誰にも共感してもらえない趣味
「こんなことを楽しいと感じるのは自分だけではないか?」と思うことがあります。
マイナー古文単語の例文探し。
たとえば、先日の雨の日。
新古今和歌集をつらつら見ていて、見つけました。
意訳:そぼ降る春雨が、空が泣いているかのように、少しもやまない。私も切なくて涙を零し、零し、零して、花も、ああ、散ってしまった……。
「をやみ」……なかなか見ない単語です。
終止形は「をやむ」。「共通テストから難関大まで完全網羅」を謳う『古文単語FORMULA600』に載っていないので、受験生は知らなくていい単語。私は辞典を見てみました。
例文なし。
「よし! この辞典の『をやむ』の例文として、この歌を覚えておこう」と独りで喜んでおりました。
『球辞苑 〜プロ野球が100倍楽しくなるキーワードたち〜』という人気番組がありますよね。
究極の野球辞典をつくるため、みんなが「この項目も入れよう」「この説明も加えよう」とワイワイ語り合う楽しい番組。あれを、独りで、古文単語をテーマにやっている感じ。『球辞苑』と違って、誰も共感はしてくれないでしょうが。
傍流を行く愉しみ、というか……。これがあるので、自分は死ぬまで退屈することはなさそうです。
ちなみに、電子辞書の『旺文社古語辞典』には、
「雨少しを止みぬるほどに」〈源氏物語・賢木〉と例文が載っていました。
源氏の不倫がばれる場面ですね。ロミオとジュリエット的な関係の朧月夜と密会していた時、雷が鳴り、そして「を止み」、雨が小降りになってきたから、右大臣が娘を心配してやって来たのです。
マイナー単語と思ったら、有名な場面のキーワードだった!
ひそかに注目していたバイプレーヤーが実は有名作品の伝説のシーンの準主役だった!的な驚きです。こんな驚きも誰にも理解してはもらえませんけどね。