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西本願寺で初のブランドマークとタグラインが完成!

西本願寺では、新たにブランドマークとタグラインを策定し、2023(令和5)年12月6日に記者発表を行いました。 ブランドマークとタグラインの策定は、400年を超える西本願寺の歴史の中で初の取り組みとなります。今回は記者会見で発表された内容の一部をお届けします。

発表の場に立ったのは、安永雄玄執行長。まずは、ブランドマークとタグライン(ブランドのメッセージを端的に表現したもの。ブランドのロゴやマークに添えられる一行)を制定することになった経緯を説明しました。

「私が西本願寺の執行長に就任してから約1年3ヶ月が過ぎ、現在は業務改善やフリーペーパーの発行、公式noteの開始など、情報発信の充実に取り組んでおります。また、今後の改革や西本願寺のブランド作りに必要な外部人材の登用も積極的に行っております」

その改革の一つが、ブランドマークとタグラインの策定です。

「西本願寺は、生きている人の悩みや苦しみ、喜びや幸せに一生寄り添えるお寺をめざしたいと考えています。そのために、門信徒(浄土真宗の信者)はもちろんのこと、その他の方にも西本願寺に親しんでもらえる、分かりやすいシンボルが必要だと考え、ブランドマーク・タグラインを制作しました」

ブランドマークについて

今回制作したブランドマークは、西本願寺の阿弥陀堂と御影堂をイメージした形をもとに、多くの人に親しまれてきた境内の大イチョウの葉と重ね合わせ、生活のあらゆるシーンになじむマークとなっています。マークの左が御影堂で、右が阿弥陀堂。これは阿弥陀堂門から見た、阿弥陀堂と御影堂の姿をイメージしてつくられています。

西本願寺の紋として使用している“下り藤(さがりふじ)”と並行して、あらゆる場面で使用していきます。

新しく策定したブランドマーク

「形と色に品格がありつつ、現代の生活の中に溶け込むモダンなマークができたと考えています。門信徒の方をはじめ、観光で訪れる方や、仏教に興味を持たれる方、幅広い方々に、西本願寺といえば阿弥陀堂と御影堂を思い出してほしいという願いを込めたものです」

ブランドマークのメインカラーは、黄金色に輝くイチョウをイメージした黄色。他にも、新緑のイチョウと青銅色の梵鐘をイメージした深緑色。厳かな金箔装飾をイメージした金色、そして伝統の墨色。西本願寺の境内をイメージした4色のブランドカラーに定めました。どの色にも、西本願寺の境内を思い出してほしいという願いが込められています。

ブランドマークを制作したのは、西本願寺統括デザイナー・サノワタルさん。ブランドマーク制作の経緯を説明しました。

サノワタル
東京・大阪・京都の制作プロダクションを経て、2013 年に大学時代を過ごした京都にてカフェ機能を追加したデザインスタジオを設立。2017 年にグラフィックデザインを軸に、ブランディングデザイン・内装デザイン・ウェブデザイン・パッケージデザインなどの様々な領域のデザインや企画を手掛ける「株式会社サノワタルデザイン事務所」を設立。

サノ「私が西本願寺をイメージしたときに、鮮明に思い出すのは二つのお堂とイチョウの圧倒的な存在感でした。その想起したポイントを形にしたのが今回のブランドマークになります。また、形状をシンプルに落とし込んだのは、小さいお子様でも簡単に真似をして、書いていただける形にしたいという想いも込めております。今後、このブランドマークが皆様に末永く愛され、また西本願寺を思い出していただくきっかけになれば幸いです」

タグラインについて

タグラインとは、企業や組織などのブランドが大事にする価値観を社会に表明する言葉。今後、西本願寺の社会的な役割を広く内外に伝えるために、二つのタグラインを伝える内容やシーンによって使い分けていきます。

メイン・タグライン

人はひとり。だからこそ、ご縁を見つめたい。

「私たちの前にある現代社会に目を向けると、『無縁社会』とまで言われるほど、人々の孤独・孤立が社会問題になっています。今こそ、西本願寺とその僧侶が真価を問われる時であると考えています。仏教では、人が孤独な存在であることが説かれます。そして、孤独であるからこそ、仏様や他の人とのご縁に心から感謝して、ご縁を大切にして生きられると考えます。私たち西本願寺はこれから、あらゆる方々のご縁の結び目として、ご縁を見つめ大切にして、自他共に心豊かに生きられる社会の実現をめざしてゆく。そんな意志を込め、伝えていくために制定したのが、このメイン・タグラインです」

