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シェイクスピアおすすめ作品12選~代表作の四大悲劇など観てよし、読んでよしの名作をご紹介
はじめに
シェイクスピアは言わずと知れた世界で最も有名な劇作家で、世界中の文学者に多大な影響を及ぼしてきました。特に四大悲劇と呼ばれる代表作『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』、『マクベス』は特に有名です。
これまで当ブログでも紹介してきましたプーシキンやツルゲーネフ、チェーホフもシェイクスピアの影響を強く受けていますし、ドストエフスキーも当然ながら若い頃から親しく読んでいました。
世界文学を考えていく上でシェイクスピアの影響ははかりしれません。
そして何より、シェイクスピア作品は面白い!
本で読んでも素晴らしく、舞台で生で観劇する感動はといえば言葉にできないほどです。私も吉田鋼太郎さん率いる「彩の国シェイクスピア・シリーズ」を感激し号泣しました。
シェイクスピア作品は日本で最も上演されている演目の一つなのではないでしょうか。
というわけで、観てよし、読んでよしのシェイクスピアのおすすめ作品をこれから紹介していきたいと思います。
それぞれの記事でより詳しくお話ししていきますので、ぜひリンク先もご参照ください。
1 『ハムレット』~名言「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」を生んだ代表作
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『ハムレット』は1600年にシェイクスピアによって書かれた劇作品です。
『ハムレット』は私も大好きな作品でこれまでも何度も読み、舞台にも観に行ったりしていました。
この作品の舞台はデンマーク。主人公ハムレットはその王子様です。
彼の目の前に現れた父の亡霊がきっかけで彼の運命は動き出すことになるのです。
ストーリーそのものも面白く、引き込まれてしまうのはもちろんなのですが、私が個人的に感じた『ハムレット』の魅力はそのセリフの格好良さにあります。舞台ならではの演劇がかったセリフがすごくいいんです。思わず声に出して読みたくなるような、マネしたくなるようなセリフです。
この記事において具体的にお話ししていきますが、演劇っぽい言葉となんとも勇ましいリズム。口に出して読んでみればそれが特に感じられます。
シェイクスピアの演劇はこうした言葉のオンパレードです。
このセリフの格好良さ、心にグッとくる響きがなんともたまりません。
これは「読んでみればわかる。舞台を観ればわかる」感覚ですのでぜひシェイクスピアに触れて頂きたいなと思います。
シェイクスピアの演劇というと小難しいイメージもあるかもしれませんが、実際はまったくそんなことはありません。現代人たる私たちが見てもとても楽しめる作品です。その中でも『ハムレット』は特にドラマチックで感情移入しやすい作品となっています。一旦見てしまえば引き込まれること請け合いです。とてもおすすめです。
2 『夏の夜の夢』~恋人たちと妖精のドタバタ喜劇!メンデルスゾーンの序曲でも有名なおすすめ作品
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この作品は若い男女4人の恋の四角関係と、それをさらにかき回す妖精たちが織り成すドダバタ喜劇になります。
タイトル通り、この物語ではまさに夢を見ているかのような不思議な展開が繰り広げられます。
訳者の福田恆存は解説で『読後の印象は「夢」のように豊穣である』と述べていました。
実際この作品はそんな満足感を味わえる作品です。『リア王』や『マクベス』などのように重厚なストーリー展開を追っていくというよりは、気軽に笑って楽しめる作品となっています。
そしてこの作品において特にお伝えしたいのはドイツの作曲家メンデルスゾーンについての関係です。
以前当ブログでも紹介した19世紀の偉大な作曲家メンデルスゾーンはこの作品を子供の頃から愛していました。彼は16歳の時には兄弟や友人たちとこの作品を演じて遊んだり、17歳の時にはなんと、『夏の夜の夢』の序曲を完成させてしまいました。
17歳の段階でこの曲を完成させるメンデルスゾーンの圧倒的な才能には驚くしかありません。モーツァルトに匹敵する才能と称賛されるのも納得です。
そしてこの動画のコメント欄を見て驚いたのですが、この曲はドラえもんの映画にも使用されていたとのことです。たしかによくよく思い返してみればそんな気がしてきました。これには驚きでした。
メンデルスゾーンはその後も『夏の夜の夢』に愛着を持ち続け、1841年から1843年にかけて本格的にこの作品の付帯音楽の制作に取り掛かりました。
そして完成した曲の中でも特に有名なのがこちらです。
