見出し画像

瞑想と星の力で抗炎症作用と免疫力アップ

前回の記事では「瞑想と真逆のストレス状態では炎症物質が増加する」そして「炎症物質合成のキーとなる物質がNF-κB (エヌエフ-カッパビー:Nuclear Factor-kappa B)」という転写因子(DNAからタンパク合成を促す物質)でした (*1)。

おさらいするとNF-kBはもともと炎症反応や細胞増殖、血管新生など様々な遺伝子を調節している物質です (Figure 1A)。その中で今回は特にNF-kBの炎症反応 (Inflammatory response) に対する作用に注目して解説していきます。

このNF-kBという物質はFigure 1Bにあるように活性化されることで細胞核の中に移動して様々な遺伝子/タンパクを合成し始めます (*10)。本来は防衛のために白血球からインターロイキン(IL-1、IL-6、IL-8、等)やTNFαといった炎症誘発物質を合成し、炎症を増加させます (*2)。しかし前回の記事で解説したように精神状態がストレスで良くない状態の場合はこれらの免疫反応が暴走し、“実際に不要な炎症が起こり、痛みの悪化や風邪の悪化、発熱などを起こしやすくなる”ということがわかりました (*1)。

そこで今回は「“瞑想”で炎症物質を抑えたり風邪を予防できたりするのか?」それとも「これらは精神論に過ぎないのか?」というところを科学と形而上学の視点で掘り下げていきます。


・瞑想×NF-kBを検証した研究

今回紹介する研究は“Yogic meditation reverses NF-κB and IRF-related transcriptome dynamics in leukocytes of family dementia caregivers in a randomized controlled trial (ヨガ瞑想は家族介護者のNF-κBおよびIRF関連の遺伝子発現を逆転させる:ランダム化比較試験, *3)”というもので2013年に公表された研究です。

研究のデザインとしては“家族に要介護者がいる人から参加希望者を募り、瞑想グループと対照群(リラクゼーション音楽鑑賞)に分けて効果を比較する”というものです。なぜ“家族に介護者がいる人”が選ばれたかというと、やはり“病人や認知症患者の介護はストレスが大きい”ということが報告されており、一般人に対して介護者は“炎症物質の増加や免疫力の低下”も報告されているからです (*5, *6, *7)。つまり、“もともと心身共にストレス度の高い人たち”を選んで“瞑想の効果と単純な音楽鑑賞の効果を比較する”という目的があります。


45人の介護者がランダムに振り分けられ、最終的に39人のデータ(瞑想群23人、対照(音楽鑑賞)群16人)が解析されました。研究デザインは“ランダム化比較試験 (Randomized Controlled Trial: RCT)”という客観性の高いデザインで行われています。

・介入方法

瞑想群で用いられた方法はキルタン・クリヤ瞑想 (Kirtan Kriya Meditation: KKM, *7)というものでクンダリーニ・ヨガ瞑想の一種です(後述)。詳しくは後ほど紹介しますが、簡単に説明すると”座禅のような瞑想を1日12分間行い、8週間継続する”という内容です (Figure 2)。静かなトーニング(発声)もありますが、短時間で簡単にできる瞑想法です。

これに対して対照群では“毎日12分間リラクゼーション音楽を聴き、8週間継続する”というものです。こちらは特にやり方などなく決められた時間に音楽を聴くことだけを実践しました。



・比較項目

8週間の処置の前後で対象者の血液(白血球や免疫細胞)を採取して、瞑想グループと対照グループでの遺伝子発現解析が行われました。(発現遺伝子はTELiS 転写因子検索エンジン(*8)によって解析され、2(瞑想群×対照群)×2(介入前×介入後)の共分散分析(ANCOVA: Analysis of Co-Variance)で統計分析されました。)

・実験結果:NF-kBの明らかな減少

Figure 3Aに瞑想群と対照群(介入前後)を比較したグラフが示されています。この解析では前回の記事でも紹介された転写因子“NF-kB”が瞑想群において明らかに低下していることがわかります (p=0.0065: p値が小さいほど統計学的に有意)。これによって炎症を引き起こす物質の合成が抑えられています。その結果として腰痛や肩凝り、頭痛、発熱といった体調不良を予防改善できることを示唆しています。

