【エロい映画】第11回「エイリアン:ロムルス」
観てまいりましたよ「エイリアン:ロムルス」。
なんだかんだ言って私、「エイリアン」シリーズ好きなようでけっこう映画館で観ていますね。
今回はちょっと長いです。
てのもわたし、「エイリアン」に関しては思い入れありますので。
今回、はじめて目次を作ってみました!(自慢)
■いろいろと異様で変態だった初代「エイリアン」
わたくしが無印「エイリアン」に触れましたのは小学生の頃。
公開したときは周りの大人が結構騒いでいたのを覚えています。
まあ当時は「スターウォーズ」や「未知との遭遇」などなど、SF映画ブームではありました。
で、この「エイリアン」はSFかつ恐怖映画だそうで。(※当時はまだ「ホラー映画」という呼び方が一般的ではなかった)
で、テレビ放映で観ることができたのですが、とにかくそのときに感じた印象は……まだ小学生でしたが……“なんか、いかがわしい……”というものでした。
だってですよ、宇宙服からしてヘンです。
で、謎の惑星でクルーたちが発見する宇宙船がコレ↓ですからね。
で、その中に入るとこんなの↓があったりするんです。
で、さらに探検すると、こんなの↓が一杯あります。
で、このでっかいブツブツのようなものを除き込むと……
こうなる↓わけです。
これが顔に貼りついた状態が、↓これになります。
なんというか後に「フェイスハガー」という呼び名を知ることになるこの生き物なのですが、まさにフェイスにハングするのでそのまんまの名前です。
とにかくこれが気持ちわるい。
基本的に人間、よほどのもの好きでもない限り、脚がたくさん生えた生きものはキライです。
これは我々よりも西欧人のほうに顕著な傾向だそうです。
じゃ、なんでお前はタコやイカやカニ食べられるんだ、てかお前カニとかエビとかめちゃくちゃ好きじゃないか、と言われるとシンドイのですが、とりあえず生きた状態で脚が多い生き物を前にすると、「ひっ」と思わされます。
で、なんでしょうこの生き物。
すっげー肌がヌルヌル、ヌメヌメしてそうです。
おまけに尻尾が長くて首に巻きついています。
しかも、身体の内側では、にょっろ~~~ん……と伸びた長い長い管を、あろうことがこの男性(のちの名優:ジョン・ハート)の喉奥深くに突っ込んでいるのです。
めっちゃくちゃきもちわるい。
恐ろしく生理的嫌悪感を抱かせる描写です。
はっきり言って、ここまででもう本当にこの映画は、単に「スゲエだろ」とか「怖がらせてやろう」とか、そういうわかりやすい目的を超えたものです。
で、この顔にベッタリ貼りついていた気持ち悪い生き物は知らないうちに勝手に離れて死にます。
貼りつかれてた人も一旦は元気になります。
「あはは、なんだかよくわかんねーけどよかったな!」
と呑気に(いやほんと↓こんなふうにマジ呑気に)みんなとご飯を食べてますと……
こうなり↓ます。
あんな気色のわるい生き物に顔にへばりつかれ、喉奥までブチ込まれたこの人、なんとまあその胸をこんな牙のついたおちんぽみたいな奴に突き破られて死んでしまうのです。
なんでしょうね?
SF映画史上、ここまで酷い目に遭う登場人物がいたでしょうか?
気のよさそうな、ふつうのお兄さんですよ?
とまあ、なぜかこのクルー、ケインに対する執拗な受難は、観ているとこれまでの宇宙服や異星人やその宇宙船や気持ち悪い生き物の造形なども相まって“この映画作ってるやつ、なんかものすごく頭おかしいんじゃないか?”と不安にさせるものがありました。
■そしてわたしたちを戸惑わせたおちんぽ頭の怪物
でまあ、いろいろありまして、出てくるのがあのエイリアンです。
通称:ビックチャップ。後に「ゼノモーフ」と呼ばれる怪物です。
とにかくこいつの姿かたちは公開当時、予告編でも広告でも隠しまくられてまして(ネット社会の今とは違って当時は可能だったのです。そういえば『エレファントマン』の素顔もほぼ完全に隠しまくられていました)、はじめてこの怪物を目にしたときのわれわれの驚きは相当なものでした。
で、当時わたしもまだ子どもですから未見だった時点では、このエイリアンがどんな姿をしているのか知りたくて溜まりませんでした。
「なあなあ! エイリアンってどんな感じのやつなん?」
と先に観た友人や近所のお兄さんなどに聞いてみましたが……
「ううん……ええと……なんて言うたらええんかなあ……」
「え? え?」
誰も「エイリアン」がどんな姿をしているのか説明してくれない……
というかできないのです。
……というのも79年の一発目「エイリアン」では、舞台となるノストロモ号の船内は暗く、こいつは終盤に渡るまでいったいどんな姿をしているのかはっきりわかりにくい……
結局最後に出て来てもババーーーン! と全身がはっきり映るわけではないので、いまいち全貌が掴めない、ということもありました。
で、それにしてもどんな姿をしているかと言えば、今更いうまでもありませんが、
たしかに頭はでっかいおちんぽのようですが、宇宙服のようなフードがあり、なんかメカのようでもあり、あばらが剥き出しであり、ロボットのようなそうでもないような……確かに並みの言語力ではこの生き物の特徴を簡潔に言い表すのは不可能です。
なんなんだあれは?
