口呼吸と鼻呼吸―マスク着用の害②
「正しく鼻呼吸すれば病気にならない」今井一彰 著
抜粋 ②
*うつぶせ寝は対症療法 うつぶせに寝ると、いびきをかかなくなり、睡眠時に無呼吸にならないのは、顔を横に向けて寝ると、舌が沈下せず、気道がふさがれないからです。でもこれは根本から治るわけではありません。
腰痛や肩凝りのある人も、うつぶせに寝ると痛みがあまり起こりません。しかし、これも対症療法で根本からの改善ではありません。うつぶせに寝ていると、呼吸を確保するために、顔を横に向ける姿勢になります。
そうすると、顔を枕に押し付ける格好になるため、どうしても口が開いてしまいます。そうすると口腔内が乾燥し、唾液による殺菌・消毒作用が発揮されず、悪玉菌が増え、免疫作用を低下させます。
本来は鼻呼吸していた人さえ、うつぶせ寝を習慣にしていると、口呼吸が癖になってしまうことさえあります。うつぶせ寝は、いびきや無呼吸を減らすかもしれませんが、それによる大きな代償があることを、忘れないで下さい。
*うつぶせ寝の他の欠点は歯並びを悪くすることです。顔の一方の側が就寝中、いつも圧迫されることが原因です。顔を左右どちらかに向けて寝ますが、左右交互に向く人はいないでしょう。ということはいつも一方の側の顔が下になり、圧迫されます。
右側を下にして寝ると、右の顎や歯が圧迫されるため、歯並びが悪くなります。頬も圧迫されるため、顔がゆがみ、左右非対称の顔になります。圧迫される側の目も小さくなります。顔や顎がゆがむと、それは全身に影響するため、体がゆがむ原因にもなります。
弊害はそれだけに留まらず、免疫にも影響し、関節リウマチなどに悪い影響を及ぼします。また、低反発枕を使用していると、気持ちがいいので、寝返りをあまり打ちません。それはどちらか一方の側を長時間おしつける状態にします。
普通の枕を使ってうつぶせ寝をする人より、顎関節症の割合が高いことが分かっています。
*仰向けに寝ることによって顎や歯が発達します。これらが発達することは、社会で生きるために重要であり、社会的人間に育つために欠かせません。そして、顎や歯の発達は、脳の発達に関係します。
就寝中に、私たちの体は、傷ついた臓器を修復するといわれます。
骨格も修復します。昼間行動する時、体はいろいろな使い方をするので、骨や骨格に無理がかかります。歪みが生じますが、仰向けに寝ることによって、背骨は矯正されます。
うつぶせ寝ではそれらの効用は得られないので、人間としての発達が阻害されます。安眠も邪魔されます。睡眠は自律神経のバランスを整える作用もありますが、熟睡できなければ、その効用も得られないでしょう。
*30回噛むこと 30回良く噛むことにより、唾液で食べものを消化して、胃液が薄まらないように、汁物やお茶は最後に飲むようにしています。
現在、一食あたりの噛む回数は平均620回です。戦前は1400回、江戸時代は1500回、鎌倉時代は2500回、弥生時代は現代の6倍以上の4000回程度でした。
食事に要する時間は現代の平均が11分で、弥生時代は51分でした。現代の一口あたりの噛む回数は平均10回。噛まない理由は軟らかい食べ物が料理の主流で美味しい料理と錯覚。
*よく噛むことの効用と重要性 まず、唾液の分泌を促します。唾液には消化酵素が含まれていますのでよく噛んで食べるほど、消化にいいのです。また、唾液には殺菌作用のある成分も含まれているので、口腔内の衛生にも役立ちます。
唾液が充分に分泌されないと、虫歯や歯周病になりやすくなります。唾液にはホルモンも含まれていて、それらは皮膚の粘膜から血管に入り、内分泌ホルモンとして体内で作用します。
*噛むことは、骨にとっても重要で、よく噛むことによってしっかりとした顎に成長します。最近の日本人の顎が細くなったのは、原因としてあまり噛んで食べないことが挙げられます。
顎がきちんと発育しないと、歯列が正常になりません。顎が小さい人に歯並びが悪いケースが多いことは、実際に良く知られています。さらに、よく噛むことは脳に作用し、脳の血流を促進します。脳の血流を最も促進するのは足を使うことですが、その次に効果があるのが、噛むことです。
よく噛まないことは、認知症になりやすいことも分かっています。また、早食いは食後の血糖値が急に上昇しやすいため、糖尿病になるリスクも高まります。食べ過ぎて肥満になるリスクも高いのです。
*片側で噛む癖をなくそう 片側で噛む癖は、さまざまな障害やトラブルを引き起こす原因になります。顎関節症や顔の歪みの原因にもなります。自然に任せていると私たちは一方の側で主に噛んで食べてしまいます。その癖を直すためには、意識して左右の顎を均等に使って噛むことが大事です。
それを習慣づけるための方法として、ガムを噛むことを勧めます。右で5回噛んだら次に左で5回噛みます。これを繰り返します。食事の時も左右の顎を使って食べるようになります。
*片噛みの人は口呼吸している 左右の顎を均等に使って噛むことが大切な理由は、もう一つあります。それは、片噛みの癖を直せば、口呼吸も改善されていくことです。
じつは、片噛みをしている人には、口呼吸している人が多いのです。私たちは、正しく鼻で呼吸していれば、咀嚼している時でも、空気を鼻から取り入れることが出来るので、苦しくありません。
ところが、口で呼吸している人は、口の中が食べものでふさがれると、一時的に空気を取り入れることが出来なくなります。では、この苦しい状況を、口呼吸の人はどうやって解消しているかというと、食べものを口の中のどちらか一方へ寄せ、その片側のみで咀嚼し、もう一方を空気の通り道として確保します。
