメージの通りの人もいました。


ですが、そのような人ばかりなのかと言ったら、けっしてそんなことはなかったです。


たくさんの人が出入りすればトラブルも起きますが、病院の備品を壊したとか、女性看護師にだけやたら強気なおじさんとか、患者同士の口論など、どこの病院でもあるトラブルがほとんどでした。

ほとんどの人は、病棟内でフツーにマナーを守って過ごし、僕も仲良しグループを作って遊んだりして、静かに共同生活を送っていました。


ここまで読んでいただいて、僕と同じく「意外とフツーだな」と思った方も、やっぱり「怖い」などと思った方もいらっしゃると思います。

確かに僕がいた病院のような病院ばかりではない。残念ながら悪いイメージそのものの病院も、海外からも非難を浴びるほどの大問題を起こした病院も、実際にあります。


ですが、そういう病院もあるからといって、『閉鎖病棟=怖い』ということにはなりません。

他の科の病院同様、まともなところもあれば酷いところもある。それだけです。

なのに、悪いイメージばかりが先行して、「入院なんかしたら一生出られない!」「世間体の問題がある!」などと、入院を拒否する例がたくさんある。僕のもとにもそんな体験談はたくさん寄せられました。


入院が必要なのに、入院したらより確実に回復できるかもしれないのに、単なるイメージから拒否し、治療に遅れが出たら?最悪の結末になってしまったら…?


防げたかもしれない不幸が、ただの先入観で防げなかった。

こんなに歯がゆいことはないでしょう。


入院はただの治療の手段です。過剰に怖がる必要はありません。必要だからする。必要なくなれば退院する。ただそれだけのことです。

閉鎖病棟も、ただの病院の種類の1つです。

自分や大切な人のために、どうか先入観を捨てて、ただの選択肢の1つとして、フツーに頭に入れておいてください。

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錦山まる
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