宇宙瞑想:“宇宙は永遠か?”について考える
宇宙は我々にとって絶対的な空間です。その存在は疑う余地もなく、無限とも思える広さを持っています。では宇宙は“永遠に変わらない普遍的なもの”なのか、それとも“大きくなるのか小さくなるのか”、”出現したり消滅したりするのか”、これらについて科学的、形而上学的に考えてみたいと思います。
既にご存知の方もいるかもしれませんが、調べればすぐに“宇宙の年齢は〇〇◯億年”、だとか“宇宙の誕生はビッグ・〇〇”という情報も出てくると思います。一旦これらを忘れ、これらがどのように導かれるのか一緒に考え、他の一切の日常を忘れて宇宙のことのみを考える「宇宙瞑想」をやっていきましょう。
「宇宙は変化し続けているのか?それとも永久不変なのか?」
・初めに星との距離を調べてみる
まずは宇宙を調査してみようと天文学者は考えますが、我々人類は地球から外には行けません。太陽系内の惑星にすら行くことが出来ないレベルの科学技術なので宇宙の情報を得るには“観測する”以外に方法はありません。最も分かりやすい観測方法は天体望遠鏡で星を見ることです。やはり目に入るのは夜空で輝く星、太陽のように光を放つ“恒星”です。これらは我々の生きている期間で見ると、季節によって常に決まった方角に現れ、その位置も輝く強さも不変であるように見えます。このような星々との距離や位置関係が分かれば宇宙のことが少しでも理解できると天文学者たちは考えました。
星の光を観測すると、近い星ほど光が強く明るく見え、反対に遠い星は光が弱く暗く見えます。ただし、星の本来の大きさや明るさはそれぞれ異なるので、明るさが同じに見える星でも“近くにある小さく暗い星”なのか、“遥か遠くにある巨大で明るい星”なのか、“光の強さだけでは距離を計測できない”という問題点があります。この問題をどのように解決したのでしょうか。
・足掛かりとなる“セファイド変光星”
ここで宇宙には面白い性質を持つ星の存在が確認されていました。セファイド(ケフェイド)変光星と呼ばれるタイプの星で、一定の周期で明るさが変わることが知られています(図2、*1, *2, *3)。明るさが変わる理由は星全体が膨張と収縮を繰り返す振動運動のためと言われています(*4)。そして、その“変光周期”と“絶対等級”をグラフにプロットすると図2Bの様に同じタイプの恒星では一定の相関関係があることが明らかになりました。これによって“その星の真の明るさ(絶対等級)”が求められます。
・真の明るさ(絶対等級)から分かること
その星の“真の明るさ(絶対等級)”が分かれば、地球から観測できる明るさ(見かけ上の等級)でどれほど離れた星なのかが分かります。図3に示されるように各々の恒星は地球で観測される“見かけ上の等級”がありますが、変光星では“真の等級”を求めることでその星との距離をある程度正確に求めることが可能となります(*5, *6)。
・様々な星や銀河の距離を調べて分かった法則
上に書いた通り、“変光星の周期”や“その星の地球から見た明るさ”が分かれば距離が分かります。それによって次のことが分かってきました。
・ほぼ全ての天体は静止しているのではなく、地球から遠ざかって動いていた
・地球から遠くにある天体ほど、速い速度で地球から遠ざかっていた
というような、当時としては予想外な現象が発見されました。これは図4のグラフを見ると分かりやすいですが、地球からの距離(横軸)が大きな星ほど、遠ざかるスピード(縦軸)が大きいことが分かります(*7)。この法則はハッブル(=ルメートル)の法則(*8)と呼ばれていますが、恐らく誰でも一度は聞いたことがある有名な「ハッブル宇宙望遠鏡」のハッブル氏です(*9)。
・全ての天体が地球から遠ざかっている?
