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アバンギャルドな漆作家 杜野菫さんの漆と人生の話 前編 #005

こんにちは、「ニュー民藝」編集部です。

今般は、アーティストで、工芸作家の杜野 菫(もりの すみれ)さんにお話をお伺いすることが叶いました。

杜野菫さんは、素晴らしい作品をたくさん生み出されています。 

こちらは、ご在学中の京都伝統工藝大学校の卒業制作として、『雪中用漆具三式』というご作品です。

漆との出会い

杜野さん:
おばあちゃんちには昔から漆塗りのものが結構あったんです。ちゃぶ台とか、普段づかいのお椀や、お箸が漆塗りだったりして、特別大事に扱うとかもなくて、普通に使ってましたし。

だけどすごいかっこいいものだとは、ずっと思ってて。

朝起きられない

で、私が工藝の道に進んだ理由なんですけど、小学生くらいの頃からちょっと体調を崩しやすくなって、自律神経の影響で朝起きられなかったり、体調が悪くて学校に行けなかったりしたんですよね。小学校の頃から、不登校気味というか、行ったり行かなかったりを繰り返していて

くじら蒔絵のルーツ

そんな中で、中学ぐらいからふと絵を描き始めたんです。

本当に何も考えずに、ふっと描き出した絵なんですけど。
学校に行かずに家でずっと絵を描いていたんですよね。

ただ、絵を描くことって結構面白くて。

そしたら、周りの人が「いいね!」って言ってくれるようになって。頼まれて描くこともあったりして、「あ、これって自分に向いてるのかも」って思い始めたんですよね。

例えば、右下のくじらの絵とか、真ん中の金魚の絵とか、ここにあるのは全部、中学の時に描いたものなんです。何も考えずにただ描いていたんですけど、気づいたらこうやって形になっていて。

工芸の道を志す

ある時、親が「これ、面白そうじゃない?」と大学のパンフレットを渡してくれました。それを見て、「へえ、こういう学校があるんだ 面白そう」と思ったんですよね。

自分が不登校だった理由にも、朝がすごく弱いのと、集団行動が苦手で、あまり社会に適していない人間だなと昔から感じていました。

でも、漆工藝作りたいものをゼロから作り、最後まで自分ひとりで完結できる。他の工藝ではあまりないんですよね。

例えばプラスチックのものを作る場合、素材の段階から多くの人が関わる必要があります。でも、漆工藝なら一人でできて、なんなら一部屋あれば作業がすべて終わるんですよ。

自分で完結できるって素晴らしくないですか?

しかも、それを生活に使えるんですよ!

漆だったら何にでも塗れて、なんだってつくれるんです。生活用品だって、アート作品だってつくれるんですよ、すごくないですか!

漆だったら、なんだってできる。

漆ってかっこいい!  1万年に渡り、イケてる。

「ニュー民藝」編集部謹製のショート動画です。 

工藝ってかっこいいんだよ』を届けたい

私が発信したいのは、「工藝ってかっこいいんだよ!」ということをまだ知らない人たちに「こんなこともできるんだよ!」って伝えたかったんです。

工藝に興味がなかった人が、「え、こんなことできるの?」と驚いてくれる。

そういったところに、今回の作品の価値があると思っています。

だからこそ、この作品をそういう人たちに届けたかった。そして実際に、想像以上に大きな反応をもらえて、本当に嬉しかったんです。

それは私にとって、一つの「問いかけ」でもありました。自分の工藝がすごいとか、そういうことではなくて、ずっと一人で考えてきたことに対して、何かしらの答えやヒントをもらえたような気がします。

「これでいいんだ」と思える足がかりをもらえた。それが何よりもありがたかったんです。 

なんてアツい想いを持った素敵な方なんや。

編集部一同

後編に続きます!

後半戦もこの熱量が続きます!

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