「結婚式といえばこの曲!」という誰もが知るこのメロディーはメンデルスゾーンが『夏の夜の夢』のために作ったものだったのです。私もこの事実を知った時は本当に驚きました。
大好きなメンデルスゾーンが愛した作品ということで、私も『夏の夜の夢』がもっともっと好きになりました。
『夏の夜の夢』は『ハムレット』や『オセロー』、『ヴェニスの商人』などの有名どころの作品と比べて、たしかに影の薄い作品かもしれませんが、私は大好きな作品です。いや、メンデルスゾーンにはまっている今、この作品が一番好きとすら言えるかもしれません。とにかく笑える愛すべき作品です。この作品に出てくる「スパニエル」、「石垣」がもう愛しくてたまりません。心がふっと軽くなる夢のような楽しい劇です。
シェイクスピア作品でこんなに笑える劇と出会えるなんて思ってもいませんでした。なぜこの作品がそんなに笑えるのかはこの記事で詳しくお話ししていますのでぜひリンク先もご覧になって頂ければなと思います!
3 『オセロー』~勇将オセローの嫉妬と激情の悲劇!イアーゴーの巧みな騙しのテクニック
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『オセロー』は1604年頃に発表された作品です。
今作の主人公はオセローというアフリカ系の将軍です。
彼は戦で類まれなる武勇を示し、その地位まで出世しました。そしてそれだけでなく高潔で真っすぐな性格で人望の厚い将軍です。
そんな将軍が妻として迎えたのが美しきデズデモーナという由緒ある貴族の娘でした。デズデモーナとオセローはなかば駆け落ちに近い形で結ばれます。そんな強い愛によって結ばれていたはずの2人ですが、イアーゴーというオセローの側近の策略によって引き裂かれることになるのです。
イアーゴーといえば『アラジン』のオウムのキャラクターを思い浮かべる方も多いかもしれません。そのイアーゴの名前の元になったのがこの『オセロー』のイアーゴーなのだそうです。
というのもこの作品のイアーゴーはとにかく口が上手くて人を騙すのが驚くほど巧みなのです。彼の人を騙す能力は読んでいて末恐ろしくなるほどです。
この作品はオセローが主人公ではありますが、実はイアーゴーの方が出番が多く、しかも生き生きと描かれます。イアーゴーがタイトルでもいいくらい彼の奮闘ぶり、策の鮮やかさが描かれています。
そうしたイアーゴーの悪役っぷりもこの作品の大きな見どころです。『アラジン』のイアーゴもそうですが、人を騙す悪役ではあるのですがなぜか憎めない不思議な魅力があります。そんなイアーゴーの立ち回りもぜひ楽しんでみてください。
個人的にこの作品は大好きな作品です。人間の狂気、混沌を覗くかのような感覚を味わうことが出来ます。シェイクスピア作品でも屈指のおすすめ作品です。
4 『ヴェニスの商人』~機知に富んだ見どころ満載の名作喜劇
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この作品の大筋は約束した借金を返せなかったアントーニオーと高利貸しシャイロックとの対決なのですが、そこはシェイクスピア。このメインストーリーと並行して続いていくお話がこれまた面白いのです。
そもそもアントーニオーの借金の原因となったのは恋に悩む友人でした。彼は恋する女性に求婚しに行こうとしていたのですがお金が足りなかったのです。
そこで友人思いのアントーニオーはなんとか金を用意しようとシャイロックのもとへ向かったのでした。そしてどうなってしまったかはすでに述べました通りですが、この作品では友人バサーニオーの恋の物語も語られていくのです。
彼が恋したのは莫大な遺産を相続したばかりの美しい女性、ポーシャ。
そんな彼女のもとには多くの求婚者がやって来ていました。しかし彼女が結婚する条件として彼らに掲示したのはある不思議な謎解きだったのです。
その内容は金、銀、鉛の箱の中からひとつを選び、正解を選ぶことができたなら結婚は認められるというものでした。
実はこれは亡き父の遺言であり、ポーシャは自ら結婚相手を選ぶことが出来ず、「この箱に委ねるしかないなんて」と嘆いていたのでありました。
そして物語のお約束通り、何人もの男がこの謎解きに挑戦しますが見事に玉砕していきます。間違いの箱の中にはそれを選んだ男を痛烈に非難する亡き父の言葉がしたためられていて、この言葉がまたとんちが効いていて実に面白いです。
求婚に来た男たちがどの箱を選ぶかで頭を悩ませているシーンも面白いですがこのこっぴどくやられる場面も素晴らしいです。
そもそも「金、銀、鉛の箱からひとつを選べ。正しき箱を選んだ者にポーシャを与えよう」という謎解きがもう面白さ満載ですよね。金の斧、銀の斧を彷彿させます。もし自分だったらどれを選ぶかなと考えてしまいます。
さて、何人も敗退していく求婚者の中にいよいよ、あの男が現れます。
さあ、バサーニオーは正しい箱を選べるのか、彼は結婚することができるのでしょうか!
