高田農場さんから学んだ”沖縄と食文化”
食文化ってなんだ?
みなさん「食文化」と聞いたときどんなことを思い浮かべますか?
食べ物の文化? アジアがお米で西洋は小麦なこと?
料理のこと? 中華料理と日本料理?
食べる作法のこと? ナイフとフォーク、日本はお箸?
私の認識は「日本の日本料理!中国の中華料理!フランスのフランス料理!世界各国のその土地の料理を食文化と呼ぶんだろうな!」
というものでした。
浅い認識ですが、そのくらい
「日常にある”食“」と「文化」がかけ離れていたんです。
そんな私が、、
沖縄で大学生をしているのですが教授の勧めで
『D design travel 沖縄 ニッポンフードシフト特別編集号』の存在を知り、
学生編集員として参加しました。
海外出身の友達に沖縄のことを聞かれた時、
22年も住んでいる地について何も知らない自分自身の現状に気づいたこと。
それが学生編集員に応募したきっかけです。
学生編集員って何したの?
事前課題の中で沖縄の食文化や課題と現場について学び、
その後、実際に沖縄で活動している農家さんの畑を訪ね
農家さんへインタビューを行い
そのお話を実際に書いて記事にしました。
私が取材したのは、
高田農場という農家さんでした。
高田さんのお話すごく面白かったんです、、、。
今日はそのお話をします〜^ ^
高田農場ってどんなとこ?
高田農場は、
沖縄県 今帰仁村 にある
畜産農家さんです。
お父さんの高田勝さんは
農業の研究者や 動物園の園長さんなど
面白い経歴を持っている方で
今現在は
島豚・島山羊・ファートゥーヤー(沖縄の在来地鶏)など
沖縄の在来種の飼育に取り組んでいます。
息子さんの茂典さんと明典さんは
和牛の繁殖農家をしています。
さてさてどんな畜産業を行なっているのでしょうか。
いざ髙田農場へ!
髙田農場があるのは山の中
山道をぐんぐん上って
辿り着いた景色がこちら!!
バナナ畑??
と錯覚するほどたくさんのバナナの木が並んでいました。
このバナナの秘密は後ほど、、、
バナナの木の連なる向こうにやっと
畜舎が見えました。
畜舎の様子がこちら
こちら島豚の畜舎。
みなさんお気づきですか?
すごくすごく綺麗な畜舎だったんです。
高田さんの毎日毎日の丁寧なお手入れが一瞬で想像できたのでした。
そんなこの畜舎で髙田勝さんのインタビューを行いました。
在来種のおはなし
高田勝さんは在来種を育てています。
在来種の豚、
在来種の山羊、
在来種の鶏、。
その中でも
勝さんの育てる島豚
「今帰仁アグー」は、
沖縄の在来種である「アグー」ほとんどが
在来種の雄と西洋豚の雌との配合であるのに対し、
雄雌どちらも在来同士の交配で生まれ、
より固有種としての血統が高い豚になっています。
なぜ在来種にこだわるのでしょうか?
その1
在来種へのこだわり〜種として〜
西洋豚は一度に多くの子供を産み、
成長スピードも早く
効率がすごくいい種です。
対して在来豚は一度に産む子の数も少なく、
体も小さく、成長スピードも遅く
飼育コストのかかる種です。
そんな中で勝さんは
「生物に必要なのは多様性だ」こう語っていました。
西洋豚は画一性があるため、
同じ病気にかかりやすい。
在来豚は小さな体で
少ない餌でも生き抜き、生存能力が高い。
この先何があるかわからない
世界情勢の中を
生産性や経済効率だけが良い農業と言えるのか。
そのようなメッセージのある言葉でした。
勝さんの畜産は
100年後生き残るための手段として、
種の保存として、の
在来種畜産であったのでした。
しかし在来種へのこだわりは
種の保存という事だけが
目的ではありませんでした。
その2
在来種へのこだわり〜文化として〜
沖縄では
旧盆や清明祭などの
御願行事というものがあり、
そこでは
「御三味(うさんみ)」と呼ばれる
重箱料理を供えます。
御三味には
・天を飛ぶ鳥
・地を駆ける豚
・海を泳ぐ魚
を用いた料理を詰め、
神様に供えた後は家族で食べるのです。
そのお供物には
風水や五行の考えに基づいて
白色ではない家畜が用いられていました。
写真のように在来豚であるアグーは黒色です。
つまり沖縄の伝統文化である
御願行事において
なくてはならない
存在だったです、、
ちなみに
勝さんは今でも
沖縄の伊是名玉御殿に
供えられる贄として
自身の今帰仁アグーを提供しているそうです。
食文化ってもしかして…
私にとってこれまで当たり前だった
御三味の重箱料理が
今まで全く知らなかった
アグーという存在と、
御三味との関係性を知ることで、
先祖の食事が
現代に文化として繋がれ「食文化」となる様子を
想像すると、
自分自身の日常の中に「食文化」が存在していること。
= 自分の普段の食事も「食文化」を形作っているんだ。
と考えるようになったのです。
そう考えるようになると、
無意識に食するだけだったいつもの食事というものが、
意識して考えるべきものと変わりました。
「何を食べるか」
「何を作るか」
「食材・食料は何を選ぶか」
「その食材はどんな基準で選ぶか」
「育て方で違う味、育てた場所で違う値段」など、
「食べる」を考えると、
自身の生活や価値観を再認識したいり、
今まで見えなかった農家の存在を感じたり、
スーパーでの買い物の時間が
すごく楽しいものになりました。
これから
今回の『D design travel 沖縄 ニッポンフードシフト特別編集号』に
学生編集員として参加したことで
日本の食料自給率の低さに伴う
課題を知り、
取材で自分自身の「食」に対する考えが
成長しました。
しかしそれと同時に「考える」だけでは、
食料自給率の低さという課題の解決には
繋がらないとも感じました。
実際に小さなことでも行動に移すこと。
それが積み重なることで、少しずつ変化が生まれると感じます。
そう考えるようになってから生まれた私の変化の中に
スーパーでの買い物で、
傷がついていても味に変わりはないので
積極的にそのような商品を選ぶことや、
値段は高くても買い物の中で一個は国産のものを買う
などの行動が生まれるようになりました。
最後に
冒頭の高田農場の取材の様子でお話した、
畜産農家と思えない程
沢山のバナナの木の秘密。
そちらも沖縄の文化の根付きを表したものでした。
昔の沖縄の家屋の後ろには、
豚小屋がありました。
排泄物や残飯の処理をするためです。
そして一年かけてこえた豚を、
行事のお供物として捧げるというものだったそうです。
さらに豚の排泄物はバナナの肥料として活用されていました。
そして最後に実ったバナナを人が食す。
こうして食は、食文化は循環しているのです。
高田農場の先人の知恵を生かして
生活を作る暮らしには
素直に感激したのでありました。