サブ・タグライン

誰もが、ただ、いていい場所。

「西本願寺は、誰もが自由にお参りでき、様々な思いを持ち寄って過ごせる場所です。すべての人を受け入れます。前段でも述べましたが、現代日本の社会では、孤立したり、孤独を感じたり、自分の居場所がないと感じる方が増えています。そんな気持ちに寄り添って耳を傾ける存在が西本願寺であり、私たち僧侶であるべきです。時代のキーワードで言えば、誰も取り残さない、インクルーシブな場所ということになるでしょう。この原点を改めて、伝えていきたいと考え、制定したのがこのサブ・タグラインです」

タグラインを制作したのは、西本願寺統括クリエイティブ・ディレクター・原田 朋(ともき)さんです。原田さんの伯母が西本願寺出版社に勤めていたこともあり、幼少期は西本願寺のお堂や境内で遊んで過ごしたのだそう。

今回は、西本願寺のブランド全体のコンセプト設計とタグラインの制作を担いました。

原田 朋(はらだ ともき)
博報堂、スマートニュースを経て、2023 年に独立。グローバル企業から NPO まであらゆるブランディング、コピーライティングを手掛けてきた。日経広告賞グランプリ、カンヌ国際広告祭 PR ライオン等、国内外で受賞多数。

原田「西本願寺のブランド全体のコンセプト設計と今回はタグラインを書かせていただきました。今回のタグラインのテーマは、ご縁を見つめる、ご縁を大事にするということです。つまり、無縁社会をご縁社会に変えていく、そういった意思表明じゃないかと私は思っています。

孤独というテーマに向き合うとき、一般的には『1人じゃない』というような呼び掛け方をしますよね。しかし、仏教では、まず1人であるというところから始まります。この『1人である』というところが出発点となって対話が始まっていくような言葉になればという思いを込めて、 “人はひとり。だからこそ、ご縁を見つめたい。” というタグラインといたしました」

今後はこのブランドマークとタグラインのもとで、幅広い世代の方に西本願寺に興味をお持ちいただき、ご参拝頂けるように、新たな企画の実施や積極的な情報発信を行います。どうぞご期待ください。

質疑応答

ここからは、記者発表で行われた質疑応答の一部をご紹介いたします。

ーー今のタイミングで、ブランドマークとタグラインを策定した理由は?

急な気候変動や災害、戦争が起き、経済状況も政治状況も困難な時代において、個人はいよいよ孤独の問題を深刻に抱える時代になってきたと感じております。こんな時代に、お寺として、誰に何を発信していくか。

現代人にとってお寺は、ご葬儀とお墓を管理する場所になってしまってますが、仏教は心の不安や悩みに寄り添う生きている人のためのものであることに気づいていただき、何か自分の孤独を癒す材料がお寺にあるのではないだろうか。そんなことを思っていただいて、お寺と接点を持っていただきたい。そして我々が現代社会においてどのような役割を担うのかをもう一度立ち返って、お寺の活動を組み立てていきたい。そういった意図の表れとして、ブランドマークとタグラインの策定に至ったという経緯があります。

ーー今後ブランドマーク、タグラインは、どのように活用する予定でしょうか?

公式ホームページや各種 SNS などに展開されると共に、順次名刺や印刷物、各種アイテムなども新しいブランドマークに差し替えていきます。タグラインは、基本的にはマークと一緒に使っていくものというふうに考えておりますが、用途に合わせて別々で使用する場合もあります。

名刺などの印刷物やタオルなどの公式グッズから展開していく

ーーブランドマークと寺紋の「下り藤」、どのような形で使い分けをするのでしょうか?

下がり藤は、第22代鏡如上人の代から使っている大切な寺紋です。そのため、すべて今回のロゴマークに置き換えていくというわけではなく、どちらも大事にしていきたいと考えております。今回新たに策定したブランドマークは主に名刺や印刷物、公式グッズなどに使用していきます。

本願寺・寺紋「下り藤」

安永執行長が込めた想い

現代において、お寺はお葬式やお墓が主体かのように捉えられています。しかし元来、お寺は人々の生活の中心にあり、生きる喜びも悲しみも共有する存在でした。宗門が掲げている「自他共に心豊かに生きることのできる社会の実現」とは、現代風に言えば、まさに“ウェルビーイングの実現”となるのでしょう。そのためには、西本願寺はもちろん、どこのお寺もが魅力づくりに励み、一人でも多くの方に参拝していただくことで、仏様はもちろんのことお寺や僧侶とご縁を結んでいただく機会を増やすことが重要です。

長い西本願寺の歴史の中で初のブランドマークを策定したことにより、もっと多くの方に西本願寺を身近に感じていただきたいと考えています。今後はあらゆるところでブランドマークやタグラインを見て頂き、西本願寺の想いが広く皆さまに伝わることを願っています。