そしてこの二人の出会いが結果的に親友アントーニオーを救うことにもなっていくのです。見事な大団円。さすがシェイクスピアです。
5 『リア王』~世界最高峰の傑作悲劇!「誰が言えよう、『俺も今がどん底だ』などと?」
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この物語は上の姉2人の甘言を安易に信じ、最も心優しき末娘の率直さに激怒したリア王の愚行から始まります。それまで思うままに力を振るってきたリア王がいざ地位と権力を姉2人に譲った途端、もはや用済みと邪険に扱われてしまいます。
そこから姉二人の陰謀はますますエスカレートし、国を巻き込む大事件になっていきます。そしてリア王はもはや乞食同然にまで落ち込み、国土を放浪する身となってしまうのです。王という権力の絶頂から何も持たぬ乞食へと転落し、さらには愛する娘からも裏切りを受けるというこの落差。
『リア王』はそんなリアの苦悩と嘆きが圧倒的な迫力でもって描かれる作品です。
しかもこの作品は単に悲劇的な厭世的な物語ではなく、苦痛の中にこそ人間の偉大さや測り知れぬ神秘があることを教えてくれます。
苦悩の中に救いがある。これはドストエフスキーにも通ずるものが感じられます。リア王とドストエフスキーのつながりについてはジョージ・ステイナー著『トルストイかドストエフスキーか』にも説かれていました。
単に苦悩が絶望になるのではなく、そこにこそ人間の奥深さがあることに目を向けたという点でもこの悲劇作品の偉大たる所以があるように私には思えました。
訳者の福田氏もこの作品がギリシャ悲劇の影すら薄くなるほどの傑作悲劇であると述べています。それほどの完成度がこの作品にはあるということなのですね。さすがシェイクスピア悲劇の最高峰です。
6 『マクベス』~「バーナムの森がダンシネインにやって来るまでは」で有名な傑作悲劇
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今作の主人公は勇猛な武将マクベス。彼は数々の武勲を上げ、王の信頼も厚い将軍です。
そのマクベスがある日荒野で3人の魔女と出会うことになります。
この魔女たちの「マクベス殿!いずれは王ともなられるお方!」という不思議な予言によってマクベスの運命の歯車は動き出すことになるのです。
あらすじにもありますように、マクベスは表向きは王に忠実な男でした。しかし心の奥底では王位を狙っていたのです。その本音が魔女たちの予言によって彼の全存在に引き出されてしまったのです。
もし本当に野心がなかったならば魔女の預言になど耳を貸さなかったでしょう。魔女の預言が頭から離れなかったのは意識的にも無意識にも彼が王位を狙っていたからなのです。
そしてマクベスは自らの城に王を招き、護衛に罪を着せて王を暗殺し、自らが王となります。
しかし、ここから彼はその地位を守るために手を汚し続けなければならなくなってしまったのでした・・・悲劇の始まりです。
クライマックスはマクベス軍と先王の息子マルコム軍との戦闘です。
この戦闘の前に不安に駆られたマクベスは再び魔女のもとへ赴き、預言を求めます。
そこで彼が得たのが有名な「バーナムの森がダンシネインにやって来るまでは」という預言だったのです。
魔女にそそのかされて王位を狙ったマクベスの悲劇、それがこの作品のメインテーマです。
ストーリー展開もスピーディーで息もつかせません。魔女の不思議な預言も絶妙な伏線となっていて、それがどう回収されるのかは本当に面白いです。
「バーナムの森が動くまでは」という言葉のインパクトも絶妙ですよね。
この作品も私の中で特に好きな作品のひとつです。ぜひおすすめしたい作品です。
7 『あらし(テンペスト)』~『リア王』と対をなす大団円!爽やかな読み心地が魅力の傑作劇!
