感想『おおきな木』シェル・シルヴァスタイン
シェル・シルヴァスタイン『おおきな木』の感想です。
アメリカで1964年に出版された絵本で、
今もなお、世界各地で多くの人々に愛されています。
1分もあれば読めてしまうお話しです。
でも、何度も何度も読んで、じっくりと理解したいお話し。
大人の方にぜひ読んでいただきたい、少し苦くて切ない物語です。
こんな人に薦めたい・・・
▼自分を犠牲にしてでも、誰かに尽くしてしまう人に
▼少し大人向けの絵本を読みたい人に
▼読み終えた後、じっくりと余韻に浸りたい人に
『おおきな木』あらすじ
あるところに、一本の大きな木がありました。木は一人の少年のことが
大好きで、少年も木が大好きでした。少年は毎日その木の下へ遊びに行き、一緒に楽しい時間を過ごしていました。しかし、時間は流れていくものです。少年は徐々に成長して大人になり…。
「おおきな木」と「少年」だけが登場する、優しくて切ない物語です。
『おおきな木』感想・レビュー
1. 原題は"The Giving Tree"=「与える木」
『おおきな木』の原題は"The Giving Tree"です。直訳すると「与える木」になります。これは私の解釈ですが、「おおきな木」というのは決して直接的な木の大きさだけを指しているのではなく、愛情の大きさを指しているのではないかと思います。「大きな愛情を惜しみなく与え続ける木」、そんな印象を受けました。
2. 読む人によって解釈が異なる
この物語は、恐らく読む人によって、感じ方や解釈が大きく異なります。自分自身を「少年」と重ねる人がいるかもしれませんし、「木」と重ねる人もいるかもしれません。そして物語から読み取る意味も、解釈も、その人の歩んできた人生によって様々なのだと思います。私はというと、「木」と昔の自分を重ねて、思わず書店で涙しました。
3. 何度も読み返して理解する
『おおきな木』は、子ども向けの絵本として、とても単純な物語がやさしい言葉で紡がれています。大人の方は、1分もあれば読めてしまうでしょう。ただ、さらっと読んでしまっては飲み込むことができない物語です。読むたびに、苦み、痛み、怒り、悲しみ、喜び…複雑な感情に心が動かされて、そのたびに考えることがあります。噛めば噛むほど美味しい、という感じでしょうか。
『おおきな木』感想まとめ
私が『おおきな木』を読んで率直に思ったことは、「自分を犠牲にして、誰かに為に惜しみなく愛情を与え続けることは、その人にとって本当に幸せなのだろうか」ということです。私も昔、家族や恋人に尽くすため心身を削りました。家族と恋人を愛していたからです。その当時は、それが幸せだと思っていました。でも本当に幸せだったのか…。なんとなく、当時の自分を客観視しているような気持ちになりました。
本作は絵本ですが、大人の方にこそ、ぜひ読んでいただきたい物語です。