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同じ相談者でも「応答の違い」でケースは変わる。1on1にも使えるカウンセリングの技術がわかる4つの逐語記録
〜3月5日 23:00
この記事は…
✅ キャリアコンサルタント・カウンセラー向け
✅ 1on1を実施するリーダー・マネージャー向け
✅ コーチングやカウンセリングに興味がある人向け
📘そして実は・・・子育ての場面にも使えます💡
事例記録と4つの逐語記録
1. 基本情報・背景
クライエント(以下、CLと表記)は30代後半の男性社員。2か月前に中途採用で入社した。前職では同じ業界で営業とプロジェクト管理の経験が長かったが、現在の職場では即戦力としての活躍をあまり期待されていないように感じている。
2. 面談経緯
入社2か月が経過し、試用期間の中間面談としての面談を実施。
人事部から「新しい環境に慣れず不安を感じているかもしれない」との情報提供があったため、CLの状況把握とサポートを目的として行われた。
3. 主訴(CLの訴え)
「中途入社なのに、まるで研修中の新卒のように扱われ、業務が与えられていない。期待されていないのではないか」と感じて苦しい。
「前職の経験を活かせる仕事をしたいのに、任せてもらえない。自分の存在価値が見いだせない」との不安を抱えている。
「社内コミュニケーションがうまくいっていない」「自分が必要とされていないのではないか」という思い込みが強まり、自己評価が下がっている様子。
📘指示的なキャリコンによる不満足な面談のケース
(1) 導入部分
CL:こんにちは。
CC:こんにちは。今日はどうされましたか?
CL:(少しうつむきながら)よろしくお願いします。今の職場で、自分が何もできていない気がして、ちょっとつらいんです。
CC:なるほど。それはつらいですね。でも、こういう時は「仕事がほしい」とはっきり伝えるべきですよ。
CL:え?…ええ…。前職でも似たような業務をしていたので、即戦力として期待されていると思っていたんですけど、蓋を開けてみたら雑用すらほとんどないんです。
CC:それならなおさら、積極的に行動しないといけません。上司に「何かできることはありませんか?」と尋ねましたか?
CL:(少し戸惑って)いえ…なんとなく待ってしまっていて…。
CC:それではダメですよ。会社は受け身の人に期待しません。主体的に動かないと、いつまでも同じ状況ですよ。
(2) 相談者の不満足な反応
CL:(少し沈黙)…そうですよね。
CC:今すぐ行動に移しましょう。まず、上司と面談を申し込み、「やれることを増やしたい」と伝えてください。そして、周囲に「手伝えることはありませんか?」と積極的に声をかけましょう。
CL:(戸惑いながら)…でも、そんなことしても「何で急に?」って思われるかも…。
CC:いや、気にしすぎです。大事なのは行動です。やる気を見せれば、自然と信頼が得られますよ。
CL:(ため息)…分かりました。
(3) 面談の終わりとCLの心情
CC:では、次回の面談までに「上司に自分の希望を伝える」「同僚に手伝いを申し出る」この二つを実践してください。やれば環境は変わりますよ!
CL:(小さくうなずく)…はい。
(CLは納得しきれない表情で面談を終える)
不満足な理由
1. 指示が一方的
• CLの気持ちを十分に聞かず、「こうしなさい」というアドバイスばかりが続く。
2. 共感が不足
• CLの「不安」や「戸惑い」に寄り添わず、すぐに行動を求める。
3. CLの状況に対する理解が浅い
• 「主体的に動けば解決する」と単純化し、CLが抱える心理的なハードルを無視している。
結果として、CLは「言われたことは正しいのかもしれないが、納得できない」「このキャリコンは自分の気持ちを分かってくれていない」と感じ、不満足な面談となった。
📘適切なキャリコンにより問題解決の糸口が見つかるケース
(1) 導入部分
CL:こんにちは。
CC:こんにちは。今日はどのようなことでお困りですか?
CL:(少しうつむきながら)よろしくお願いします。今の職場で、自分が何もできていない気がして、ちょっとつらいんです。
CC:つらいと感じているんですね。どのような状況か、もう少し詳しく教えてもらえますか?
CL:前職でも似たような業務をしていたので、即戦力として期待されていると思っていたんですけど、蓋を開けてみたら雑用すらほとんどないんです。
CC:(うなずきながら)期待と現実のギャップが大きいということですね。業務を任されない中で、どんなことを感じていますか?
CL:(ため息)正直、焦っています。このまま何もできないまま終わるんじゃないかって…。
(2) キャリアコンサルタントの介入
CC:焦りを感じているのですね。CLさんの中では「こういうふうに仕事をしたい」というイメージはありますか?
CL:はい…前職ではプロジェクトを管理する立場でした。だから、もっと自分の経験を活かして動きたくて…。
CC:プロジェクト管理の経験があるんですね。それを活かす場面がまだ見つからないということですが、今の職場では、どんなプロジェクトがありますか?
CL:(少し考えて)…実は、他のチームで進めているプロジェクトがあるみたいで、気になってはいるんですが…。
CC:関心のあるプロジェクトがあるんですね。それについて何か情報を得る機会はありましたか?
CL:いえ、まだ…。なんとなく話しづらくて、詳しく聞けていません。
CC:なるほど。では、そのプロジェクトについて少し調べてみるのはどうでしょう?例えば、関係者に話を聞いたり、資料を読んでみたり。
CL:(少し前向きな表情で)確かに…プロジェクトに関わる人と少し話してみるのはありかもしれません。
(3) 問題解決の糸口が見つかる
CC:CLさんの経験が活かせる場面がどこかにあるかもしれませんね。関心のあるプロジェクトの情報を集めることで、自分から提案できることが見えてくるかもしれません。
CL:そうですね…ただ待つのではなく、まずは情報を得ることから始めてみます。
CC:いいですね。焦りがある中でも、一歩ずつ進められる方法を見つけることが大切です。次回の面談では、どんな情報が得られたかを一緒に整理してみましょう。
CL:(少し安心した表情で)分かりました。少し動ける気がしてきました。ありがとうございます。
問題解決の糸口が見つかったポイント
1. CLの感情を受け止めた上で、具体的な行動を探る
• すぐに「こうしなさい」と指示せず、CLの思いや経験を尊重しながら進める。
2. CLが関心のある領域を引き出す質問をする
• 仕事がないことに焦るのではなく、「やりたいことがあるか」を確認し、興味を広げる。
3. 小さなアクションからスタートできる提案をする
• いきなり「動け」ではなく、まずは「情報収集」という取り組みやすいステップを提示。
結果として、CLは「自分から動いてもいいのかもしれない」と考えを整理し、問題解決の糸口を見出すことができた。
「ここまでは問題解決の糸口を見つけるアプローチを紹介しました。しかし、クライアントが本当の意味で変化し、行動を起こすためには、より深い内省が必要です。この有料部分では、クライアントの『本質的な変化』を生み出す対話の技術にフォーカスします。」
この続きは有料部分で詳しく解説します。
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2月3日 23:00 〜 3月5日 23:00
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