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ここでご紹介する『あらし』は上で紹介した『夏の夜の夢』と一緒に収録されています。
『夏の夜の夢』は私にとってシェイクスピアの中で一番好きな作品で、それと一緒に収録されている今作『あらし』も同じく読みやすくて楽しい作品となっています。
この作品は弟の奸計によって地位も財産も、全てを奪われたミラノ公プロスペローが主人公の物語です。
プロスペローは元々ミラノ大公という実質国王のような地位にありました。しかし彼は政治にあまり関心を持っておらず学問の研究に没頭していました。そして元々人を疑うことを知らない善良な気質があったため、地位を狙う者からすれば隙だらけという状態だったのです。案の定その隙を狙われ弟に地位を奪われ追放されるという憂き目に遭うことになります。
そして時は流れ、弟たる現ミラノ大公やナポリ大公一行が乗る船が嵐に巻き込まれ難破します。絶体絶命かに思われた彼らでしたが奇跡的にとある島に漂着します。
そしてその島こそプロスペローの住む島であり、この嵐も漂着もすべてプロスペローの魔法によって仕組まれたものだったのでした。
プロスペローは長年の研究で魔法を使えるようになっていました。そして風の妖精エーリアルの活躍もありこの物語はプロスペローの思惑通りに進んでいきます。
プロスペローは何を求め、どんな筋書きを描いていたのか。それを私達読者は追っていくことになります。
また、『あらし』には『リア王』の悲劇がその背後に流れています。
プロスペローの境遇は娘たちに裏切られたリア王や息子に裏切られたグロスター伯を彷彿とさせます。
『リア王』ではそんな彼らが救いようのない絶望に叩き込まれて物語は終わるのですが、『あらし』ではなんと、プロスペローはその地位を回復し、さらには敵とまで和解するという離れ業までやってのけます。
「魔法を使う」という現実世界では反則的な方法を使いはするも、シェイクスピアがこのようなフィナーレを書いたというのは非常に大きな意味があると思います。ましてこの作品はシェイクスピアが単独で書いた最後の作品になります。自身の演劇人生のフィナーレにこうした物語を持ってきたというのも何とも味わい深いですよね。
『リア王』と合わせてぜひおすすめしたい作品です。
8 『お気に召すまま』~「この世はすべて舞台」の名言で有名な名作!才気煥発のロザリンドの大活躍!
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この作品はアーデンの森を舞台に才気煥発の女性ロザリンドが大活躍する物語です。シェイクスピア作品の中でも女性主人公が活躍する作品はそう多くはありません。この作品はそうした意味でも異彩を放つ作品となっています。
『リア王』や『マクベス』などの悲劇群は読んでいて正直重いです。その重さがそれらの最大の魅力でもあるのですが今作『お気に召すまま』や『夏の夜の夢』、『あらし』は非常に読みやすく明るい作品です。軽やかさがあります。
シェイクスピアの含蓄溢れる名言を味わうもよし、ストーリーの軽やかさを堪能するもよし、それこそ「お気に召すまま」です。
気軽に親しむことができるのがこの作品のありがたいところではないかと私は思います。
ぜひおすすめしたい作品です。
9 『ペリクリーズ』~ドラマチックなストーリー展開が魅力のシェイクスピア最初の傑作ロマンス劇!