宇宙の星々は広い宇宙の中にある程度均一に散らばっているはずです。それぞれが独自の方向に運動していることは考えられますが、“全てが一点から遠ざかっている”ことはあり得るのでしょうか。例えば、「大きな湖の中の数千匹の魚を観察したら全ての魚が一点から遠ざかる方向へ泳いでいた」と同じような現象と考えられますが、偶然でこのような現象が起こるとは考えにくいです。これらを説明する説として考えられたのが「宇宙空間そのものが膨張・拡大している」のではないか、というモデルです(図5)。確かに“空間そのものが膨張している”ならこれらの現象も説明が可能です。また、「遠く離れた天体ほど速い速度で遠ざかっている」という現象も「宇宙空間自体の膨張」を裏付けています。
・膨張する宇宙から導かれたハッブル定数
図4のように遠く離れた天体(銀河や恒星)の“距離(D)”と“遠ざかる速さ(v)”の関係はほぼ一定の比例関係であり、以下の式1で表されます。
v = H(0)D ・・・(式1)
H(0)はハッブル定数(*8)と呼ばれるものでその単位はkm/s/Mpc(キロメートル/秒/メガパーセク、1Mpc=約326万光年)です。このハッブル定数はまだ完全ではなく、宇宙の観測精度が上がるにつれて年々少しずつ変わっていますが、最近の2017年の発表では“70.0(km/s/Mpc, *10)"という値が得られています。これは「地球から1メガパーセク(約326万光年)離れた天体は70km/秒のスピードで遠ざかっている」ことを意味しています。このハッブル定数はまた後ほど使用します。
・“宇宙が膨張する速度”が分かると何が求められるか
このハッブル氏が分析した“宇宙空間自体が膨張している”という事象から推測できることは、逆に考えると“離散する銀河や恒星は過去に遡るとお互いに近付いていく”ことを示しています。そして、図6に示すように“全ての天体は時間的空間的にある一点に収束する”ということが推測できます。“地球とある天体の距離”と“離れる速度”が分かっていて、“元々は同じある一点から発生した”と考えられています。そうすると“宇宙が始まった瞬間”、“全宇宙の全てのものが凝集していた特異点”までの時間が計算できます。先程の式1は以下の通りです。
v = H(0)D ・・・(v=“速度”、D=“距離”)
そして誰もが知っている公式を以下に示します。
“速度”=“距離”÷“時間”
この関係から、
“時間”=1/H(0)
つまりハッブル定数の逆数が“宇宙の始まりの特異点から現在までの時間”であることが分かります。
・ハッブル定数の逆数“1/H(0)”を計算してみる
ハッブル定数の単位のMpc:メガパーセクをkmに直して分子分母から外します。スマホやPCでもできるので時間のある人は計算してみてください。
H(0) = 70.0 (km/s)/Mpc [1Mpc=326万光年、1光年=約9兆5000億km]
=70 / (326,0000×9,5000,0000,0000) = 1/(4424×10^14) (/s)
求めたH(0)の逆数を導きます。
1/H(0) = 4424×10^14 秒 = 140.188×10^8 年 = 約140億年
[1年=60秒×60分×24時間×365.25日=31557600秒]
するとこのように約140億年という時間が現れました。実際には宇宙の加速膨張(*11)という概念があり、最近(2013年)の解析では宇宙年齢は約138億年とされています(*12)。
・宇宙は「永遠」ではなかった
タイトルに戻りますが、我々人類にとっては宇宙は常に“不変”であり“永遠不滅の時空”であるように考えられていました。但し実際には、“常に変化し続け”ていて、“ある瞬間から始まった”ということが分かってきました。“永遠”とは“始まりも終わりも無い”、“時間という概念さえ無い”、“生まれることがなく滅びることもない”絶対的な存在のものと言えます。そうなると「宇宙は永遠か、永遠ではないのか」という問いに対しては「宇宙は始まりがあった=永遠ではなかった」と言えそうです。そして「宇宙は無限か有限か?」という問いには「宇宙の果てまで行かないと分からない」とも言えますが、これまでの理論からすると「宇宙は有限の空間である」ということが言えそうです。ということは更なる疑問が出てきます。
・「宇宙が始まる前は“何”があったのか?」
これは残念ながら“科学”では解明できません。何故なら、現代科学は“光”、“時間”、“距離”、“質量”といった「測定可能なもの」しか扱えないという根本的な“限界”があるからです。膨張する宇宙の外部の領域には恐らく “物質”も“空間”も“時間”も“無い”、“真空すらも無い”ということが言えます。これらの“科学で扱えない領域”には別の学問が必要です。それは“形而上学(けいじじょうがく)”という形の無い領域を扱う学問になります。“科学を究める”ほど“科学的でない領域の存在が確定的になる”ということは興味深いパラドックスです。但し形而上学から見ると至極当然のことかもしれません。