ですから、私は、口呼吸している患者さんには、必ず「両方の顎を均等に使って、よく噛むことを心がけてくださいね」とアドバイスしています。
*ものを食べるときは、口を閉じて咀嚼するものです。それが行儀であるし、生理学的にもそうなっています。口を開けていては嚥下も出来ません。口を閉じて咀嚼することによって、舌の筋肉は鍛えられます。
言い換えれば、口を開けて食べる習慣を続けていれば、舌の筋肉は衰え、知らぬ間に口で呼吸する習慣が身につくリスクが高まるということです。食べるときには口をしっかり閉じ、両方の顎を均等に使って、よく噛むことを心がけましょう。
*飲み込んでから話す習慣をつける 口を閉じて咀嚼するのは行儀であります。親は、子供が口に物を入れたまましゃべると、「口の中に物を入れたまま、物を言うのはやめなさい」と注意したものです。
口の中に物を入れた状態でしゃべると口は開きます。食事の行儀としてよくないので、親は注意したわけですが、それは口呼吸が始まるきっかけになります。
*噛むと味がでる料理を食べよう 噛むことの重要性がわかっても、柔らかい食品を良く噛むのは案外出来ないものです。その訳は、こういう食品や料理は口に入れた瞬間が一番美味しく、噛めば噛むほど味はなくなってくるのです。
結局、「よく噛んで食べなさい」と、ただ言っても、それは実際の効力はあまりありません。ではどうすればいいのでしょうか。噛めば噛むほど美味しい食材や料理を選ぶ方法があります。
管理栄養士でヘルスアドバイザーの幕内秀夫先生は、「咀嚼の回数だけを問題にするのは間違っている。しっかりと噛むことの出来る主食を考えるべき。」と主張しています。食材選びと薄味にすることも重要です。
*舌磨きをするとインフルエンザにかかりにくい 食育というより、口腔の健康ですが、舌磨きの習慣もぜひ、身につけて欲しいことのひとつです。舌磨きは、舌を掃除し、舌苔を取る方法です。舌には舌苔といわれる汚れがつきます。食べもののカスなどがついたもので、口臭の原因にもなります。
大林京子歯科医師は、口腔ケアを指導し、口腔ケアを行うとインフルエンザにかかりにくいことを確認しています。冬は空気が乾燥しがちですが、その影響で、体も乾燥しやすくなります。体が乾燥すると、粘膜面も乾燥し、細菌やウイルスに感染するリスクが高まります。
口腔内や鼻腔の粘膜が乾燥していると、これらの場所から感染し、風邪やインフルエンザを発症することになります。口腔内、鼻腔がしっかりと湿っていると、免疫細胞の白血球もしっかりと働くので、風邪やインフルエンザにかかりにくくなります。
喉の粘膜細胞は、表面を覆う糖たんぱくのバリアーによって保護されており、インフルエンザウイルスが侵入し、存在するだけでは感染しません。大林先生によると、ある種の桿菌が出す酵素があると、ウイルスは粘膜に取り付く「鍵」を得て、バリアーを破り、細胞内に侵入し、細胞から細胞へと増殖を始め、インフルエンザを発症させるそうです。
ということは、適切な口腔ケアを行って細菌の数が減れば、感染リスクも減るはずです。特に舌には多くの細菌がいることから、舌磨きを勧めています。
舌磨きは、ガーゼや柔らかい布を使って行います。それらを水に濡らしてから、舌の上を数回、軽く擦ります。ごしごしと強くこすると、舌を傷つけることになります。あくまでもソフトに!
*マスクをすると口呼吸になりやすい。朝起きたとき、口に中が乾いていると感じたら、就寝中に口で呼吸していることの現れです。いつも意識して口を閉じよう。
*口呼吸が癖になる要因としては、舌筋の筋力の衰えも関係しています。食べるとき、口を閉じて食べると自然に舌を使って咀嚼しています。口を開けたままものを噛むと、舌はほとんど使われません。
口輪筋、咀嚼筋も使われないので、口を閉じる力も弱くなります。つまり、口呼吸の癖と舌筋などの筋力の衰えは、互いに悪い影響を与え合います。
*口呼吸を改善する「あいうべ呼吸」とは。
①「あー」といって、口を大きく縦に開く
②「いー」といって、口を大きく横に開く
③「うー」といって、口を強く前に突き出す
④「べー」と、舌を出して、精いっぱい下に伸ばす
この口の体操を毎日繰り返し行うことで、あまり意識しなくても、簡単に口の周りの口輪筋、咀嚼筋、舌筋などを鍛えることが出来るのです。
それらの筋肉をしっかり働かせることで、鼻呼吸の前提となる「口をしっかり閉じること」「舌を本来の位置に引き上げること」が出来るようになります。一日30-40セットを目安に、毎日続けて行うことが大事です。
効果を上げるコツは、筋肉を鍛えるための体操ですから、ふだんの会話の時よりも口を大きく動かすことです。朝晩と分けてやってもいい。この運動を継続していると、ドライマウス、花粉症、アトピー性皮膚炎、などは簡単に改善してきます。
また、関節リウマチ、気管支喘息、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎なども短期間で症状がおさまり、体調がとても良くなってきます。私は、「あいうべ体操」を指導していて、これ程簡単に出来て、すぐに効果が得られる治療法は他にないと思っています。
この後足の指についての章が続いていますがここでカットして機会があったらまた書きます。
以上です。
【舌磨きをやってみようかなと思っています。一時「あいうべ呼吸」体操を続けていましたが途中で落伍。口にテープはもう20年近くやっています朝起きた時に口の中はは乾燥していませんね。「何でも継続は力なり」です】。