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『ペリクリーズ』は『リア王』や『マクベス』などの重厚な悲劇作品を経てシェイクスピアが到達した「ロマンス劇」時代の幕開けとなる作品です。
このロマンス劇とはいかなるものか、巻末の解説では次のように述べられています。
シェイクスピアのロマンス劇という言い方をするが、ロマンスといっても、恋愛ものではない。神様のお告げがあったり、死んだはずの人が生きかえったりする伝奇的雰囲気に満ちた作品という意味だ。『ぺリクリーズ』を皮切りにして、『冬物語』、『シンぺリン』、『テンぺスト』の四つの作品が、普通、このジャンルに入る。シェイクスピアは、喜劇、最後の最後には、お伽噺のようなロマンス劇によって、そのキャリアを締めくくったのである。
なるほど、私たちが普通想像してしまう「ロマンス」とは違った雰囲気があるのがシェイクスピアの「ロマンス劇」なのですね。
このことについて訳者解説では次のようにも語られていました。
『ペリクリーズ』に始まるシェイクスピアのロマンス劇は、悪く言えば筋の運びが荒唐無稽で現実離れしている。良く言えば素朴な御伽噺ふうで、鄙びたなつかしさをそなえている。神託や魔法など超自然の要素が入るのも特徴のひとつ。
『ぺリクリーズ』は勧善懲悪の芝居でもある。今の世の中、悪いヤツほどいい目を見る傾きがある。だからこそ、私たちに必要なのはこういう素朴で真っ直ぐな物語のはず。劇冒頭のガワーの口上にもあるとおり、まさに「良きもの、古きこそ良し」である。私たちの最も強い願いは、死んだ愛する者の蘇りだろう。『ぺリクリーズ』ではその願いが叶えられる。シェイクスピアの手にかかると、荒唐無稽やご都合主義が奇跡に転じるのだ。『ぺリクリーズ』がもっと読まれ、もっとたびたび舞台にかかることを願う所以である。
たしかに『ペリクリーズ』を読んでみると、松岡さんの言葉通り、綺麗な勧善懲悪です。そして主人公たちが苦難の道を歩み、もうだめかというところで見事な大団円。これは爽快です。そして口上役のガワーの語りがまたいいんですよね。物語と物語をつなぐ絶妙な語りが読者の期待感を増幅します。
そして松岡さんが「『ぺリクリーズ』がもっと読まれ、もっとたびたび舞台にかかることを願う所以である。」と述べるようにこの作品はものすごいパワーを持った作品です。
『ペリクリーズ』を読んでみて、私はこの作品の見事さに衝撃を受けました。何度鳥肌が立ったかわかりません。
『ペリクリーズ』は悲劇時代を経たシェイクスピアが初めて書いたロマンス劇です。『リア王』や『ハムレット』など、救いのない重い悲劇作品を書き続けてきたシェイクスピアがこんなハッピーエンドの作品を書くのかと改めて驚くしかありません。
ある意味、悲劇作品によって培われた世界最強の「どん底の描写」はそのままに、勧善懲悪の最高に爽快な大団円が待ってるのですから面白くないわけがありません。「どん底」を極めたシェイクスピアならではの新たな伝家の宝刀がここに誕生したのです。これは強い!悲劇のどん底が深ければ深いほど復活の大団円は喜ばしいものになります。シェイクスピアは作家人生の晩年でとんでもない武器を手にすることになったのでした。
『ペリクリーズ』は私にとっても強烈な印象を残した作品になりました。これは面白いです。ぜひぜひおすすめしたい作品です。
10 『ジュリアス・シーザー』~カエサルの名言「ブルータス、お前もか」で有名な傑作
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“おれはシーザーを愛さぬのではなく、ローマを愛したのだ〟高潔な勇将ブルータスは、自らの政治の理想に忠実であろうとして、ローマの専制君主シーザーを元老院大広間で刺殺する。民衆はブルータスに拍手を送ったが、アントニーの民衆を巧みに誘導するブルータス大弾劾演説により形勢は逆転し、ブルータスはローマを追放される……。簡潔、明皙な文体で、脈々と現代に生き続ける政治悲劇。
このあらすじを読んで「あれ?」と思われた方も多いかもしれません。
私も初めて読んだ時そうでした。
