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【読んだ】「検索の時代」が終わっても変わらないもの
おすすめ度 ★★★★☆
検索ワードを探す旅とは
2014年に書かれた本。
いつも同じところで同じ仲間と同じことばかりしていると、検索ワードが偏ってしまう。つまり見える世界が偏ってしまう。打開するには物理的に自分の位置を変える=旅をするのがいい、というのが大まかな主張だ。
著者は旅マニアではないし、旅行ガイドブックではない。
いや、実際に旅行に行くときのコツや心得もあるが、本質はそこじゃない。もちろん検索ワードの探し方のコツや技術的なノウハウ本でもない。
うーん何の本だろう?と読後に考えてしまうけど、示唆に富んでいて面白い内容だったことは間違いない。
人は環境の産物
この本はあえて自己啓発本のように作ってあるが、自分探しをしたい人のための本ではないと言う。
自分探しをしたいのなら、本を読む必要はないのです。旅に出る必要もない。単純にあなたの親を観察すればいい。あるいは生まれた町や母校や友人。「あなた」はすべてそこにある。
人間は環境の産物だからです。
人は環境の産物。
郷に入っては郷に従え、朱に交われば赤くなるみたいな話だ。
人は、見たいものだけを見て、信じたいものだけ信じてしまう。
だから、世界を広げるためには、物理的に場所を変える、違う人とつながるのが手っ取り早い。
人間関係みたいなとこは哲学や政治思想にも関わってるし、チェルノブイリやアウシュビッツの旅などは旅行記のようでもある。
うーんやっぱり、何の本だろう。
著者がインドに旅行した時の話
著者は家族でインドに旅行しているときに、ふとしたことで「ケーララ州」を知る。日本での知名度は低いが、インドでは先進的な場所でITも医療も教育も発達している面白い場所だった。
しかし重要なのは「これらの情報が日本語でネットに上がっていても、ほとんどの人はケーララ州を知らない」ということだ。
インドに行かなければ、検索窓に「ケーララ」と打ち込むことは決してなかっただろうと著者は語る。
ChatGPTはさらに世界を狭く強くしている
うーむ、いいね。示唆に富んでいる。
2014年だから「検索ワード」だけど、今なら「ChatGPT」にそのまま置き換えられるだろう。
むしろ、見たいものだけを見せる具合はより強化されている。
検索ワードをいれて、一覧から自分で答えを探す必要すら無くなったのだから。
付き合う人も、居る場所も、居心地がいいだけではダメなのか?
それの何がいけないのか?と思う自分もいる。
会社員をやめてから、嫌いな人と付き合わなくて良くなったし、出社もしなくなった。
好きな時間に好きな仕事をして、好きな本を読んで、好きな人とおしゃべりして過ごせる。(そこまで理想通りかというと、ちょっと言い過ぎだけど)
それの何がいけないのか?
いけない、わけではないと思う。
居心地の良い場所で安心して過ごしたいという気持ちは、否定されるものではない。
ただ、世界が狭くなるのは確かだ。
本では「村人」と「旅人」という表現が使われていたが、日本人は特に「村人」でありたがるという。
狭いコミュニティを大切にする、大切にしすぎて、他者を排除する方向にも向かいやすい。
2014年はちょうど在特会がネットで問題になっていた頃らしく、その辺の話も多い(著者の思想が関係しているのかもしれないが、この人のことをよく知らないのでただの想像)
一方で世界を広げるために旅人で居続けるのもしんどい。
どこのコミュニティにも属さず、環境を次々変えていくのは、誰でもできる生き方ではないだろう。
本では、村人でありながらも時々旅に出る「観光客」になることを勧めている。
旅に過剰な期待はせず、無責任で軽薄でもいいから、たまに場所を変えて、その場所でしか見れないリアルな風景を見る。
この考え方は、普段引きこもりで半径2キロ以内でほとんどの生活を成り立たせている私でも「ステキだな」と感じた。
たまーに、ぜんぜん違うコミュニティの人と話すると、疲れるけど面白い発見があったりする、そんな感覚かな。
旅行か…子どもメインでしか最近行ってないけど、この感覚を持って言ってみようかな。もうすぐGWだしね。