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うつ病で体の背面が全部腐ってしまった患者さんを見て

私は救急と集中治療に携わっているのでうつ病の重症例に出会うことが多い

しかし普段生活していると職場以外でうつ病の患者に出会うことがない
おそらく重症のうつ病患者は家から出られないから

未だに一部でうつ病は「こころが弱い」とか「気の持ちよう」とか思われているような気がする
体験してみないと分からないのは仕方がないことだとも思う
そういう私もうつ病についての偏見はないが、教科書で勉強しているだけで実際の患者に合うまでは実感が湧かなかった

こういうとこもあるんだと知ってもらえたら何かの役に立つかもしれないと思い、私が衝撃を受けた重症のうつ病症例を紹介しようと思う



内縁の妻からの救急要請で「1か月ぶりに家を訪ねると患者が動けなくなっている」とのことだった
病院に運ばれた時点で患者はロボットのように動かない 
「充電の切れた人間」という表現が正しいと思った
病衣に着替えようと思って背中を向けた時、衝撃だった
体の背面全部が褥瘡(じょくそう)で肉が腐っている 暗赤色でジュクジュクになり、筋肉と骨がむき出しになっていた 


★褥瘡(じょくそう)とは…床ずれの事。長時間同じ体勢でいると部分的に圧力がかかり血流が悪くなり細胞が死滅し皮膚が腐る。深さによって重症度が決められていて筋肉や骨まで達するのはかなり重症。これを予防するために病院では2ー4時間ごとの体位変換をしている。

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