タイトルは『ジュリアス・シーザー』なのに主人公はブルータスかのような流れです。実際この作品を読んでみるとシーザーの出番はそうは多くなく、ブルータスがメインとなっていきます。
実を言いますと私はこの作品に一度挫折しています。
話の筋が全く見えず、何がなんだかわからないまま話が進み、物語に入り込めなかったのです。
そんな時に読んだのが阿刀田高氏の『シェイクスピアを楽しむために』という本でした。
この本を読んでから改めて『ジュリアス・シーザー』を読んでみるとこれが面白いのなんの!この本ではこの作品の時代背景や物語の流れをわかりやすく解説してくれています。
これがあまりにも素晴らしかったので少し長くなりますがこれからご紹介していきます。
ヨーロッパ史に名を残す英雄を挙げよ、と求めたら、ナポレオン、アレキサンダー大王、そしてシーザー、この三人はかならず上位を占めるにちがいない。日本でもよく知られたビッグ・ネームズである。
三人とも名言を残している。
ナポレオンは、「余の辞書に不可能はない」と豪語し、エジプト遠征では「ピラミッドの頂上から四千年の歳月が私たちを見ている」と告げて兵士たちの士気を鼓舞した。アレキサンダーもまた参謀から夜襲を勧められたとき「私は勝利を盗まない」と恰好よく拒否し、臨終の床で後継者を尋ねられ「もっとも強い者へ」と呟いて息を引き取っている。
しかし、この点では、なんと言ってもジュリアス・シーザーが際立って優れている。「賽は投げられた」と不退転の決意でルビコン川を渡って政治の中枢になぐり込みをかけ、小アジア戦線からは「来た、見た、勝った」と簡潔な書簡を送り、最後は「ブルータス、お前もか」と嘆いて暗殺されている。雄弁家であり、文筆家としても一流であった。
「賽は投げられた」、「ルビコン川を渡る」、「来た、見た、勝った」、「ブルータス、お前もか」
これらを見てピンとくる方もおられると思います。
私自身、ジュリアス・シーザーという名ではピンと来なかったのですが、この人物のローマ式の本名はと言いますと、ガイウス・ユリウス・カエサルとなります。ローマ字表記ですと、JULIUS CAESAR。これの読み方の違いがジュリアス・シーザーとユリウス・カエサルという違いなのですね。
なるほど、カエサルと聞くと「あぁ、そういうことか」となる方も多いかもしれません。
こうした背景がわかるとこの作品が一気に面白くなってきます。
『ジュリアス・シーザー』は私の中でも強烈な印象を残した作品でした。あらすじや背景を知ってから読むと最高に面白い作品でした。非常におすすめです。
11 『アントニーとクレオパトラ』~シーザー亡き後のローマ帝国が舞台!愛に溺れた男の栄枯盛衰の物語
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『アントニーとクレオパトラ』は上で紹介した『ジュリアス・シーザー』の続編にあたる作品です。
前作でのアントニーの活躍は凄まじいものがありました。彼の名演説は聴く者を熱狂させる圧倒的なものでした。彼の有能な政治家ぶりがまざまざと感じられるシーンで、これは私にとっても非常に印象に残ったのでありました。
そして今作『アントニーとクレオパトラ』はそんな有能な政治家アントニーが主役の物語なのですが、前回とは打って変わってダメダメなアントニーを目の当たりにすることになります。
なぜあんなにも有能だったアントニーが運命の坂道を転がり続けるのか、その原因が何を隠そう、クレオパトラなのです。
この作品は『ジュリアス・シーザー』からの流れで読んでいくと、ローマ帝国の壮大な栄枯盛衰を感じられて非常に面白い作品となっています。ぜひ『ジュリアス・シーザー』とセットで読んで頂きたい名作です。
12 『ヘンリー八世』~世継ぎを求め苦悩する王と側近たちの栄枯盛衰。エリザベス女王誕生までの物語
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ヘンリー八世は1509年から死去する1547年までイングランド王として在位した実在の人物です。
