86歳の歌手
20代の頃憧れていた歌の先生に、好きだっていったら「女は30からだ」と言われて、30歳になってまたコクったら「女は40からだ」と逃げられました。毎年深川の江戸資料館でコンサートを開催されていた方でしたが、コロナ以降大きなホールでは行っておらず、彼の原点の「歌声喫茶」ともしびで歌う、というご連絡をいただいたので行ってきました。
MUSIC IN ともしび 川端清コンサート
ありふれた人生を過ごしてきて ピアノ 神村 晃司
わたしが最後に行った深川のコンサートは、2017年で30回目(30年)で、わたしは、第2回目から10年間ほどお手伝いさせていただいていました。そのときのバンドのピアノ、ドラムの方々は亡くなられていて2017年も新しい方でした。このとき先生は79歳でしたが、今は86歳です。
しゃんとお立ちになり、声が伸びやかで声量がすごい。昔と変わらない、先生だ。歌ももちろん、トークも健在で社会情勢(アメリカ選挙、戦争、強盗詐欺等)にも目を向けてらっしゃる。
今年8月に82歳で亡くなられた高石ともやさんも、先生の仲間で高石ともやさんの歌を、歌唱指導のもと一緒に歌いました。高石ともやさん、マラソン、トライアスロンをやってらして母が好きでした。わたしはお会いしたことがないのですが1981年の第1回皆生トライアスロンで優勝し、ホノルルマラソンは、1977年~2019年まで連続43回出場しているレジェンドです。
高石ともやのこうしたアスリートの面しかしらず、歌をきちんと聞いたことがなかったのですが、この『街』というのがとてもいい曲でした。
このフレーズだけみんなで歌いました。
高石ともやさんご出身の京都の街の描写が素敵な歌です。
反戦歌、平和を願う歌、労働者、親子、シャンソン。
『インシャラー』も響きました。アダモの平和を願う曲ですが、インシャラー=Inch'Allah」は「神の思し召しのままに」というような意味と解されていますが実際は日本語で表記することは不可能とも言われています。「願い」「諦め」の意味もあるらしいです。
20代の頃、先生の歌を聴いてよく泣いてました。
『for you』高橋真梨子。大人の色気と情熱的な恋。
86歳の先生、色気がすごい。これにはまいった。
だけど、泣かなかった。泣いたのは、なんとあまり好きでなかった
『マイウェイ』とは。自分でもびっくり。
『マイウェイ』昭和のおじさんたちが、カラオケで気持ち良く歌う曲、って思ってたので。
先生の歌った歌詞が、正確にはどんなだったかわからないけど布施明の「今船出が」ではなく、直訳っぽいやつでそれが響きました。
これだったような。
20代の頃、25歳年上の先生が好きで、同じく先生のことを王子様と言ってた20歳ぐらい年上の飲み友達がいて彼女とは先生をめぐるライバルでした。彼女と先生とわたしの彼と4人で飲みに行ったりカラオケで歌を先生にせがんだりしてました。
彼女に最後にあったのは、10年前。病気をしてて退院したばかりでした。5年ほどまえに「かなちゃん、どうしょう。夫が死んじゃったの」と取り乱した電話が彼女からありました。コロナを言い訳にしてわたしは彼女と会うことはなく、ずっとそのまま時が過ぎてしまいました。
先生のコンサートで知人に会ってもわたしから彼女のことを聞く勇気はなく、知人から「彼女が亡くなって5年だものね」と知らされてやはり、と思いわたしの不義理を後悔しました。
知っている人たちがいなくなっていく。
And now, the end is near
86歳の先生が歌うから重たい。
プログラムの最後に記されてました。
生きる、逢えるということは尊いことだと思いました。
(11月5日)