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社会科にもやもやしている方へ⑥~感情を動かせ~

授業を行う際、どうやったらわかりやすいか、ということばかり考えてきたように思います。でも、人間というのは、わかることには何のストレスも感じませんよね。

しかし、わからないこと、となるとどうでしょうか?結構、ストレスです。イライラして、もやもやしてきます。感情が動き出すわけです。そして、授業が進むにしたがって「納得」という形で、感情が落ち着いていきます。そしてさらに、「納得」したことも、実はわかっていない、ということが見えてくれば、授業は感情を軸にして回り始めます。

これが、私の理想的な授業構成です。思考や理解、意識などの「認知」の部分と、納得や不満足、怒りなどの「感情」の部分を、指導の柱にして考えます。「感情」という点でも、指導案作り、見直してみませんか?これまでの指導案を見直したら、実は「感情」の面を意識して作っていた、ということもあるでしょう。

①「わからないから、考えたくなる」という感情を利用

算数などでもよく行われていますが、資料を「隠す」という手があります。パワーポイントなどを利用して、徐々に見せるなども有効だと思います。それから、3年生の地図などは、あえて「間違った地図」を提示するのも有効です。スーパーマーケットはこんな場所にはない!と気が付いた子どもがいたら、「いや、これは先生が作ったのだから間違いない」と反論します。自由な中で授業ができていれば、「いや、先生が間違っている」ということで、放課後に見に行って地図を調べる子も出てきます。子どもの「わからない」「はっきりさせたい」という感情をうまく引き出せたら、それだけで子どもたちは自分から動き出します。

②「もし、自分がこの人だったら」という感情を利用

社会科教科書には、「○○さんの話」が昭和50年ころから登場するようになりました。事実を受け止めるだけでは学習がつまらないので、共感的に考えよう、ということがねらいです。例えば、
「漁師さんたちは朝4時から漁に出ます。水揚げしてから、また漁に出て、1日に数回繰り返します」
という教科書の記述があったとします。これはこれで、大切な情報です。でも、○○さんの話になると、
「私たちは朝4時に漁に出ます。朝早いのがつらくないんですか?と聞かれますが、そんなことはありません。繰り返し水揚げして、いい魚がとれたときには、本当にうれしい気持ちです」
というようになります。ここで、「みんなは朝4時に起きれる?」というように、共感的理解を引き出すように発問します。子どもたちの反応は様々なだと思いますが、「どうして○○さんは、つらくないんでしょうか?」と発問するだけで、子供の中には「眠いのがいやだ」という感情をもっている子がいるでしょうから、「眠いのがいやなのに、どうしてつらなくないのか?」という問いになってきます。こうした子を生かして考えるきっかけになります。

③「えっ?」「ひどい!!」という感情を利用

ここでも共感的理解を生かします。しかし、今度は資料を使って強い感情を「自動的に」浮かび上がらせます。この「自動的に」というのがキーワードで、先生が問わなくても、資料をパッと見ただけで、心が自然に動き出す、というイメージです。例えば、北九州市で1960年ころ、ひどい工業ばいじんでぜんそくになやまされた子どもたちがいました。

ばいじんで真っ黒になった子ども
ばいじんを吐き出す北九州市の工場

北九州市の城山小学校では、このひどいばいじんで、あまどいがつまってしまいました。

ばいじんでつまった城山小学校のあまどい

このあまどいをつまらせたばいじんが、つまり児童の肺の中にたまっていっているわけです。想像しただけでも、恐ろしいことですよね。そして、
「この城山小学校、この後、どうなったでしょうか?」
と問いかけて…

「えっ?」
「公害を何とかしよう、じゃなくて、小学校をなくしてしまったの?」
「ひどい」
と、感情を動かしていきます。当時、どうして小学校を廃校にしてまで公害が続いたのか?子どもたちの親は?子どもたちはどう思っていたのか?市は?県は?国は?というように、多角的にそれぞれの立場で調べていけば、当時の社会構造が見えてきます。こうした学習の中で、未来を生き抜いていく見方・考え方を培っていくことができます。この学習のスタートは、感情を「自動的に」動かすことです。

④まとめ

こうして、感情を軸に授業構成を考えていけば、子どもが動き出す授業になっていくと思います。あまり語られてこなかったキーワード「感情」ですが、脳科学者の茂木健一郎氏によると、
「感情は、きわめて人間らしい脳の使い方です。最大に脳を活性化するためには、感情を生かすことが大切です」
なのだそうです。社会科だけでなく、他の教科でも生かせると思います。ぜひ、挑戦していきたいと思います。

                    三浦健太朗

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