当時はこの生き物をデザインしたスイスの天才画家・イラストレーター、H・R・ギーガーの名前も知られていてませんし(というかこの映画で世界的に有名になったのです)、この怪物の造形のいかがわしさ、禍々しさ、なんか正視していると狂気の世界に引きずり込まれそうなヤバさ……は我々の想像のはるか彼方をカッ飛ばしていたのです。
途中、アンドロイドだとバレる乗組員の一人(イアン・ホルム)が、この生き物に関して説明します。
「殺す方法はない。憐れみもない。進化に進化を重ねる完全生物だ。まあ、君たちには同情しとるがねw」
で、最初の劇場公開ではカットされたシーンに、このゼノモーフ=怪物は、繁殖のために人間を生け捕りにし、生きたまま繭にしてしまう、という描写がありました。
とにかくこの生き物の目的は「繁殖」らしいのですが、見かけはもちろん、その生態も実に神秘的で、まったく理解不能で、超絶きもちわるい。
やはり観ていると……これを作ってる奴は頭がおかしいんじゃないかと思えてくる。まともでない。なんかものすごーーーーく危険な感じです。
で、それだけならばまだいいいが。
そ、れ、だ、け、な、ら、ば、ま、だ、い、い、が。
■スケベすぎたリプリー
終盤、たった一人の生存者となった若きシガニー・ウィーバー演じますところのリプリーは、
こーんな ↑ カッコウでビックチャップに襲われます。
このパンイチノーブラ描写がこれまたしつこい!!!
エイリアンの生態や造形に対する生理的嫌悪感に加え、この肌着リプリーのエッチすぎる描写は初見のとき、まだ精通も迎えていなかった私の下半身を大いに刺激し、性癖(トラウマ)を植え付けました。
「ロムルス」に至るまでずいぶん無印「エイリアン」の話が長くなってしまいましたが、もう少々ご辛抱ください。
■実は停滞の原因だったキャメロンの「エイリアン2」
で、その後「エイリアン」の続編、「エイリアン2」が制作され、この作品のシリーズ化が始まります。
このシリーズの特徴といたしまして、それぞれ担当する監督のテイストが色濃く出るのが面白いところなのではありますが、「2」を担当したのはジェームズ・キャメロン。
もともとダン・オバノンが書いた「エイリアン」の脚本の原型は、アメリカ映画史におけるB級天皇、ロジャー・コーマンのもとに持ち込まれたという逸話もありますので、「2」を担当するのがかつてコーマン丁稚だったキャメロンに、というのはコーマン兄弟の必然の結果だったかもしれません。
しかし。
「今度は戦争だ!」
という惹句とともに打ち出されたパート2。
原題は「ALIENS」。
ようするにエイリアンが複数形で襲ってくるわけです。
迎え撃つはリプリー率いる宇宙海兵隊員!!
ようするに「2」はいかにも「ターミネーター」で名を挙げたキャメロンらしい、アクション大作となりました。
※しかし実はゼノモーフの「大群」はこの映画に登場しないのです。同時に同じ画面に映るのは、せいぜ数匹。それであの「大群」感を出せたのだから、さすがキャメロン、もとコーマン丁稚です。
たしかにまあこれはこれで面白い。
爆発的にヒットし「エイリアン」シリーズ化を確定的にしたこの作品。
しかし、この作品の問題点は…………
原点の「エイリアン」が孕んでいたいかがわしさ、禍々しさ、おぞましさを徹底的に厨二的アクションで払いのけてしまったところです。
そのへんはさすが、ジェームズ・キャメロン。
はっきり言ってこのガンヲタおじさんに複雑で変態的な『いかがわしさ、禍々しさ、おぞましさ』を求めるのが間違っているというもの。
なんせ「ターミネーター」「タイタニック」「アバター」の人です。
まあ逆に考えると、「エイリアン」から『いたいかがわしさ、禍々しさ、おぞましさ』を完全に排除したことがこの「2」の大成功につながり、エイリアンのシリーズ化、フランチャイズを生み、お子様からお年寄りまですそ野の広いファンを獲得することにつながったことに、異論の余地はありません。
しかし。
私はこの「2」がはっきり言って好きではありません。
というか、むしろ嫌いです。
確かにエイリアンと海兵隊のバトルはキャメロンらしく見せ場たっぷりなのですが、銃弾をブチ込まれたくらいで「プギャー!!!」と言いながらあっさり殺されるゼノモーフ、それもひと山なんぼでウォーリアと呼ばれる怪物に、はっきり言って戸惑いました。
え? エイリアン、殺す方法ないんじゃなかったのアッシュ?