形而上学というと科学よりも難解で日常生活では触れる機会が無さそうに考えがちですが、形而上学的なツールは実は我々に最も身近なところに存在します。その一つは“我々の意識”です。「我々は科学的なものしか認知していない」と思いがちですが「あなたの意識を科学的に計測できますか?」と聞かれてその方法や単位を答えれるでしょうか。また“意識”が科学的物質世界に影響を与えることも証明されてきています(*13, *14)。そのツールを磨き、感度を上げ、強度を高める方法が「瞑想」です。“宇宙を超える領域”へ想いを巡らす偉大な科学者達の探究心や想像力も「瞑想」と同じ脳の使い方だったのかもしれません。“科学を知る”ことを通じて“科学的ではないものを認識する”、これも瞑想法の一つです。日々の瞑想で脳と意識を活性化していきましょう。
(著者:野宮琢磨)
野宮琢磨 医学博士, 瞑想・形而上学ガイド
Takuma Nomiya, MD, PhD, Meditation/Metaphysics Guide
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。
*1. Barry F. Madore and Wendy L. Freedman. The Cepheid Distance Scale. 1991 PASP 103 933. DOI 10.1086/132911
*2. 国立科学博物館HP. https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/galaxy/galaxy05.html
*3. ケフェイド変光星−Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/ケフェイド変光星
*4. セファイド−天文学辞典 https://astro-dic.jp/cepheid/
*5. ESA- The European Space Agency. https://sci.esa.int/s/8ZkRKOA
*6. パーセク- Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/パーセク
*7. Hubble E. A Relation between Distance and Radial Velocity among Extra-Galactic Nebulae, Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 15, no. 3, pp. 168-173, 1929. https://doi.org/10.1073/pnas.15.3.168
*8. ハッブル=ルメートルの法則−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハッブル%3Dルメートルの法則
*9. ハッブル宇宙望遠鏡−Wikipedia.
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハッブル宇宙望遠鏡
*10. The LIGO Scientific Collaboration et al. “A gravitational-wave standard siren measurement of the Hubble constant” (英語). Nature volume 551, pages 85–88 (2017) https://www.nature.com/articles/nature24471
*11. Garnavich PM, et al. "Constraints on cosmological models from Hubble Space Telescope observations of high-z supernovae" Astrophysical Journal 493 (2): L53+ Part 2 Feb. 1 1998
*12. PAR Ade et al. Planck 2013 results. I. Overview of products and scientific results. arXiv:1303.5062 [astro-ph.CO], https://doi.org/10.48550/arXiv.1303.5062
*13. 「意識」が物質を変えることを証明:二重スリット世界規模実験
https://note.com/newlifemagazine/n/n19342d9a4f56
*14. 「観る」ことで「現実が変わる」?:二重スリット実験https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a
画像引用
https://wallpaperaccess.com/outer-space#google_vignette
https://sci.esa.int/s/8ZkRKOA
https://en.wikipedia.org/wiki/Galaxy#/media/File:Probing_the_distant_past_SDSS_J1152+3313.tif
https://wallpapersafari.com/w/q9K4rY#google_vignette
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