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アオハルでない、青春なのだ
若いというとだけで奢って、無知で生意気で傲慢で、バカ女だったわたしは、その頃のお話は恥ずかしくってできません。
だけど、バカで正解、バカでいいんだな、ただ楽しいからでいいんだな、と思える本です。
哀愁の町に霧が降るのだ 椎名誠
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椎名誠、沢野ひとし、木村晋介、イサオ。なにものでもなかった若者たちが下町のアパート、家賃5500円の6畳の部屋「克美荘」での共同生活の日々を中心とした、笑いと哀愁のお話です。
本編はなかなかはじまらないのですが、そこは「現在」で。16歳から23
歳ぐらいまでの彼らのつながりや、武勇伝が不定期なタイムワープとともに賑やかに描かれてます。
人とのつながりがハンパでないところがおもしろかったです。沢野ひとしとは、高校では1年しか一緒にいなかったのに、転校しても続いていて。俺の友だちに木村というおもしろいヤツいるんだぜ、と沢野の友だちの木村とつながり、沢野は椎名の地元の友だちのイサオとも知り合います。
椎名の高校の先生であった関口先生は、木村と同じ高校にいたわけではないのに、木村を関口先生のクラスに呼び落語をやり、関口先生も彼らの仲間で、木村の結婚式の主賓でもありました。
イサオの友だちのサイトー、沢野と椎名の共通の友だちの小林も「克美荘」に居ついてしまいます。最大6名!!
登場人物を書き出している箇所があり、書いている本人もびっくりするぐらいで、数えてみたら31人でした。
31名の名前、つながり。家族以外にわたしはこうして言えるかしら。たくさんの人とかかわるというのは、生きているということのような気がします。
B級グルメが、たくさんなのも面白かったです。サバ缶のサバナベ(今は、サバ缶流行りですが)醤油とかつおぶしのソーメンに、マヨネーズを投入したもの、ニワトリのガラ61分完全消滅作戦、とりもつ鍋。そしてなんと言ってもカツ丼。真っ白なお米、丼ぶりめしを食べたくなります。
カツ丼つくっちゃいました。
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お肉が柔らかく勢いがあり、青春の味でした。
ピンポンのドアホーンもなく、ただドアを開けて「誰かいるか、飲もうぜ!」と、酒飲み競争をしたり、河原でプロレスごっこをしたり。
ただ楽しそうだから、やってみる、若くなくってもやってみてもいいかな。シーナも、今もそうだと思うから。
つながることが、大事というきれいな今風の言葉もシーナは好きぢゃないかな。ともだちのともだちはみなともだち、こんな言葉ももう遠くなってしまっている今だからこそ、読んで欲しい本です。