なんであんなにワラワラ出て来てあっさり死んでんの?
いくらエイリアンを群れにしたところで、そのシューティングゲームのようないかにもキャメロン的な大盤振る舞いのバトル描写に、私は愕然としました。
で、それだけならばまだいいいが。
そ、れ、だ、け、な、ら、ば、ま、だ、い、い、が。
■すべてぶち壊しにしたエイリアン・クィーン=「宇宙の戦士」
リプリー「この生き物は、卵から産まれるのよね? ……だとすると……その卵はどこから産まれるわけ?」
ビショップ(アンドロイド)「どこかに……スゴいのがいるんだろうな」
で、出てきたのがエイリアン・クィーンです。
無印「エイリアン」から「ゼノモーフは捉えた人間を繭に変態させて繁殖しようとする」というシーンがカットされたものですので、「2」に登場したのが、このクィーンです。
無印におきまして、アンドロイド・アッシュによって語られた「進化に進化を重ねる完全生命体」とされていたエイリアンの生態が、まるでアリかハチといった小集団社会を形成する昆虫のようなものに改変され、定義づけられてしまいました。
え? エイリアン、ハチとかアリなの?
ここでも私はかなりガックリ来たのを覚えています。
このへんは、アクション野郎でありますキャメロンです。
エイリアンと宇宙海兵隊が激しくバトルを繰り広げる……というイメージのベースにあったのは、ロバート・A・ハインラインの超体育会系SF戦争小説「宇宙の戦士」だったのだと思います。
のちにポール・バーホーベン監督によって「スターシップ・トゥルーパーズ」として映像化されますこの小説が、「2」制作にあたって大いなる影響を与えたことは想像に難くない。
だってこの小説でみんな大好きなパワードスーツを思わせる、パワーローダーが出てきますし。
ま、「2」の白眉といえばエイリアン・クィーンとリプリーが駆るところのパワーローダーとの……日本の特撮映画の巨大ロボット対決のように実に厨二的な肉弾戦で、これにオタク的な観客は燃えたのでしょうが……
「宇宙の戦士」でパワードスーツを着たカプセル降下兵たちが戦うのは、作中では「クモ」と呼ばれる節足動物状のエイリアンです。
で、語り部でもあり主人公でありますジョニーの説明によりますと、この「クモ」たちは地下の迷路のような塹壕のなかに生息し、昆虫のアリやハチのように「女王グモ」を中心とした完全専制社会を築いております。
そして、「女王グモ」を守り外敵(つまり地球人)と戦う恐れ知らずの「兵隊グモ」がいます。
クィーン・エイリアンとエイリアン・ウォリアーの関係性と酷似しており、キャメロンは「エイリアン」の続編でひそかに「宇宙の戦士」をやってしまった、いやむしろやりたかったところがあるのではないかと私は踏んでおります。
しかし、無印「エイリアン」にあった『いかがわしさ、禍々しさ、おぞましさ』が一掃されたうえに、エイリアンはクィーンの登場により昆虫のようなものに設定され、神秘性はまったく失われました。
さらに問題なのは「2」以降、観客が潜在的に「エイリアン」シリーズにアクションとバトルを求めるようになったこと。
■「2」がその後のシリーズにもたらした呪い
そんなわけで原点回帰と宗教的な重厚感で責めた「3」は「退屈」と評価される憂き目に。私は好きですが。
「じゃあテメエらが観たいのはグロとアクションだろうが! 思う存分見せてやるぜ!」とフランスの変態監督が意気込んで作った「4」は、グランギニョル的な悪趣味とスラップスティックに満ちた怪作となりましたが、本分を逸脱したやりすぎ感は否めませんでした(個人的に好きですが)。
たしかにこのへんになりますと、観客も「エイリアン」というフォーマットにいささか飽きてきた感もあります。
で、エイリアンはしばらくプレデターとじゃれ合ったりします。
■リドリー・スコットの反逆と抵抗
そして長き沈黙を破って無印エイリアンの監督、リドリー・スコットが立ち上がります!!
そして作られたのが「プロメテウス」です。
人類の起源にまつわる非常に難解で神秘的なふうを装った、リドリー・スコットのエイリアンシリーズ(フランチャイズ)にいかがわしさと禍々しさ、そして根源的な生理的嫌悪感を呼び戻す試みであり、私自身はたいへん満足しました。
“これまでのエイリアンシリーズの謎が明らかに!!”