そして男の世継ぎを生めなかったキャサリン妃との離婚問題からバチカンと対立しそのままイギリス国教会を設立したという、イギリス史においても屈指の重大事件を巻き起こした人物でもあります。
ちなみにキャサリン妃との間に生まれたメアリーは血まみれのメアリーと呼ばれるあの女王ですし、二番目の妻アン・ブーリンとの間に生まれたのがイギリス繁栄を導くエリザベス女王になります。
今作『ヘンリー八世』ではそんな彼の離婚問題を中心に王の苦悩と側近たちの栄枯盛衰の物語が語られることになります。
番外編 シェイクスピアのマニアックなおすすめ作品10選
今回の記事で紹介している作品は『ハムレット』や『リア王』など王道中の王道がメインで、誰もが知る傑作がそのほとんどを占めています。
ですがシェイクスピア作品はそれだけではありません。
シェイクスピアはその生涯で40作品ほどの劇作品を生み出しています。日本ではあまり知られていない作品の中にも実はたくさんの名作が隠れています。
この記事ではそんなマニアックなシェイクスピアおすすめ作品を紹介していきます。
そのリストがこちらです。
『タイタス・アンドロニカス』
古代ローマを舞台にした初期の隠れた名作!『ジョン王』
イングランド史上最悪の王の史劇!『ペリクリーズ』
ドラマチックなストーリー展開が魅力の傑作ロマンス劇!『シンベリン』
シェイクスピア後期の波乱万丈のロマンス劇『ヘンリー四世』
ハル王子とフォルスタッフ、名キャラクターが生まれた歴史劇『じゃじゃ馬ならし』
意地悪で頑固な長女と伊達男の大舌戦!言葉の喜劇!『恋の骨折り損』
恋愛禁止条例を発令した当の男たちが恋に振り回される喜劇『ヘンリー六世』
悲惨な内乱、薔薇戦争を描いたシェイクスピアのデビュー作『リチャード三世』
恐るべき悪のカリスマと運命の輪。初期の傑作史劇!『終わりよければすべてよし』
シェイクスピアの皮肉がピリリと効いた問題劇
※『ペリクリーズ』は本記事でも紹介しましたので重複しています。
王道作品とも異なる刺激的な作品揃いです。ぜひご参照頂ければ幸いです。
番外編 シェイクスピアおすすめ解説書一覧~知れば知るほど面白いシェイクスピア!演劇の奥深さに感動!
当ブログではこれまで様々なシェイクスピア作品や解説書をご紹介してきましたが、この記事ではシェイクスピア作品をもっと楽しむためのおすすめ解説書をまとめています。
それぞれのリンク先ではより詳しくその本についてお話ししていますので興味のある方はぜひそちらもご覧ください。
おわりに
以上、この記事では12作品+αをご紹介しました。『ハムレット』や『リア王』、『マクベス』、『オセロー』、『ヴェニスの商人』など有名どころ以外にもこれほどたくさんの魅力的な作品がシェイクスピアにはあります。
また、『トロイラスとクレシダ』、『ウインザーの陽気な女房たち』など今回惜しくも紹介できなかった作品もまだまだあります。当ブログではそれらについてもご紹介していますのでぜひそちらもご参照頂ければと思います。
シェイクスピア作品は四大悲劇はもちろん、王道以外の作品も面白い!これは間違いないことです。ですがなかなかそれらの作品に触れることというのは難しいというのも実情だと思います。私も全作品を読んでみようと思うまでかなりの時間を要しました。
ただ、実際に全作品を読んでみて、その面白さやシェイクスピアの変遷について改めて知れたのは本当にありがたいことだったなと感じています。そしてこうしたシェイクスピアの読書を通じて、実際に演劇の場に何度も足を運ぶことが増えたのも私にとって大きな体験となりました。
特に現在吉田鋼太郎さんが率いている「彩の国シェイクスピア・シリーズ」と出会えたことは何よりの幸せでした。『ヘンリー八世』では号泣し、『ジョン王』の言葉は観劇後今なお胸に刺さり続けています。
これからも機会があればぜひシェイクスピアの演劇を見続けたいなと強く思っています。
この記事がシェイクスピア作品とのご縁に繋がりましたら何よりでございます。
以上、「シェイクスピアおすすめ作品12選~四大悲劇など観てよし、読んでよしの名作をご紹介」でした。
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