軽度のうつ病が、重度のうつ病より楽とは限らない
うつ病も症状の酷さや、日常生活への支障がどれくらいあるかなど、いくつかの判断基準に基づいて「重い」とか「軽い」みたいな分類をされることがあります。
軽症、中等症、重症、とか、軽度、中等度、重度など、呼び方の細かい部分は多分団体とか病院によって違うみたいですが、このマガジンでは厚生労働省の"簡易抑うつ症状尺度"というものを基準に、「軽度」「重度」という呼び方に統一します。
僕は最初「重度のうつ病」と診断されました。
その頃は文字通り何も出来ない。薬で毎日10時間以上寝て、たまに水を飲むために何とか起き上がって少し水を飲んだら倒れてまた寝て、トイレも何時間も我慢して限界が来たら這うように行って、ご飯を食べる姿勢も維持できないから休み休み食べる…
そこから少しずつ治療が進み、ある程度回復していき、その頃に通ってた病院の症状の酷さを診断するテストでも、重度の頃よりはだいぶ数字が良くなっていました。
だいぶ前のことでして、主治医からハッキリ「軽度です」などと言われたかどうかは覚えていないのですが、そのテストで出た数字では軽度に分類されて喜んでいたことは覚えています。
…ここまで聞くと、軽度は重度より楽かのような、マシかのような印象を受けるかもしれません。
確かに、例えば日常生活で出来ることを書き出していけば、重度より軽度のほうが出来ることの数は多いでしょう。
身体症状とか精神症状とか、症状一つ一つの酷さを数値化したら、重度より軽度のほうが数値はマシなのでしょう。
けど、じゃあ軽度が重度より楽なのか?つらくないのか?と言うと、それはまた別の話なのです。
突然ですが、ここで40度くらいの高熱を出したときのことを思い出してみてください。
文字通り、まさに文字通り身動きすら取れなかったと思います。
では、37.5くらいの熱のときのことを思い出してみてください。
確かに40度に比べれば、症状自体は軽いですしある程度は動けます。
でも、だからこそ大変なこと、面倒なこと、回復まであと少しだからこその焦り、ぶり返す危険があるからこそのもどかしさ…ありますよね?
重度は40度、軽度は37.5くらいの感じだとイメージすると、軽度が重度より楽なのか、つらくないのか、というとそれはまた別の話だ、ということが想像しやすいかもしれません。
ある程度動けてしまうからこそ、「休む」という決断がしづらなくなる。諦めがつかなくなる。してもらえなくなる配慮もあり、求めづらくなる助けもある。
自分も周りも「そろそろ復帰して大丈夫なんじゃないか?」と思い始めるし、みんなつらいからこそ「もう大丈夫なんだ」と思いたくなる。
重度には重度の、軽度には軽度のつらさがあり、必ずすも軽度だから重度の人より楽、軽度になったから前より楽、ということではないのです。
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