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そうだ、文学フリマ、出よう②
拳をあげたはいいものの
初めての方もそうでない方もこんにちは。
しがない物書きの九曜でございます。
前回から少し時間が空いてしまいました。
実はオンラインイベントの主催なんてものを務めておりました。
舞台は二次創作でしたが、楽しかったですよ!
ジャンルを「オリジナル」にすれば、たちまち皆様も一国一城の主になれます!(個人でイベントを開催もできます!)
ご参考までにサイトを紹介いたします。
アバターを使ってお店を構えたり、人のお店を覗いたり。
今流行りのメタバースってやつですかね。
とにかく、そのイベントのために三冊新作を用意しました。
普段の自分は圧に弱いですが、物書きの人格はなぜか自分を追い込みたがる。「三冊書くだ!」そう心に誓ってイベントに臨みました。
気になる(ならないか)頒布物の行く末は!
まあ、それなりにお手に取っていただいたと。
物書き人格は見栄っ張りでもありますので、一定数刷ってもらわないと気が済まない。
おかげで在庫と暮らしております。
でも、嬉しかったのは、拙作を初めて手にしていただいたとおぼしき方から、丁寧な感想がいただけたこと!
物書きにとって、読んでくださる方の感想は最高の報酬です。
それがいただけただけでも、イベントを開いたかいがあったというもの。
……とかっこよく終わっても良かったのですが。
完売したという景気のいいお話を横目に、物書き九曜はややうつむいてしまいます。
やっぱり絵師さんにはかなわないなあ、なんて愚痴がむくむくと頭をもたげるのです。
装備したら使え!
さて、一次創作用にメールアドレスとTwitterアカウントを装備した話は、前回の終わりにどさくさにまぎれて書き捨てておりました。
イベントで燃え尽きてというのは言い訳でしかありませんね。
一次創作アカウント、今に至るまでつぶやけていない始末……
これでは何のためにアカウントを作ったのかわかりません。
一次創作において(二次創作でもですが)、最大の発信者は自分。
ガンガン自分でつぶやかねば!
でも、肝心の作品がない……
わけでもないのですよ。
今より昔、私が学生だった頃。
とあるバンドがありました。
「異端」という言葉が似合うバンドでした。
「でした」と断ったのは、もうそのバンドは永遠に見られなくなってしまっているからです。
メンバーの一人が数年前に急逝。
まだ50才にもなっていませんでした。
誰が言ったのでしょう、佳人薄命、なんて。
死というやつは、そんなきれいなものではありません。
ただ冷たく暗く、突然に大事なひとを連れて行ってしまうだけのものです。
再結成を熱望しないわけではありませんが、その可能性が失われてしまったことに、ただ現実のむごさを感じるだけです。
……話を戻しましょう。
若い頃に刻まれた思いというのは、簡単に消え去らないものです。
そして、若いというのは、今よりずっと大胆なのです。
彼らのとある曲を現場で浴びて、不思議な思いが生まれました。
思いは形を得ました。
その頃からしがない物書きだった私の中に、ひとつの物語が生まれていたのです。
それは彼らに宛てた一通のファンレター。
内気でワープロが友達の夢想家が綴ったつまらないお話。
こつこつ打って、なぜか途中でその物語は止まってしまいました。
十年以上もその話は私の中で眠っていました。
その間にいろんなことがありました。
近親者との突然の別れ。
それが元々丈夫でなかった心を砕いて、しばらく動けなくなってしまったのです。
再び立ち上がれたのはいいのですが、手の中には何も残っていません。
自分を取り戻す作業のなかで、私は自分の物語を少し捨てました。
なんだかとてもつまらないもののように思えたからです。
そんな苦々しい作業の終わりの方に、私は「彼らへのファンレター」に再会したのです。
「……これ、なんで止まってるんだろう」
なぜかその中途半端な物語は、私の自己否定を乗り越えて生き残りました。無性に手紙の続きが書きたくなりました。
お気に入りの曲をまたかけて。
私はキーボードを叩いていました。
そして、約三年ほど前に、「彼らへのファンレター」は完結しました。
約四万字。
物語にしては短く、手紙にしては長い。
その終わりはこういうのです。
「私はまだ、その答えを知りません」。
この青くさいお話を伴って、私は文学フリマに出かけようと思います。
わくわくドキドキデザインセット?
