たけくらべ・にごりえ


「たけくらべ・にごりえ」 樋口一葉

これほど美しい文学を今まで読まずにいたことは人生の大きな過失でした。文語体なので主語がなく場面の切り替わりが急なので多少まごつきますが、現代文でこの繊細な筆致を堪能することはできなかったでしょう。

・たけくらべ
フィリップ・アリエスの「子どもの誕生」のように、当時の日本も子どもって観念はなかったんじゃ。年端をいかないうちから奉公に出て、居住地区間の争いがあり、当然のように運命を受け入れる。あどけない子どもたちと思いきや、初潮を迎え遊女の将来を悟ったり出家したりの登場人物の境遇、心情を推測するのが難しかったです。
最後の1ページ、慈愛と悲壮と諦観がちりばめられたこんな美しい文章があったのかと感動しました。

・にごりえ
情死する男がどうしようもなくて情けない。。お力さんは最期何を思ったのかしら。濁水の中を生き、自分は幸せになれないわと諦めの女性だったけど、心中であれ一方的に殺されたのであれ死の間際彼女の命は一番輝いたのではないかなと。

・十三夜
「当時の貧困ってロクな人生送れないな」と二作読んで感じたあとのラスト作品。お関さんは美登里や力と違って資産もそこそこな家の人妻だし、両親も健在…けれど彼女の孤独感や悲哀は先の女性に負けず劣らず。DV夫から逃げ出したものの子ども可愛さに心を鬼にし、流れに棹さす生き方しかできない当時の女性たちのうらめしさ。

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