もともと対象者は介護に従事している人たちでどちらの群も同じ程度に長期的なストレスに曝されていたはずです。同じ条件でありながらこれほど明確に差が出たのは瞑想の効果が高いことを表しています。逆にいうと“ただ自宅でリラックス音楽を聴くことと瞑想で得られる効果は明らかに異なる”ということを示唆しています。


・結果2:免疫力に関与するIRF1とは

Figure 3AでNF-kBの上に示されているのが IRF1 (インターフェロン反応因子1: Interferon Response Factor 1)という物質です。これもNF-kBと同様にさまざまな遺伝子合成を調節している転写因子です (*9)。こちらはNF-kBと対照的に瞑想群において明らかにIRF1が増加しています (p=0.04)。Figure 3Bに示されるようにIRF1はウイルス感染の際にウイルスDNAの合成を阻害する物質の合成に関与しています。

IRF1が増加するとウイルスの増殖を阻害する遺伝子を活性化させます。つまり、風邪などのウイルス性疾患にかかりにくくなる、またはウイルス感染を起こしても重症化を予防することができる=免疫力アップの効果が期待できます。

・実際に増加/減少した遺伝子群

Figure 4に介入の前後で有意に増幅 (Up-regulated:赤) した遺伝子群と減少 (Down-regulated:青) した遺伝子群の一部を提示しています (*3)。

増幅した遺伝子としてIRF1に関連した遺伝子として“IGJ (Immunoglobulin Joining polypeptide)”や“IGLL3 (Immunoglobulin lambda-like polypeptide)”というものが挙げられます。これらは名前が示すように免疫グロブリン抗体 (Immunoglobulin)産生に関与しており、抗ウイルス/抗細菌性の免疫力増加に寄与しています。

さらにFigure 4で減少 (Down-regulated:青下線) した遺伝子群を見ると、IL-8 (インターロイキン8)、やJUN、FOSBといった炎症誘発物質やNF-kB活性に関連した物質の合成が低下しています。これにより瞑想が精神安定だけではなく身体的な炎症や発熱の予防につながっていることがわかります。


・今回の研究のまとめ

 ・1日1回12分の瞑想を8週間続けたらNF-kBの発現が明らかに低下した
 ・瞑想群ではNF-kBの低下とともに炎症誘発遺伝子の低下が確認された
 ・瞑想群は遺伝子的に炎症抑制反応が起こることが確認された
 ・瞑想群ではIRF1という転写因子が明らかに増加した
 ・IRF1の増加によって抗ウイルス遺伝子が明らかに活性化された
 ・IRF1の増加によって免疫抗体を増やす遺伝子が活性化された
 ・瞑想群では抗ウイルス等の免疫力増強効果が確認された。
 ・瞑想習慣で抗炎症効果、免疫力アップ(!)


・今回使用されたキルタン・クリヤ瞑想 (Kirtan Kriya Meditation)とは

キルタン・クリヤ瞑想とは古くからインドに伝わるクンダリーニヨガの一つとされています (*10)。クンダリーニヨガとはチャクラを開き眠っているエネルギー(クンダリーニ, Kundalini, कुण्डलिनी)を覚醒させるヨガ・瞑想の技法です (*11)。詳細はここでは割愛しますが興味のある人は自身で調べてみてください。

実際のやり方は座禅のように足を組んで手のひらを上に向けて両手を膝の上に置きます (Figure 5)。

気持ちを鎮めてマントラという言葉を唱えます。

「Saa (サー)」このとき親指と人差し指を付けてしっかりと圧をかけます(Figure 5右)。
「Taa (ター)」このとき親指と中指をしっかりと付けます。
「Naa (ナー)」このとき親指と薬指をしっかりと付けます。
「Maa (マー)」このとき親指と小指をしっかりと付けます。

発せられたマントラが頭頂から入ってくるのをイメージし、またそのエネルギーが第三の目(眉間の部分)から前方に出ていくのをイメージします。



最初は通常の声で適度な速さで「Saa-Taa-Naa-Maa」と5分間繰り返します。
次は囁くような小さな声で5分間マントラを繰り返します。
だんだん声を小さくして静寂で心の中で10分間繰り返します。
そしてまた小さな声で5分間マントラを繰り返します。
今度は通常の声で5分間繰り返します。
最後に体を伸ばして深呼吸をして呼吸を整えて瞑想を終えます。

