リフレムのトランジション魔法講座〜霧の谷と4本の杖〜
1.霧の中の不安
(深い森の小道。朝の霧がゆっくりと流れ、木々の葉が露に濡れている。リフレムとハルカが静かに歩いている。ハルカの表情は少し沈んでいた。)
ハルカ「リフレム、私…最近ずっとモヤモヤしてるんです。」
リフレム「ふむ、モヤモヤとはどのようなものかの?」
ハルカ「新しい仕事を始めて数ヶ月経ったのに、なぜか落ち着かなくて。前の仕事が嫌で転職したのに、いざ新しい環境にいると、なじめない気がして…。何だか、何もかもが不安で仕方ないんです。」
リフレム「それは、“トランジションの霧”の中にいるからじゃな。」
ハルカ「トランジションの霧?」
リフレム「うむ。シュロスバーグという賢者が言っておった。人は大きな変化の中にいるとき、霧のように視界がぼやけ、何が正しいのか、どこへ向かえばいいのか分からなくなるのじゃ。」
ハルカ「…それ、まさに今の私です。」
リフレム「トランジションの魔法には、三つの段階があるのじゃ。
終焉(エンディング):古い環境や役割との別れ。
中立圏(ニュートラルゾーン):新しい環境に適応する前の、混乱と不確実性の時期。
新たな始まり(ニュー・ビギニング):新しい自分を受け入れ、新しい環境の中で生きる段階。
おぬしは今、“中立圏”にいるのじゃな。」
2.中立圏という試練の道
ハルカ「中立圏…なんか、カッコいい響きですね。でも、実際にいるのはすごく不安定で、何も見えなくて…怖いです。」
リフレム「うむ、中立圏は旅人が霧の谷を渡るようなもの。以前の世界には戻れぬが、まだ新しい世界にもたどり着いておらぬ。多くの者がこの谷で迷い、時には引き返そうとするのじゃ。」
ハルカ「そうかもしれません…私も、前の職場のほうが良かったのかな、なんて考えてしまって…。」
リフレム「しかし、おぬしはその道を戻ることはないじゃろう?」
ハルカ「…はい。それは違うと思います。でも、じゃあどうすればいいんでしょう?」
リフレム「ふむ、ここで大切なのが、シュロスバーグの“四つのS”じゃ。」
3.シュロスバーグの四つのS(魔法の杖)
ハルカ「四つのS?」
リフレム「そうじゃ。この四つのSは、トランジションの霧の中を歩くための“魔法の杖”のようなもの。上手く使えば、霧の向こうに道が見えてくる。」
Situation(状況):「自分の置かれた状況を整理し、冷静に理解する」
→ 今、自分がどんな変化の中にいるのか、客観的に見つめることじゃ。Self(自己):「自分の強みや価値観を見つめ直し、どのように適応するかを考える」
→ 変化の中で、おぬしが持っている力やこれまでの経験を活かせる方法を探すのじゃ。Support(支援):「周囲の人の支えを活用する」
→ 家族、友人、同僚…誰かに相談することで、新たな視点や勇気が得られるものじゃ。Strategies(戦略):「新しい環境に適応するための具体的な戦略を持つ」
→ 例えば、新しい仕事の小さな成功を積み重ねることじゃな。できることから一つずつ。」
ハルカ「…なるほど。私、ずっとこの不安を“どうにかしなきゃ”って思ってました。でも、こうやって状況を整理して、自分の力を信じて、周りの人に頼りながら、少しずつ前に進めばいいんですね。」
4.霧の先にある新しい世界
リフレム「その通りじゃ。不安は“無知の霧”が生むもの。だが、一歩ずつ歩けば、やがて霧は晴れる。」
ハルカ「…そうですね。私、ちょっとずつでも進んでみます。明日、仕事で今まで話したことのない先輩に相談してみようかな。」
リフレム「それがよい。人とのつながりは、新たな道を開く鍵じゃ。新しい始まりは、一つの小さな行動から始まるものよ。」
ハルカ「…うん!なんだか、少し道が見えてきた気がします。」
(ハルカはふっと笑い、リフレムの顔を見た。リフレムは優しく微笑み、ゆっくりと杖を振る。)
リフレム「それでこそ、心の魔法を学ぶ者じゃ。」
(霧の向こうに、朝の光が差し込み始めた。ハルカの足取りは、さっきよりも少しだけ軽くなっていた。)
✨補足:リフレーミングの魔法✨
「不安」は、視点を変えれば「新しい世界への旅の始まり」。
霧の中を歩くことは、未来を開くための大切な過程なのじゃ。
勇気をもって一歩を踏み出せば、やがて道が見えてくる。」