さて、電波な決意表明はいったん脇へ置いておきましょう。
本にする原稿はこれで間に合いました。
さて、これを本にしなければなりません。
二次創作なら、いつもお世話になっている印刷所さんにお願いするのですが……
丁寧なチェックをしていただけるので、STARBOOKSさんはおすすめの印刷所さんです。ただ、人気があるので、早くから予約しなければならないのが玉に瑕といったところでしょうか。
いつもなら、かっこつけて文庫サイズで発注するのですが、今回これしか持っていくものはありません。
文庫サイズなら、BOOTH(二次創作の人間がお世話になっている通販サイト)で「素材」と検索して、見栄えの良いもので間に合わせます。
でも、せっかくの文学フリマ、めいっぱい自作を飾りたい。
絵師さんにお願いしようにもつてがありません。
それなりにお金はかけないとご縁はないかもなあ、と思いながら「ココナラ」でも覗くかと思っていた私の前に現れた印刷所さんがあります。
「……わくわくドキドキデザインセット?」
なんともシンプルな、それでいて端的なフレーズが躍っています。
なになに……
表示のデザイン・装丁までおまかせのセットです。
納品された箱を開けるまで装丁は全て秘密です。
デザイン・装丁に関して一切のクレームを受付ません。
なんだ、この悪魔のように魅力的なセットは。
幸か不幸か、イメージ(妄想)だけなら売るほどあります。
気付けば、「注文」をクリックしている私がおりました。
物書きの人格は金銭感覚が少々バグっております。(直せ)
返す刀でデータ入稿も済ませてしまいました。
「わくわくドキドキデザインセット」(以下「わくドキデザイン」と省略)を利用するのなら、もう一つ提出しなければならないものがあります。
それは「わくドキデザイン仕様書」!
プリントオンさんのデザイナーさんに、自作のイメージを伝える大事な仕様書です。
実は、門の入口で何度も迷っていたんですね。
で、プリントオンさんに質問をいくつか投げておりました。
「『オリエンタル』ってイメージには対応してくれる?」
「オリジナルなんだけど受け付けてくれる?」
「ページ番号を『1』からにしたいんだけど、『3』からじゃなくても大丈夫?」
まあピーピーと騒ぐ騒ぐ。
「『オリエンタル』は対応可能ですよ」
「オリジナルもあらすじ書いていただければ大丈夫です!」
「ファイル名とノンブル(ページ番号)が合っていれば、ページ番号は1からでOK!」
丁寧に回答していただきました。
プリントオンさん、多分星の数ほどこういう切羽詰まったオタクの相手をこなしてきたんだろうな……
あとは「わくドキデザインセット仕様書」を埋めるだけ。
そこではたと指が止まる。
「あらすじ……書けぬ……」
本当におこがましいのですが、例えば芥川龍之介の「藪の中」のあらすじを書き起こせますか?
あれは全文引いてこないと正確な物語になりません。
拙作はそういう類の物語!(勘違いがはなはだしい)
「いや、『藪の中』、あらすじ書けるな……」
大文豪と己を比べるもんじゃありません。
さすがは大芥川です。
「平安時代の京の都で、ある殺人と強姦の裁きが行われる。四人の目撃者と三人の当事者の証言はひどく食い違っていて、語る者が増えれば増えるほど真相から遠ざかってゆく。最後に巫女の口を借りて、殺された男が語るが、果たしてその言葉を信じてもいいのだろうか。真相はまさに『藪の中』である」
こんなところでしょうか。
こちとらしがない物書きなもので、こんな簡潔にまとめられる物語は書けておりません。
悩んだ末に、提出したのが以下の仕様書です。
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これで伝わればいいのですが。
勘違い物書きなので、芥川の「藪の中」ほどきれいな説明にはなりませんでした。
下手は下手なりにやることがあります。
できるだけ簡潔かつ丁寧に説明することを心がけるくらいしかできませんが……
今回はいかがだったでしょうか。
長くなってしまった上に、余計な横道に逸れてしまいましたが、そのへんの七転八倒も含めてものを書くことだと思って、流していただければ幸いです。
また「次回」がありますように。