紹介した研究では12分間で発声で始まり、徐々に静寂へと移行する方法でした。この短時間でも十分な効果が出たので、上のやり方にとらわれなくとも自分でできる時間でやっても効果は期待できると思われます。もちろん、これまでさまざまな瞑想を紹介してきたようにどんな瞑想法でも精神集中と脳波の切り替えができれば上記のような抗炎症/免疫力上昇効果が現れると思います。


・それぞれの指の形の意味

「Saa」のときの人差し指と親指をつける形は“ギャン・ムードラ (Gyan Mudra)”と呼ばれます。ムードラとは“手の形・印”を意味する言葉です。この瞑想法においては人差し指は“木星の指”とされ、知識を与えてくれます

「Taa」のときの中指と親指をつける形は“シュニ・ムードラ (Shuni Mudra)”と呼ばれます。中指は“土星の指”とされ“知恵・忍耐・規律”を与えてくれます。

「Naa」のときの薬指と親指をつける形は“スーリヤ・ムードラ (Surya Mudra)”と呼ばれます。薬指は“太陽の指”とされ“活力・生命エネルギー”を与えてくれます。

「Maa」のときの小指と親指をつける形は“ブッディ・ムードラ (Bhuddi Mudra)”と呼ばれます。小指は“水星の指”とされ“コミュニケーション能力”を与えてくれるとされています。

これらは古代インドから伝えられるこの瞑想における“指と惑星のエネルギー”です。他の教えとは共通した部分も異なる部分もあるとは思いますが、そのような雑念にとらわれることなく、この瞑想法を実践するときはこの教えに従って瞑想することが勧められます。


・瞑想と星と形而上学の関係

古代インドから伝わるヨガにおいても日常生活とは一見関係のない太陽系惑星が取り入れられていました。日常生活で土星や木星のことを考えている人は現代の一般人ではまずいません。しかしこれらは我々のバイオリズム、心理、行動、環境に大きな影響を及ぼしているかもしれません。無関係と思っているのも我々の無知から来る間違った概念かもしれません。

かつては「瞑想で何が変わるのだ」「想いや願いなどで現実は変わらない」「精神が物質世界に影響するはずがない」と思われていましたし、今でもそう信じて疑わない人々も多いと思います。しかし、これまでの記事や今回の記事でも紹介したように、「実体の無い意識が脳内物質を創り出し、身体中にホルモンを分泌させ、遺伝子を合成させる (*12, *13, *14)」ことが解明されています。さらには「意識が現実世界の物質や量子を変化させる (*16, *17, *18)」ということも分かっています。

いずれは「星の動きと人間への影響」「各惑星の性質と集合意識の変化」などが解明されていくでしょう。それは今後の人類の意識の進化と共に表に出てくると思われます。


・惑星直列 2025

奇しくもちょうどこの記事が書かれている2025年1月下旬頃は惑星直列が起こる時期でした。この時の天体の配列は“火星(Mars)・木星 (Jupiter)・天王星 (Uranus)・海王星 (Neptune)・土星 (Saturn)・金星 (Venus)”が夜空に同じ軌道上に一直線に並ぶという現象です。

その時期は1/21や1/25などと言われていますが、実際には1日だけでなくある程度の期間天体が観測できるようです。惑星直列が我々の生活と何か関係あるのか、と疑問に思う人もいるかもしれませんが形而上学的には“常に影響を受けている”と言っても過言ではないかもしれません。2025年1月下旬、世間では何か大きな出来事が起こっているでしょうか?「当たり前に存在していたものが消滅する」「世の中を席巻していたものが終焉を迎える」「価値観が逆転する」といった「アメリカ、日本、あるいは世界各地で人々の意識が変わるような歴史的イベント」が起こっているかもしれません。何が起こっているか気になる人はテレビを見てみると良いかもしれませんね。私はテレビを所有してないのでテレビを見ることができませんが。

瞑想で星々のエネルギーを受け取ることでストレスを取り去り、新しい時代の価値観へと変容していきましょう。

(著者:野宮琢磨)2025.1.29

野宮琢磨 医学博士, 瞑想・形而上学ガイド
Takuma Nomiya, MD, PhD, Meditation/Metaphysics Guide
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用/参考文献

