「犬を飼っている人は飼っていない人と比べ、認知症発症リスクが40%も低い」(下)
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*****令和5年10月30日(月)第165号*****
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「犬を飼っている人は飼っていない人と比べ、認知症発症リスクが40%も低い」(下)
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【前日(10月29日)配信の、本紙前号(上)から続く】
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研究内容の詳細3=身体活動低下と社会参加の低さは、認知症の発生率の高さと関連」
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今回の研究では「犬の飼育が、フレイル(※)・障がい・死亡に予防効果がある」ことが実証された。また「犬の飼育が、認知症の障がいに対する保護効果がある」ことを示した、わが国における最初の研究となった。
【※本紙注釈=フレイル=病気ではないが、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態のこと】
また運動習慣があり、社会的孤立がない「犬の飼い主」は、認知症の障がいリスクが有意に低いことも明らかになった=画像「都長寿医療センター」HPより。次に「犬の飼い主」と認知症の障がいとの関連の背後にある、メカニズムについて説明する。
今回の研究では「運動習慣や、日常的な犬の世話による社会参加などの身体活動が、高齢者の認知症を予防できること」を示した。犬の散歩は、中程度の強度の身体活動に分類される。
犬を散歩させる犬の飼い主は、少なくとも1週間当たり150分の、中程度の強度の身体活動を達成する可能性が(運動をしない人より)2.5倍高かった。また犬の散歩は、高齢者の社会的交流の機会を増やし、心理的健康を改善する手段としても関与している。
これにより「犬の散歩が、社会参加に寄与する可能性」が示唆される。身体活動の低下と社会参加の低さは、認知機能の低下や認知症の発生率の高さと関連している。また犬の飼育経験に関係なく、運動習慣と社会的孤立がない方は認知症のOR(※)が低い。
【※本紙注釈=OR=オッズ比=ある事象の起こりやすさを、2つの群で比較して示す統計学的な尺度測定値】
これは、今までの先行して実施された研究と一致している。これらの要因(運動習慣を含む身体活動・社会参加)が、犬の飼育と認知症の発症との有益な関係の根底にあることを(「都長寿医療センター」として)提案する。
一方で運動習慣がない、社会的孤立など、犬の世話に関する生活習慣がない「犬の飼い主」は、認知症予防に関するプラスの効果を実感しなかった。同様に、猫の飼育は認知症の予防に有効ではなかった。
これらの結果も、先行して実施されたフレイル・障がい・死亡に関する研究と、大きく重複している。認知症や介護の必要性を予防するために、運動や社会的交流プログラムなど、いくつかの種類の戦略が世界中で実施されている。
本研究は、犬の世話に関連する日常的な身体的および社会的活動が、認知症予防に有効である可能性を示唆している。以前の研究では、新型コロナのパンデミック(感染爆発)時に、犬の飼い主は他のペットの飼い主よりも幸福度が高いことが報告されている。
したがって犬の世話は、新型コロナのパンデミック中に経験したような、相互作用の制限に直面して、運動習慣や社会参加を持つことを含む身体活動の維持に貢献する可能性がある。
さらに高齢者が、犬やその他のペットを飼い、世話をし続けるためには、社会的支援のシステムが必要になる場合がある。ただし、この研究にはいくつかの制限もある。まず第1に、日本における犬猫の飼い主の割合は欧米諸国に比べて少ない。
したがって「日本で見られる関係が、欧米や他の国にも存在するかどうか?」を評価することが重要になる。第2に、本研究は入手可能なエビデンス(根拠)(に基づき、犬の飼育と認知症との関係で「運動習慣と社会的孤立に関連する経路」に焦点を当てた。
今後の研究では、犬の飼育と認知症発症の減少を結びつける可能性のある「心理的経路」を検討すべきである。第3に、追跡期間中に認知症を障がい化した参加者の数は、犬の飼育と認知症の障がいとの関連とともに、過小評価されている可能性がある。
これは、認知症の障がいの評価を行った「LTCI」システムの、2020年7月までのデータを用いたからだ。日本における新型コロナ感染の第1波により、2020年3月から5月にかけて「LTCI」の新規申請件数は激減した。
したがって、追跡期間中に認知症を障がい化した参加者の数は、犬の飼育と認知症の障がいとの関連とともに過小評価されている可能性がある。最後に、この調査では「認知機能」は検討しなかった。
4年という、比較的短い追跡期間で認知症の事象を評価したからだ。これら(「第3」で挙げた)2つの制限は、逆の因果関係につながる可能性がある。これらの限界に対処し、犬の飼い主と認知症の障がいとの関連を確認するには、さらなる研究が必要だ。
結論として、今回の研究では約4年間、「犬の飼い主」の背景要因を調整した後、認知症に抑制効果があることが明らかになった。具体的には運動習慣があり、社会的孤立がない「犬の飼い主」は、認知症のリスクが有意に低かった。
犬の世話は、運動習慣を含む身体活動の維持や、新型コロナのパンデミック時に経験したような、相互作用の制限に直面しても社会参加に貢献する可能性がある。
◇─[おわりに]───────────
個人的な話題で恐縮ですが、弊紙発行人は現在、猫を1匹飼育しています。その経験を踏まえれば、犬の飼育と比較すると確かに「散歩」はありませんし「社会的活動への参加」も、直接的には関係がありません。
ただ、弊紙発行人のように「猫好き」の立場からすれば、今回の研究で「猫の飼育は、認知症の予防に有効ではなかった」と結論づけたことに対し、正直なところ「反発」も感じます。
認知症の予防では「日常的な運動習慣」と「社会的活動への参加」が重要な要素である点は、記事内でも「都長寿医療センター」が指摘している通り、これまでの研究でも数多く発表されており、その内容は弊紙でも何度か取り上げています。
「そもそも犬の散歩が、この2つの要素を実践する誘因要素になっているからだけではないか?」と主張したくなりますが、これはこれでキチンとした研究結果なので「正論」として受け止めたいと思います。
しかし、今回の論文の最後にも述べられている通り「今後の研究では、犬の飼育と認知症発症の減少を結びつける可能性のある『心理的経路』を検討すべきである」との提言には注目したいと思います。
「猫の飼育」と「認知症の減少を結びつける可能性がある『心理的経路』」は、関係性があるのか否か……?。「犬の飼育」と合わせて「都長寿医療センター」にはぜひ、今後も研究を継続してもらいたいと願います。
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