と銘打ちながら、観るとますますわけがわからなくなるところなど、ほんとうに不誠実で最高です。
ただ、肝心のゼノモーフが出てこない(最後の最後にそれっぽいのが一瞬出てくる)、意味がわからん、などと評判は芳しくありませんでした。
で、さらにその続編、「エイリアン:コヴェナント」が作られます。
まあこれはいささか難解に過ぎた「プロメテウス」を「エイリアン」につなげるための作品であり、いかにしてあのゼノモーフは創造されたのか、というストーリーで、かなり説明過多なところもあります。
しかしゼノモーフのプロトでありますネオモーフ(上の写真の白いやつ)の登場、そして直接的には描かれませんが「創造」に憑りつかれた性格破綻アンドロイド・ディヴィッドが、前作の唯一の生存者であるショウ博士に行った鬼畜の実験の形跡など、禍々しさは健在でした。
しかし、ここでも「2」の呪縛が。
コヴェナント号のクルーたちは全員銃器で武装しており、けっこう(私には)退屈なドンパチシーンがあります。
ゼノモーフ大暴れが観たい人のために、クライマックスではこれでもかとおなじみのゼノモーフが暴れます。
違う。違うんだよリドリー。
お前に求めてられてるのは、キャメロン以降の「エイリアン2」に手懐けられた健全なファンの期待に応えることじゃないんだ……
と思いましたが、ラストがかなり絶望的で陰鬱でしたのでなんとか(私的には)及第点です。
■そして……「エイリアン:ロムルス」の問題点
そして……ようやく、ようやく、ようやく「エイリアン:ロムルス」です。
長い長い前置きに付き合っていただきました読者のみなさん、生存者のみなさん……てかまだ生きていますか? 誰かいますか?
もしいればここまでよく思い込みだけの退屈な話にに耐えてくださいました。感謝します。
はい、なかなか娯楽作品としては手堅くまとまっています。
面白いです。
いまどき、2000円を払ってプロパーで観る価値はあります。
しかしまあなんといいますか……
若い監督(「ドント・ブリーズ」の人)がこのエイリアンサーガに(今さら)挑むのならば……もっとワイルドではっちゃけたものが視たかった、というのが正直な感想です。
スプラッタやらバトルやゼノモーフが大暴れしたりするのとは別のベクトルで!!
実際この「ロムルス」に関する他の方のレビューなどを読んでおりますと、
「はじめてエイリアンを体験する人には入門編としてもおすすめ!」
とあり、それは確かにそうだと思いました。
若者たちが主人公というのもティーンエイジャーが殺しまくられるタイプのホラー・スラッシャー映画としても観ることができ、そこはイイと思います。
しかし……
これまたよくレビューで見られるのが、
「『エイリアン』ファンならニヤリとするオマージュが散りばめられている」
というものです。
■オタクやマニアやファンを「ニヤリ」とさせんでええ!!
私が個人的に一番キライなのが「ファンならニヤリとする」という表現。
『ニヤリ』となんかさせなくていーーーーーんだよ!! ファンなんて!!
そんな予定調和を求める観客なんて無視しろ!!!
新たに生み出されるものに「お約束」なんてものを求める観客なんてどーーーーーーーーだっていいんだよ!!!!
むしろそんな奴ら当惑させろ!!
乏しい想像力を蹴散らせ!!
てか怒らせろ!!!!!!!!
……といいますか、映画監督は、いやいやすべてのクリエイターは、「ファン」とか「マニア」とか「オタク」とかそういう人らに媚びたり、顔色を伺うべきではないのです。
そんなのにクリエイティビティのフロンティアはないのです。
だってもともと、おちんぽ頭の怪物が出てくる映画なんですよ?
こんなものを中心に積み上げてきた実績に「神話」を感じてどーーーーーーするんですか!!!
……とまあ、ここまで言いましたけれども、今作「ロムルス」のクライマックスに出てくる新たなボスキャラ「オフスプリング」は、かなり想像の上を行く悪趣味で、禍々しく、おぞましく、いかがわしい感じで良かったです。
こいつだけでも観る価値は充分にあります。
しかしまあ、もっとこいつに、下劣に、恥知らずに暴れまわってもらい、そしてもっとおぞましい変態・生態を見せて欲しかったというのも事実。
ほんと、歴史が長いシリーズだからってファンに対する敬意なんて、一切必要ないなのですよ!!!
今後の「エイリアン」シリーズにはもっと原点、つまり我々観客の想像を蹴り潰すような、想像のはるかホライズンを行くような変態性へ発展を望んでなりません。
めずらしくマジメに書きましたが、次回以降は通常のエロモードに戻りますのでご安心を(笑)
<了>