*1. 瞑想と免疫力:ストレスは炎症や発熱を引き起こす? https://note.com/newlifemagazine/n/n86d491088993 
*2. Liu T, Zhang L, Joo D, et al. NF-κB signaling in inflammation. Sig Transduct Target Ther 2, 17023 (2017). https://doi.org/10.1038/sigtrans.2017.23 
*3. Black DS, Cole SW, Irwin MR, et al. (2013) Yogic meditation reverses NF-kappaB and IRF-related transcriptome dynamics in leukocytes of family dementia caregivers in a randomized controlled trial. Psychoneuroendocrinology 38: 348–355.
*4. Pinquart M, Sörensen S. Differences between caregivers and noncaregivers in psychological health and physical health: A meta-analysis. Psychol Aging. 2003; 18:250–67.
*5. Wu H, Wang J, Cacioppo JT, et al. Chronic stress associated with spousal caregiving of patients with Alzheimer’s dementia is associated with downregulation of B-lymphocyte GH mRNA. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 1999; 54:M 212–5.
*6. Lovell B, Wetherell MA. The cost of caregiving: Endocrine and immune implications in elderly and non-elderly caregivers. Neurosci Biobehav Rev. 2011; 35:1342–52.
*7. " Meditation: Kirtan Kriya". Hari Nam Sign Healing Heart Center. https://www.harinam.com/meditation-kirtan-kriya/ 
*8. Cole SW, Yan W, Galic Z, Arevalo J, Zack JA. Expression-based monitoring of transcription factor activity: the TELiS database. Bioinformatics. 2005; 21:803–10.
*9. Mboko WP, et al. (2014). Interferon regulatory factor 1 restricts gammaherpesvirus replication in primary immune cells. Journal of virology, 88(12), 6993-7004.
*10. Hari Nam Sign Healing Heart Center. https://www.harinam.com/meditation-kirtan-kriya/ 
*11. クンダリニー-Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/クンダリニー 
*12. ”幸せホルモン(脳内物質セロトニン)”を増やす方法. https://note.com/newlifemagazine/n/nb00026449c2d 
*13. リラクゼーション瞑想と脳内物質ドーパミンについて. https://note.com/newlifemagazine/n/n67caa776ea39 
*14. オキシトシンの抗ストレス作用と瞑想の効果. https://note.com/newlifemagazine/n/n16eca92fa90c 
*15. Wang D, Zheng X, Chai L, et al. (2023). FAM76B regulates NF-κB-mediated inflammatory pathway by influencing the translocation of hnRNPA2B1. Elife, 12, e85659.
*16.「観る」ことで「現実が変わる」?:二重スリット実験. https://note.com/newlifemagazine/n/nf11ac38b370a 
*17. 二重スリット実験:“観測すると本当に干渉縞模様は消えるのか?”. https://note.com/newlifemagazine/n/nb9094f7a1b3b 
*18. 【二重スリット実験】天才科学者が予見した“量子と意識の相互作用”. https://note.com/newlifemagazine/n/n1aa12356ceef 
*19. Planetary parade: Seven planets will align in the sky this January 2025. by Yogita Bisht Updated 04 Nov 2024. https://thetatva.in/science/planetary-parade-seven-planets-will-align-in-the-sky-this-january-2025-7383929 
画像引用
*a. Image by Vilkasss. https://pixabay.com/illustrations/ai-generated-visitor-senior-woman-8971834/
*b. https://www.freepik.com/free-photo/yoga-teacher-class-teaching-attendants_13531142.htm
*c. https://www.freepik.com/free-photo/woman-meditating-home-with-headphones_13141150.htm
*d. https://www.bing.com/images/create

 

前回までの関連記事はこちらから

※引用文献の内容に関する著作権は該当論文の著者または発行者に帰属します。
※当コンテンツに関する著作権は著者に帰属します。当コンテンツの一部または全部を無断で転載・二次利用することを禁止します。
※著者は執筆内容において利益相反関係にある企業等はありません。

★LINE友達限定情報、毎週金曜に配信中★

  銀河レベルのぶっちぎりに新しい情報で、  

  誰もが本質を生きる時代を目指します。  

 更新情報はライン公式でお知らせしています。

いいなと思ったら応援しよう!