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フォーカスリングの回転角度ってどうなの?

マニュアルレンズ使用者にとって、フォーカスリングは最も操作する部材です。フォーカスリングの回転操作性は購入時の重要なポイントです。今回はフォーカスリングの操作性について分析・考察します。



フォーカスリングとは

フォーカスリングとは、マニュアルレンズについているピントを合わせるためにぐるぐる回す筒部品のことです。

フォーカスリングに刻んである数字は距離目盛と呼ばれ、カメラボディの像面からどのくらいの距離(撮影距離)の被写体にピント位置があるかを示しています。


フォーカスリング回転角度の分析について

どうやって考察したのか簡単にご説明します。不明点やご指摘はなんでもコメント下さい。詳細は別途最後に記載します。

フォーカスリング回転角度の分析の方法

概要は次の通りです。
◆目的:フォーカスリングの回転角度を考察し、操作性の考えを深める。

◆分析方法:
①フォーカスリングの直径と距離目盛の各数字間の寸法(弦の長さ)をノギスで測定。測定結果より回転角度を算出する。
②各撮影距離の被写界深度を算出する。
③回転角度と被写界深度等を比較、考察する。

◆備考:ノギス測定がかなりアバウト。また、至近側で製品称呼値からF値、焦点距離が変化しているが、今回の分析では考慮しない。

ノギス測定例


分析対象レンズ製品

手持ちの次の製品を対象に分析しました。

  • AI AF Micro-NIKKOR 60mm f/2.8D(ニコン)

  • SP 500mm F/8(タムロン)

  • AI NIKKOR 50mm F1.8S(ニコン)

  • AI NIKKOR 50mm F1.2S(ニコン)

  • AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G(ニコン)

対象レンズ!5本


分析結果の見方

結果の前にグラフの見方を説明します。

グラフでは各被写界深度に対する累積回転角をプロットします。横軸は各撮影距離での被写界深度。縦軸は至近を0度としたフォーカスリングの回転角度位置です。横軸は対数目盛になってます(普通目盛グラフも後で出てくる)。一点、無限遠のプロットを失念しました。

例:AI AF Micro-NIKKOR 60mm f/2.8D


フォーカス回転角はどうあるべきなのか

1.瞬間を撮影するために、回転角度合計(至近~無限遠)は小さい方が良い。
2.精度よくピントを合わせるためには、撮影距離(被写界深度)ごとの回転ピッチは大きい方良い。

フォーカスリング回転の操作性について上記2点の条件を考えました。目的が違うため、2条件は相反します。逆に言うと、各製品の撮影目的がどのように考えられているかをフォーカス回転角から考察することが出来るかもしれません。図で示すとこうです。


フォーカスリング回転角度の分析結果

お待たせしました。結果です。

フォーカスリング回転角度の分析結果
※無限遠のみプロット欠如

被写界深度の浅いエリア詳細を見るために、対数目盛でない普通のグラフもご覧ください。

横軸が対数でないグラフ

製品ごとに考察していきます。【】内は至近から無限遠までのおよその合計角度です。

  • AI AF Micro-NIKKOR 60mm f/2.8D【合計130度】
    マイクロレンズなので、グラフ左側のピント合わせが厳しい区域で回転ピッチを大きくピント合わせしやすい設計になっている(=グラフが垂直に立っている)。一方で無限側はそれほど厳しくないので、無限遠側に行くにつれて回転ピッチは小さく、グラフは水平になっている。結果グラフがL字を倒した形となっている。このL字が理想条件2つを達成する答えだと思う。マイクロレンズとしての特性を考慮して、良く作りこまれていると感じる。

  • SP 500mm F/8【合計324度】
    本レンズは望遠マクロという特殊レンズである。60mmF2.8ほどグラフのL字が形成されていないが、至近付近でのグラフは立っている。合計角度は324度とほぼ1回転で、全域で回転角度ピッチが大きい。使用している身からしても、回転角度が大きすぎてとても使いにくい。しかし、解像性能がとても低いのでピントはぴたっと合わせる必要があるレンズでもある。したがって、この角度ピッチの大きさは必要。

  • AI NIKKOR 50mm F1.8S【合計140度】
    まずこのレンズのフォーカス操作、気に入っている。至近~無限遠の回転角は140度と次の50mmF1.2Sより大きいが、回転の重さ(トルク)が軽い。筆者のこのレンズの役割は、パパッと撮るスナップである。役割に対して、60mmF2.8ほどの厳密な回転ピッチもいらず、このグラフ曲線の塩梅がぴったり。ちなみに、トルクも操作性に影響しますね。忘れていました。

  • AI NIKKOR 50mm F1.2S【合計109度】
    F1.2なので、被写界深度浅いエリアではグラフが立っている。
    が、60mmF2.8ほどではない。60mmF2.8と50mmF1.8の特性の中間といったとこか。ちなみに、トルクは少し重めで、ちょっとだけ使いにくい。

  • AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G【合計86度】
    純AF用レンズ。比較的至近~無限遠の角度が小さい特徴。
    50mmF1.2より暗く角度ピッチが小さくて良いと考えると、50mmF1.2基準でグラフ線は正しい位置にいると考えられる。

【再掲】横軸が対数でないグラフ


まとめ

先の考察が散らかり、すみません。印象に残った点等を以下にまとめます。

  • フォーカスリングの回転操作性は、被写界深度・回転角度ピッチ・回転トルクの3点のバランスが大事っぽい

  • 無限遠側に対して至近側では、回転角度ピッチを優先して大きく設定している。この傾向は特にマクロレンズが顕著である。

  • スナップ撮影にとっては、全距離に対して回転角度ピッチのムラが少なく、リングのトルクが軽いものが良い。(50mmF1.8を称える)

  • 解像性能が低いレンズはフォーカス操作性の要求精度が上がる。(500mmF8より)

なお、フォーカシングレンズ群等の内部構成が設計の拘束条件になるかと思います。一概にユーザーの操作性のためだけに、上記のリング回転角度に設計されたとは思いません。ただそれはメーカー都合。


【補足】分析に関しての捕捉情報

分析方法の箇所を捕捉します。ご興味あれば、ご参考ください。

◆分析方法:
①フォーカスリングの直径と距離目盛の各数字間の寸法(弦の長さ)をノギスで測定。測定結果より回転角度を算出する。三角関数使って算出した。
 
 距離目盛間の回転角度=2×arcsin(距離目盛間の弦長÷リングの直径)

②各撮影距離の被写界深度を算出する。以下の数式を使用した。
 
 被写界深度=被写界遠点ー被写界近点
 被写界近点=過焦点距離×撮影距離÷(過焦点距離+撮影距離)
 被写界遠点=過焦点距離×撮影距離÷(過焦点距離ー撮影距離)
 過焦点距離=(焦点距離^2)÷許容ボケ×Fナンバー

 許容ボケは0.03mm
 Fナンバーは製品公称開放値(1.2とか2.8とか)
 至近側では焦点距離やFナンバーが変化するが、これは考慮していない。
 というか、よく勉強しないと算出方法がわけわかりまへん。

③回転角度と被写界深度等を比較、考察する。

最後まで読んでいただきありがとうございました。






最後に

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